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メディア・クリエイティブ
博報堂DYメディアパートナーズ「クリエイティブ&テクノロジー局」の現在、未来、進行形【後編】
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生活者がオフライン、オンラインを問わず縦横無尽に行き交うようになった今、かつての「媒体」といわれるメディア以外にも、あらゆる接点をメディアとして活用できるようになっています。同時にテクノロジーの発展によっても、クリエイティブの可能性は無限大に広がっています。そこで博報堂DYメディアパートナーズでは2018年、媒体や手法による枠組みを越境して新しい発想や仕組みづくりを追求する組織、クリエイティブ&テクノロジー局、通称「クリテク局」を立ち上げました。

クリエイティブ&テクノロジー局では、媒体社との協業や媒体社を横断したメディア企画、コンテンツホルダーとテクノロジーを掛け合わせたビジネス開発やソリューション開発など、多岐にわたる活動を積極的に進めています。後編は、クリエイティブ&テクノロジー局の最新事例を聞きました。

★前編はこちら

次々と生まれる新しいメディア体験

――では、具体的な事例をうかがえますか?

才田
「クリテク局」でカバーする領域は、クリエイティブとテクノロジー、そしてメディアとコンテンツという大きく2軸で分類して捉えています。この4象限でそれぞれ実際に行っていることや、事例を紹介したいと思います。

才田
まず「メディア×テクノロジー」図中1の部分は、これまでの“アドテク”にいちばん近い部分です。博報堂DYグループ内では、主にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下、DAC)がデータに基づきターゲットとメディアを最適化した広告配信などを担っていますが、そこにクリエイティブを掛け合わせていきます。アドテクにクリエイティブを加味することで、より正確に表現したり、より生活者に響く広告をDACと連携して模索しているところです。

例えば最近は、様々な場所のODM(アウトドアメディア)化が進んでいます。タクシー内や、美容院など特定の業態をネットワーク化した広告配信なども始まっているので、そういったメディアへのデジタルトランスフォーメーションを推進しています。

直近では、その日の天気や株価などをトリガーデータとして、テレビ・スマホ・ODM各媒体に合ったクリエイティブを最適化して配信するメニューを開発し、「生活者Moment sniper」という名称で商品化しています。トリガーデータが同じなのに、テレビやスマホ、街中のデジタルサイネージがばらばらに動いているのは非効率なので、全部まとめようという発想です。

――なるほど、サイネージとスマホが連動すると、街中にいたらおもしろそうですね。

才田
いろいろなアイデアが考えられますよね。例えばすごく暑い平日の夕方に、新橋のサイネージにビールのCMを配信し、スマホにはエリア飲食店の地図やビールの無料クーポンを配信するとか。個々のメディア規模やリーチに委ねず、束ねることでひとつの大きなメディアになりますし、それを前提に統合的なクリエイティブ設計もできます。

――2つ目の「メディア×クリエイティブ」領域では、どういったことをしているのですか?

才田
この領域では、メディアやプラットフォーマーの特性や機能を活かして、新たな体験を創出しようとしています。媒体社などと協業し、これまで“メディア”ではなかった領域を開発して広告メニュー化しているので、「NEWメディアクリエイティブ/プラットフォーマークリエイティブ」と呼んでいます。

事例としては、2018年に「フレキシブルアド」という広告メニューを開発し、リリースしました。バーチャル映像合成技術を活用して、生中継のテレビ番組を中断せずにズームアウトすることでCMを挿入する仕組みで、2009年に開発したプレイオンアドをベースにアップデートしたものです。事前に複数のCM素材を入稿しておき、番組の展開に合うタイミングで素材を選択したり、気象データ等に連動してCM素材を出し分けたりすることができます。現在、CMの背景やコピー素材などを瞬時に組み合わせてCMを自動生成したりするシステムへと拡張予定です。

それともうひとつは、プラットフォーマーさんとの協業からなるプラットフォーマークリエイティブです。動画のブランドリフトをファネルごと業種ごとに分解したデータを使って、配信したクリエイティブがどのように有効だったかを検証する分析を進めたり、プラットフォーマー上のメディアと既存のメディアを組み合わせて、よりマーケティング効果の高い、より付加価値の高い統合メディア企画を共同開発しています。近々リリースもいくつか出す予定で、現在実証実験中です。

