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メディア環境研究所
メディア定点調査コラム2018【6】メディア生活のONとOFF
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博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所が年1回定点観測している「メディア定点調査」から生活者のメディアライフを読み解く、メディア定点調査コラム。今回は、生活者のメディア接触と、オンライン・オフラインの関係を分析していきます。

【調査リリース】「メディア定点調査2018」時系列分析

「ONとOFF」と聞いて思い浮かぶことは何だろうか。機械の電源が入っているか入っていないか、スポーツの試合シーズンかそうでないか、社会人であれば、仕事か休みかなど色々あるが、メディア生活のONとOFFはオンラインとオフラインである。ここでは、生活者がネット上でつながっているかそうでないかという観点からオンラインとオフラインについて考えてみたい。

増加する「携帯電話/スマートフォン」のヘビー接触層

「携帯電話/スマートフォン」の接触時間をライト接触層(1日あたり1時間未満)、ミドル接触層(1日あたり1時間以上~3時間未満)、ヘビー接触層(1日あたり3時間以上)に分けてざっくり見てみると、2018年はヘビー接触層が2割、ミドル接触層が3.5割、ライト接触層が4.5割となっている(東京)[図1]。

【図1】携帯電話/スマートフォンの接触時間(時系列)

最も多いのはライト接触層だが、ミドル接触層とヘビー接触層がじわじわと増加する一方で、ライト接触層が徐々に減っていることがわかる。各接触層の割合は4地区(東京、大阪、愛知、高知)で若干異なるが、ミドル接触層とヘビー接触層の増加とライト接触層の減少という全体的な傾向はどの地区も同じである。

オンラインの長時間接触の増加によって、常時つながるオンラインとオフラインは通常の「ONとOFF」で意味する「切り替え」ではなくなってきているように思う。友達とSNSでチャットしながら、別の友達とカフェでお茶を飲んだりするといったオンラインとオフラインの同時並行はいまやあたりまえの光景である。インタビュー調査では、定額制サービスを使って、音楽を聴きながら電子コミックを読むなどのオンラインとオンラインの同時利用についての発言もよく聞かれるようになってきた。

生活者はオンラインとオフラインの生活を切り替えるのではなく、同時並行に走るオンラインとオフラインのレーンを自由自在に行き来している感覚に近いのではないだろうか。

5年以内にスマホはなくなる!?

常に手元にあるスマホは、オンライン長時間滞在という状況を生み出した。メディア定点調査に「スマートフォンはあと5年以内に無くなると思う」という質問項目があるが、5年以内になくなると思っているのは4地区共に全体の約1%となっている[図2]。

【図2】スマートフォンはあと5年以内に無くなると思う(地区別)

変化のスピードが速い現在、この先の5年を正確に予測するのは難しい。1%というこの数字は、生活者の予測というより、生活者にとってスマホが如何に生活に欠かせないものであるかという意識の表れとしてとらえる方がしっくりくる。

ちなみに「パソコンは立ち上げるのが面倒だ」と思っている人は4割前後とかなり高いが[図3]、いまを遡ること20数年前のWindows95発売当時「パソコンは立ち上げるのが面倒」だと思っていた人はどれ位いたのだろうか。

【図3】パソコンは立ち上げるのが面倒だ(地区別)

手元のスマホでいつでも簡単に情報収集やメディア接触ができるようになったことで、パソコンを立ち上げることすら面倒だと思うようになった生活者の意識の変化がここにある。

オンラインとオフラインを高速で行き来する生活者は、ちょっとした手間や時間も面倒だと感じるようになってきているのかもしれない。生活者のメディア接触や情報行動を考える際には、このことを念頭に置いておく必要がありそうだ。

 

【関連情報】

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新美 妙子 博報堂DYメディアパートナーズ
メディア環境研究所

1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。
2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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