レポート
ADVERTISINGWEEK NY 2017
ADVERTISINGWEEK NY視察報告【1】~ADVERTISINGWEEK NYで見たdisruption(ディスラプション)~
REPORT

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社員による日本広告業協会・海外広告研修団の一員として訪れたADVERTISINGWEEK NYのレポート第1弾。今回は動画ビジネス局内藤匠哉が、メディア視点でレポートします。

■はじめに

9月25日~28日の4日間、ニューヨークでADVERTISINGWEEK NYが開催されました。歴史ある日本広告業協会の第44回海外広告研修団の一員として現地で視察して来たことを報告致します。
ADVERTISINGWEEKは、「広告を世の中にアピールする」ために、2004年にスタートし、今年の5月には第2回ADVERTISINGWEEK ASIAが六本木で開催されるなど、世界中に広がっています。
今年で14回目を迎える本場ニューヨークでのADVERTISINGWEEK はメディア・コンテンツ、マーケティング、テクノロジー問わず、様々な業界のキーパーソンがセミナーに登場しました。協賛している企業も、Google、Facebook、IBM、Microsoft、Adobe、Tencentといったテクノロジー系の企業から、NielsenやcomScoreのような調査会社、MTVやパラマウント映画を傘下に持つVIACOMや4大ネットワークでディズニー傘下のABC、衛星放送のディレクTVやタイムワーナーを傘下に持つAT&Tなどのメディア企業まで多岐に渡り、4日間タイムズスクエア周辺の9つの会場で朝から晩までセミナーが開催されており、どのセミナーに出ようか目移りしてしまうほどでした。

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■disruption(ディスラプション)と向き合う広告業界

クリエイティブエージェンシーのR/GAのセミナー、Anomalyへの企業訪問時など、様々なところでデジタルディスラプターについての話がありました。小売業界におけるAmazon、テレビ業界におけるNetflix、タクシー業界におけるUber、ホテル業界におけるAirbnbがデジタルディスラプターの代表として挙げられていました。そして、広告業界におけるディスラプションとして4A’s(アメリカ広告業協会)の方が語っていたのがコンサルティング会社の台頭です。米アドエイジ誌のデータによると、米国のエージェンシートップ10ランキングの内、4社がコンサルティング会社になっているのです。

初日にメイン会場であるプレイステーションシアターで開催された対談で、WPPを率いるマーティン・ソレルCEOは、生活者のモバイルシフトに伴う広告主の急速なデジタルシフトによって、「データを制することが成功の鍵を握る時代」に入ったと語り、IT業界で注目すべき5つの企業を上げ、それぞれの企業との向き合いについて語っていました。その5社とは「Google」「Facebook」「Amazon」「Tencent」「Alibaba」の5社なのですが、ソレル氏がこの5社の中で最も気になる企業として、「Amazon」を挙げていました。comScoreは、2020年にインターネット検索の半分が音声検索になるという予測をしており、Amazon echoをはじめとしたスマートスピーカーは、ユーザーインターフェースにディスラプションを起こしています。

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■AIで拡がるビジネスフィールド

一方で、ソレルCEOはechoやAlexaについて、脅威であると同時にチャンスでもあると語っていました。echoについては4A’sの方にも研修団で訪問した時に個別に質問して見解を詳しく聞いたのですが、「ビジネスチャンス」と捉えているとのこと。アメリカの広告会社のTombras Groupは、社内に「Amazon部門」を立ち上げて新たなビジネスフィールドとして向き合っているという話をしていました。
ユニリーバのキース・ウィードCMOのセミナーでは、Alexa用のアプリケーションである「スキル」として、同社の商品を活用した家事術や、料理のレシピを音声で返してくれ先進的な取り組みを紹介していました。日本でも動画のビジネスが盛り上がっていますが、AI音声アシスタント向けのクリエイティブが盛り上がる日も近いかもしれません。
このユニリーバのキース・ウィードCMOのセミナーに関しては、後日、ターゲティングの視点からデータドリブンプラニングセンターの飯田君がレポートします。

■メディアエージェンシーの未来

メディアエージェンシーの未来について語られたセミナーもありました。
一つは、私も業務で大きく関わっているテレビが「データで進化する」というセミナー。
もうひとつは、メディアエージェンシーとクリエイティブエージェンシーのコラボレーションこそが、キャンペーンの成功に繋がるというセミナーです。
前者は、Turner、FOX、Viacomという3社のテレビ局が、それぞれが持つオーディエンスデータの不足を補い合うために、3社それぞれの「視聴者」を「標準化したタグ」で統合し、「ターゲティング可能なテレビ広告」としてデータの問い合わせ、レポーティング、公平性の担保を第三者機関であるアクセンチュアが担うという「OpenAP」という取り組みです。日本でもまさにスマートテレビの視聴ログや放送局のウェブサイトをDMPで繋ぐ取り組みが盛り上がっているところなのですが、米国でもテクノロジーとデータドリブンによってテレビを価値化できるという取り組みが拡がっているようです。
後者は、「デジタルとクリエイティブの融合」について、アメリカを代表するブランドである「ペプシコ」とクリエイティブエージェンシーの「Droga5」、メディアエージェンシーの「Group M」、デジタルエージェンシーの「Media iQ」の4社によるセッションでした。この中で、ペプシコのマーケティングとクリエイティブのトップであるスポルディング氏が語っていたのは、メディアエージェンシーが持つ膨大なオーディエンスデータを分析し、様々なタッチポイントにおけるターゲットペルソナやインサイトを的確に把握してクリエイティブブリーフに入れ込んだことで、非常に効果的にクリエイティブとキャンペーンの組み立てができたという話です。
こちらのセッションに関しても、後日、異なる視点で、データドリブンプラニングセンターの飯田君がレポートします。

■最後に

今回の米国視察を通して、一番よく聞いたキーワードは「disruption(ディスラプション」」と「agility(アジリティ)」でした。
デジタル化は、テクノロジーによる様々なディスラプションと、データによるマーケティングやクリエイティブの進化、メディアやコンテンツの価値化・可視化というチャンスをもたらしていると思います。激変する厳しい競争環境の中においても、常にデータやテクノロジーとスピード感を持って向き合うことで、メディアエージェンシーは媒体社の持っているメディアの価値化、クリエイティブの進化に貢献できるのだと確信しています。

 
★第2弾はこちら

◆プロフィール
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内藤匠哉
動画ビジネス局
2006年博報堂DYメディアパートナーズ入社。雑誌、アカウントプロデュース業務を経て、テレビタイム領域で番組セールスなどを担当。2015年より、テレビ戦略部で生活者のデジタルシフトに対応したテレビビジネスの企画・戦略立案に従事。

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