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メディア環境研究所
~生活者が見る少し先のメディアライフ~ メディア環境研究所 メディア定点調査連載コラム⑦
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テクノロジーが変える家庭内メディア環境

「メディア定点調査2017」から読み解く生活者のメディアライフ連載コラムも早いもので最終回。今回はメディアライフの「現在(いま)」から少し先の未来へ目を転じてみたい。「AI」、「IoT」という言葉を目や耳にしない日はないと言っても過言ではなく、AIアシスタント機能を搭載した音声操作可能な「スマートスピーカー」が相次いで登場するなど、テクノロジーの進展によって家庭内のメディア環境に大きな変化が訪れている。「スマートフォンなどに向かって音声検索することに抵抗はない」は17.6%(東京。以下数字はすべて東京)と、8割強の人が音声検索に「抵抗がある」と答えている [図1]。

図1 「スマートフォンなどに向かって音声検索することに抵抗はない」%e5%9b%b3%ef%bc%91

私自身も「抵抗がある」と思っていたが、家のスマートスピーカーに話しかけることに恥ずかしさを感じたのはほんの数回で、あっという間に慣れた。メディア定点調査でも半数の人が「家電・音声端末など、機械と音声でやりとりすることは増えていくだろう」と答えており[図2]、初めは抵抗があっても、音声検索や音声アシスタントは、瞬く間に生活に浸透することが予想される。

図2 「家電・音声端末など、機械と音声でやりとりすることは増えていくだろう」%e5%9b%b3%ef%bc%92

5年後、生活者に最も近いメディアは?

近年、驚くべきスピードで普及したスマートフォン。「スマートフォンはあと5年以内に無くなると思う」かどうかを聞いているが、「無くなると思う」のは0.8%と1%に満たない [図3]。確かにいまスマートフォンがない生活を想像することは困難であると思う。でも、未来は未知数だとも思うのである。8年前に9.8%だったスマートフォンの所有率は昨年77.5%と8割に迫り [図4]、「朝起きて、最初に触れるのはスマートフォンだ」と答えている人は全体で4割、20代では7割を超える[図5]。テクノロジーが生活に溶け込むスピードは我々の思っている以上に速い。いまは想像もできない新しいメディアやデバイスが登場し、生活者のメディア行動を瞬時に塗り替えてしまうのは起こりうる未来なのである。

図3 「スマートフォンはあと5年以内に無くなると思う」%e5%9b%b3%ef%bc%93

図4 スマートフォン所有率%e5%9b%b3%ef%bc%94

図5 「朝起きて、最初に触れるのはスマートフォンだ」%e5%9b%b3%ef%bc%95

ロボットと共生する(!?)未来の生活

スマートスピーカーやスマート家電は生活にすっと入り込んでいく感があるが、ロボットはどうであろうか。「ヒト型ロボットを家の中で利用することに抵抗を感じる」のは全体で29.5%と約3割。性年代別に見ると、最も抵抗を感じているのは男女共に10代で、4割を超えていることが興味深い[図6]。若年層の方が保守的なのか。はたまた未来の生活が長い彼らの方がリアルに家にロボットがいる生活をイメージできるからなのか。お掃除ロボットやペットロボットがスムーズに生活に入り込みつつあることを考えると、抵抗があるのはロボットそのものではなく、「ヒト型であること」なのかもしれない。

図6 「ヒト型ロボットを家の中で利用することに抵抗を感じる」%e5%9b%b3%ef%bc%96

図7 「車が自動運転になることは便利だ」%e5%9b%b3%ef%bc%97

メディアと少し離れるが、「車が自動運転になることは便利だ」と感じているのは全体で48.0%、最も高い60代男性は67.9%と7割近い[図7]。テクノロジーの力を借りながら、できるだけ長く運転したいというシニア男性の欲求が見えてくるようで面白い。いまは想像もできない未来もあれば、既に見えてきている未来もある。メディア環境の目まぐるしい変化の中で生まれる生活者の欲求や行動を引き続きウオッチしていきたい。

【関連情報】
■メディア定点調査ニュースリリース
●メディア環境研究所サイト

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新美妙子 博報堂DYメディアパートナーズ
メディア環境研究所

1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。
2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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