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アスリートイメージの変化から見えたスポーツビジネスの可能性
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今回、東京2020オリンピックの事前事後におけるアスリートのイメージ変化の分析を試みました。分析に活用したアスリートイメージ評価調査は、2008年から博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂DYスポーツマーケティングとデータスタジアムの3社で実施しているオリジナル調査です。アスリートにフォーカスした広告のCM起用やマネジメント等の各種提案に向けた基礎データとして活用している調査になります。対象のアスリートは、それぞれの競技のトップアスリートから、今後成長していくであろう若手アスリートまで幅広く捉えています。

最新調査は今年の8月になります。その結果(東京2020オリンピック事後)を8月以前のデータ(東京2020オリンピック事前)と比べることでアスリートたちのイメージ変化を捉えました。比較指標は、どれだけ多くの人に知られるようになったか(認知度)、どのくらい好きになったか(好意度)、どのようなイメージになったか(29項目のイメージ)の3指標になります。事前と事後調査で共通のアスリート29人の比較を行いました。

本題に入る前に、事前と事後における「スポーツ中継を視聴している番組数」の意識変化についてお話しします。スポーツ中継視聴番組数は、3月調査で「週1番組以上」が17.6ポイント、8月調査では26.9ポイントと事前よりも事後で約10ポイントの伸びとなりました。「ほとんどスポーツ中継を視聴していない」は、ほぼ同じ。「特定の季節(シーズン)だけスポーツ中継を視聴している」が減少していることを考えると、普段はスポーツ中継を視聴していないライト層が視聴したという結果と言えます。普段からスポーツ中継を視聴するコア層外への広がりがあった8月調査でした。その影響が各指標に表れていると考えられます。

 

主にエクストリームスポーツのアスリートでイメージのポイントが増加

まずは、認知度の傾向です。29人平均で事前より事後が10ポイントの増加となりました。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催により、メディアによるニュース報道露出から認知度が高くなったアスリートが多かったと考えられます。特に増分が多かったアスリートは「堀米雄斗(スケートボード)」「四十住さくら(スケートボード)」「五十嵐カノア(サーフィン)」等でした。

好意度ですが、29人平均で僅かに1ポイント増となりました。東京2020オリンピックでのメダル獲得や活躍といった結果を出せた、出せなかったアスリートで増減が相殺されたと考えています。好意度を特に伸ばしたアスリートは「堀米雄斗(スケートボード)」「四十住さくら(スケートボード)」「野口啓代(スポーツクライミング)」「野中生萌(スポーツクライミング)」「五十嵐カノア(サーフィン)」でした。

イメージ29項目ですが、特に「かっこいい」において伸長が見られ、「阿部一二三(柔道)」「石川祐希(バレーボール)」「四十住さくら(スケートボード)」「堀米雄斗(スケートボード)」「平野歩夢(スケートボード)」らの伸びが顕著でした。

認知度、好意度、イメージの事前事後比較を見ると「スケートボード」「サーフィン」「スポーツクライミング」といったエクストリームスポーツのアスリートたちがイメージ評価を大きく伸ばしたということが調査から明らかになりました。

また、競技自体のイメージについても事前事後比較を行いました。アスリートたちの活躍は競技イメージにも関係性があるようです。「かっこいい」「明るい」等がエクストリームスポーツで伸びが見られました。

 

協力して創り上げていく、これからのスポーツビジネスの可能性

エクストリームスポーツのアスリートたちの活躍が、人々の注目を集め、普段スポーツを視聴しない人も巻き込み、アスリート自身や競技のイメージにも反映されていることがわかりました。

この結果からの示唆としては、スポーツビジネスにおいて、すでに注目を集めるメジャースポーツのアスリートへのスポンサーシップも重要なことですが、今回のように新種目として東京2020オリンピックに採用されたエクストリームスポーツやそのアスリートといった新しい価値を発見していくことも重要ではないでしょうか。いわゆる「目利き」として、原石を発見するということです。

企業、広告会社が一緒になってアスリートを育成、協力して創り上げていく「協創型アスリートスポンサーシップ」に、大きなポテンシャルを感じる分析結果となりました。

 

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武方浩紀 博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局

1995年博報堂入社。初任配属はイベントや博覧会を扱う事業本部。2004年よりメディアマーケティング局兼ラジオ局複属。主にメディア・コンテンツの再価値化調査を推進。現在は、ナレッジイノベーション局情報マネジメントグループでメディアDXなど情報分析及び発信を担当。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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