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「dmexco2017」にみる、次世代デジタル・マーケティングの潮流
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世界最大級のデジタル・マーケティングカンファレンス「dmexco」をご存じでしょうか。
2009年から毎年ドイツのケルンにて2日間の日程で開催されており、世界中から広告主、プラットフォーマー、アドテク企業、アドエージェンシー等が一堂に会す一大イベントです。

幕張メッセの4倍(!)あるといわれるケルンメッセに5万人以上のビジター(主催者発表)が集まります。1100を超える企業が各社ブースを出展、最新デジタル技術やサービスを紹介する見本市としての側面だけではなく、プレゼンテーションやネットワーキング、さらには直接商談なども行われる非常に活気に満ちた会場となっていました。

また、大小4つのカンファンレンスホールと8つのセミナー会場ではトータル570名以上のスピーカーが登壇し、最新のデジタル・マーケティングの動向やテクノロジーの紹介などがされました。

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2017年度のカンファレンステーマは、「Lightning the Age of Transformation」。日々進化するデジタル・マーケティングの世界の中で、業界・企業・個人それぞれが常に最新動向にキャッチアップし、Transform(変化)し続けることが重要であるというメッセージが込められています。

その中で、様々な基調講演・セミナーにて語られていた内容から、今後のデジタル・マーケティングの方向性を示すトピックで特に印象に残った2点をご紹介いたします。

■1 メディア接触や広告配信による「ユーザー体験」をさらに尊重する時代に

GoogleやFacebook, Twitterなどのプラットフォーマーから、CNN、NBCユニバーサルなどのメディア、そしてエージェンシーに至るまで、口を揃えるように語られていたのが「Consumer Experience =ユーザー体験」を尊重するという事です。スマートフォンの普及による急激なモバイル化を背景に、様々なデータがリアルタイムに収集・活用されるようになってきた一方で、ユーザーは膨大な量の情報や広告に日々接しています。

その中で、プログラマティックやAIなどの技術により、ユーザーのデモグラフィック情報や興味関心、位置情報、検索履歴や購買データに至る様々なデータを掛け合わせることで、ユーザーが本当に情報を必要としているタイミング(モーメント)を捉え、必要な情報をシームレスに、より個人に寄り添った形で提示することで、より良い「ユーザー体験」を提供する。これがデジタル時代のコミュニケーションにおいて重要になってきています。

私たちの日々の業務では、ともすればマーケティングのゴールやKPIの達成/最適化を追求しがちですが、今一度マーケティング活動の先にいる「生活者」を見つめ直し、コミュニケーションのプラニングを実践していく必要があると実感しました。

■2 ブランドセーフティや透明性への取り組みの加速と、その先に目指すもの

広告のデジタル化が進む一方で、ここ数年議論に上がることの多いブランドセーフティや透明性ですが、今年のdmexcoでも数多くの講演で取り上げられており、引き続き議論の中心にあり続けるようです。

その中でFacebookを始め、Twitterなどのプラットフォーマーはフェイクニュースや差別的なコンテンツを含む有害なコンテンツへの積極的な対応や透明性の担保について言及していました。

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また、今年1月のIAB Annual Leadership Meetingでのデジタル広告の透明性を強く求めたスピーチが世界的に注目を集めた、P&GのCBOであるマーク・プリチャード(Marc Pritchard)氏がdmexcoにおいても登壇し、この件について一歩踏み込んだ話をしていました。

世界最大の広告主の立場から、これからのマーケティング活動にデジタル広告は欠かせないものであるとした上で、引き続きブランドセーフティや透明性の重要性を訴え、それらはあくまでメディアやプラットフォーマーが果たすべき大前提であると主張しました。

さらに、次世代のデジタル・マーケティングに必要な考え方の一つとして「MASS ONE-TO-ONE MARKETING」の推進を語っていました。それは、優良なメディアを選定し、ユーザーが情報を必要としている「モーメント」を適切に捉え、質の高いクリエイティブ(=個人個人のニーズに合致し、ブランド価値を訴求できるもの、ひいてはソーシャルグッドネスをもたらす価値のあるもの)を発信することが重要であるとしました。これにより、より良いユーザー体験の提供が可能になり、ブランド価値の向上、企業の成長、そしてその先のソーシャルグッドネスにつながっていく……。次世代デジタル・マーケティングの世界の中で「広告の価値」を高めていくことの重要性もデジタル広告の透明性と併せて提示していました。

■ 最後に…

広告主、プラットフォーマー、アドテク企業、アドエージェンシーが一同に会すdmexcoという場では、様々な立場の参加者が日々変化を続けるデジタル・マーケティングの世界における次世代のコミュニケーション手法の潮流を見極めようとしていました。テクノロジーが進化し、コミュニケーションの方法やデジタル広告のアプローチが多様化しても、マーケターは生活者・広告主両方のニーズにあったプラニングを行うことが益々重要であると実感しました。

◆プロフィール

okada

岡田 塁(おかだ・るい)
博報堂DYデジタル メディアプラニングユニット デジタルマーケティングストラテジスト

マーケティング・リサーチカンパニーにおいて外資系クライアント企業の営業・リサーチャーを経て、2014年より博報堂DYデジタル(旧博報堂DYインターソリューションズ)入社。TVCross Simulatorを始めとしたHDYグループオリジナルの統合プラニングソリューションの企画・開発・推進をする傍ら、リサーチを起点にクライアント企業のデジタル・マーケティングPDCA最適化業務に従事。

sawamura

澤村 彰子(さわむら・あきこ)
データドリブンプラニングセンター ダイレクトビジネスプロデューサー

営業、クリエイティブプロデューサーを経て、2010年よりダイレクトマーケティングに従事。ダイレクトビジネスプロデューサーとして新規顧客獲得におけるクリエイティブ開発やメディアプランニングなど一貫したプロデュースを行うほか、顧客の育成・優良化を目的としたCRMの開発・運用プランニングにあたるなど、フルファネルでの事業拡大を実践し、マーケティングオートメーションでオンライン/オフラインを横断したソリューションを開発。オンラインでの行動をリアルタイムに把握し、その結果に基づいたDMを自動的に出し分け、自動的に発送するソリューションをいち早く実行。

■関連情報
【2016.10.28】デジタル・マーケティング最前線 前篇-dmexco@ドイツ・ケルン
【2016.11.04】デジタル・マーケティング最前線 後篇-dmexco@ドイツ・ケルン

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