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活躍したアスリートの10年を振り返る~「アスリートイメージ評価調査」2017年総括特別編より~
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 時の移り変わりの速さを表す四字熟語として、「十年一昔」という言葉があります。実際十年という月日を短いと思うか、長いと思うかは子供なのか大人なのか、あるいはあなたが蝉なのか、人間なのか、はたまた亀なのかによっても大きく変わってくるのでしょうが、今日の広告業界という括りにおいて考える場合、アドテクノロジーが凄まじいスピードで進化していく現在は「十年一昔」どころかもはや「五年一昔」ですら決して長過ぎることはない刻み方なのではないかと、この業界で働く者としては日々感じるところです。アスリートイメージ評価調査も今年で十周年の節目を迎えることとなりますが、日々新たなアスリートが調査に登場してくるのを見る度に、アスリートの世界もまた移り変わりの速いものなのだと傍目からも実感させられます。

 さて、昨年末に、2017年12月のアスリートイメージ評価調査のリリースをいたしました。

 2009年以降、毎年12月の調査においては「活躍したアスリート」の設問を設けており、人々の心に強く残ったアスリートをリリースにて紹介しています。今回はそのランキングの年ごとの変化を振り返ってみましょう。

【男性ランキング】

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 オリンピックが開催される年では、そのオリンピックで活躍した選手が強く印象に残るようです。2012年では内村航平選手が1位となったほか、2010年では高橋大輔選手が3位、2014年には羽生結弦選手が2位、葛西紀明選手が3位となっています。ほとんどの場合、ランキング入りするのはオリンピックが開催された当該の年だけですが、内村選手と羽生選手に関してはそれ以外の年でもランキングに入っています。また、テニスの錦織圭選手は2014年の全米オープン準優勝によってトッププレイヤーとして認知されましたが、リオ五輪に出場した2016年にも1位となっています。錦織選手はそれ以前にもランキング入りしており、古くは2011年に3位となっているので、全米オープンでの活躍以前から、すでに人々に認知され始めていたようです。

 メディア露出の多い野球選手はどの年においても1人以上がランキングに名を連ねていますが、唯一1位を取ったのが2013年の田中将大選手です。24勝0敗1セーブという前人未到の驚異的な成績で東北楽天ゴールデンイーグルスを優勝に導いた功績は、印象に強く残っています。また、来シーズンから活躍の場をMLBに移す大谷翔平選手は、最高が4位となっていますが、今後のMLBでの活躍次第では、来年以降更に順位が上がっていくのかもしれません。

【女性ランキング】

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 オリンピック開催年にオリンピックで活躍したアスリートがランキング入りするのは男性と同様の傾向で、レスリングの吉田沙保里選手は2012年に1位になって以来、毎年ランキング入りを果たしています。2008年の北京五輪にも金メダリストになっており、2012年以前から優秀な成績を収めてきた選手ではあるのですが、2012年のロンドンオリンピック金メダルと世界選手権の10連覇によりアレクサンダー・カレリンの喩えにならった「霊長類最強女子」の呼び名が流行したことが、人々の記憶に残りやすくなったきっかけかもしれません。

 ほかに注目されるのは、2009年以降毎年ランキングに入っているフィギュアスケートの浅田真央選手で、2010年と2014年のオリンピック年には1位にランクインしています(ほかに2013年、2015年も1位)。2014年ソチオリンピックの浅田選手は数字の上ではメダルには及ばなかったのですが、フリーの演技に対する印象の強さによる影響は大きかったのだと考えられます。2017年に1位になった本田真凜選手もまだこれからの期待の選手ではありますが、吉田選手の事象も合わせて考えると、競技における優秀な成績もさることながら、パフォーマンスの印象度やメディアへの露出度もランキングに影響を及ぼすようです。

 また、最新の2017年のランキングでは、上位5人の中に平野美宇選手、伊藤美誠選手、石川佳純選手と、卓球の選手が3人同時に名前を連ねています。同一の個人競技における日本人アスリートが3人同時に上位5位に入ったのは初めてのことで、今の女子卓球の層の厚さを感じさせます。

 過去のアスリートの言葉や活躍がやがて人々の思い出となり、歴史となって遺っていく一方で、人々に新鮮な驚きと感動を与えてくれる新たなアスリートも常に登場しています。平昌五輪の開幕も間もなくですが、超新星のような新たなアスリートは登場するのでしょうか。はたまた、羽生選手や髙梨選手などのような実績を積み上げてきたアスリートがその実力を改めて証明することとなるのでしょうか。

(※:2008年にも同様の項目を調査しているが、2009年以降と聴取方法が異なるため表からは除外)

■関連情報
「勢いを感じるアスリート」上位が変わった要因は? ~「アスリートイメージ評価調査」2017年6月調査より~
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■アスリートイメージ評価調査
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市川修平 データドリブンビジネス開発センター
メディアコンテンツマーケティング部

2007年入社。新聞局にて大手新聞社のメディアバイイングを担当した後、i-メディア局に異動し、伸長著しい運用型広告の業務領域に携わる。
現職ではスポーツ領域のほかにも、幅広くメディアのナレッジ開発に取り組む。
およそ30年来の東京ヤクルトスワローズファンとして、今季に雪辱を期す。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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