プラニング、エグゼキューション、メディアをすべて描く

才田
3つ目、3aと書きましたが、この部分に該当するのが「コンテンツ×クリエイティブ」=メディアコンテンツクリエイティブです。先日、2月6日にリリースさせていただきましたが、テレビ局さんと組んで、野球放送終了後の放送枠を活用した「リリーフドラマ“リリドラ”」を共同開発しました。試合終了後は、これまで主にハイライトやダイジェストの調整放送を行っていましたが、この変動的な予測不能の枠に突如出現するコンテンツを制作し、視聴者のわくわく感やドラマとしての新しい楽しさを体験できる「中継ぎドラマ枠=リリーフドラマ」を開発しました。

――野球とドラマ、おもしろい組合せですね。3bの事例は、ありますか?

才田
この領域は「コンテンツ×テクノロジー」で、主にコンテンツマーケティングやインフルエンサーマーケティングです。コンテンツ開発においてもテクノロジーを伴って新たな型や仕組みを生み出したり、効果を劇的に高めたりすることに取り組んでいます。3DホログラムやAI技術を使った音声コンテンツのビジネス開発を探究している他、すでに運用を開始しているサービスとして、オウンドメディアの運営やタイアップコンテンツの生成を支援する「#SHAKER」があります。2017年にDACと博報堂アイ・スタジオが提供開始し、昨年博報堂DYメディアパートナーズが参画しました。コンテンツの企画開発だけでなく、拡散と話題化、効果検証を通したPDCA運用までを手がけます。

――これから取り組むテーマや切り口はありますか?

才田
まだ詳しくお話しできませんが、ARには大きなメディアとしての可能性があると考えています。今、デジタルサイネージにもAR技術が取り入れられるようになってきているので、先ほど少し触れたように時間や位置情報によってデジタルサイネージへの広告配信を出し分け、そこから皆さんがスマホを通してARに盛り込んだ情報に触れてもらえたら、より立体的なエクスペリエンスを提供できますよね。

――クリエイティブの幅が広がりますね。「クリテク」には、メディア&ソリューション開発と同時に研修・教育にも注力するというお話がありました。その観点から目指すことを、最後にうかがえますか?

才田
テクノロジーはこれからもますます発展し、細分化していくでしょうから、その仕組みの隅々までを我々が把握しきるのは難しいと思っています。だからそれらはエキスパートや先端企業とパートナーシップを組むことを積極的にして、我々はその選択肢をどう組み合わせればいいかのプラニングができ、リーチしたい人にどのような体験をしてほしいかのエグゼキューションを具体的に描き、そのためのメディア設計や必要ならメディア開発という、すべてを包括的にデザインできる人材を育成したいと思っています。一足飛びにはいかなくても、前述したようなフラットで柔軟なチーム編成でどんどん自分の役回りやスキルを拡張し、試行錯誤を重ねていかないといけません。昨年からの初年度ですが、しっかりとした手応えを感じているので、今年からより一層前のめりになっていきたいと思います。

 

■プロフィール

才田 智司(さいだ ともし)
博報堂DYメディアパートナーズ 
クリエイティブ&テクノロジー局長

1988年博報堂入社。コピーライターとして配属。1990年代より各種広告制作業務を担当し、アルコール、飲料、食品、自動車、航空、化粧品等、多様なジャンルに携わる。統合マーケティング、統合ソリューションに早くから取り組み、広告、プロモ、PR、イベント、デジタル等々、他領域で業務実績。2005年クリエイティブディレクター、2008年シニアクリエイティブディレクター、2009年チームリーダー、2011年グループマネージャー、2012年Cannes Lions、ADFEST、SPIKES等、国際賞9冠、2013年エグゼクティブクリエイティブディレクター、2014年博報堂第一クリエイティブ局長、2016年同アクティベーション企画局長、2018年現職。

 

★博報堂DYメディアパートナーズ「クリエイティブ&テクノロジー局」の現在、未来、進行形【前編】

★本記事は博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました

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