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マーケティング・ミックス・モデリング【まーけてぃんぐみっくすもでりんぐ】
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■ビッグデータの時代の中で、改めて脚光を浴びる「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」

マーケティングやメディアの環境が急激に変化し、複雑化していくのに伴い、コミュニケーション投資をいかに適切に設定し、各施策に配分するべきかという課題は、多くの企業にとって重要なテーマとなってきています。こうした課題への対応として、最近改めて注目されているアプローチが、マーケティングミックスモデリング(MMM)という手法です。

統計処理などによって、マーケット環境・構造を理解しようとするアプローチは以前からも行われてきましたが、生活環境全般にIT化が進み、取得可能な市場や生活者のデータが飛躍的に増大している「ビッグデータの時代」という背景もあり、マーケティング投資最適化の問題を解決する手法として改めて期待されています。

■マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)の手法

具体的なMMMの手法においては、売上などのマーケティング目標に影響していると考えられる多数の要因を「時系列データ」として蓄積し、統計的手法によって「要因間の関係を表現するモデル式」を導き出すことで、各要因の相互関係や影響度合いを明示するという手法が主流ではないかと思われます。

また分析に使用する要因データも多岐にわたり、TV・新聞・ラジオ・雑誌・交通・インターネットなどの「広告出稿データ」やPOSデータなどの「実購買データ」などに加えて、最近では「自社サイトへの流入数」や「ソーシャルメディア上の反響数」など「デジタル行動指標」も変数に組み込む試みなどが考えられます。さらに商品カテゴリーによっては、天候や経済指標など、マーケティング施策外の要因も、マーケティング目標に影響を与える変数として取り込むモデリングも可能でしょう。

こういったデータを活用することで、例えば広告展開を含めた様々なマーケティング要因が、売上などの最終目標や、ブランド認知や購入意向などの中間指標に直接的・間接的にどのような効果を与えているかを構造化して表現すること(構造モデル化)が可能になります。(図―1参照)

これら多数の要因の因果関係をモデル化し、その関係の適切なパラメータ(係数)を算出することで、各施策の貢献度を導くことがMMMの主要な目的といえますが、さらには『各要因の横断的なインパクトの把握(例えばTV広告とインターネット施策の相乗的なクロスメディア効果の把握)』、『過去データを基にした将来予測(例えば来期の設定予算水準による集客や売上の変化予測)』などを通じて、最終的には『投資配分の最適化』の実現が期待されます。

■博報堂DYグループ独自のマーケティング・ミックス・モデリング サービス【m-Quad】(エム・クアッド)

ただし、これまでの一般的な統計手法(例えば重回帰分析など)では、複雑な現実のマーケット環境をモデル化し、表現するには限界があったのも事実です。そこで博報堂DYグル―プでは、アイズファクトリー社と共同で最新の解析手法を開発し、MMMマネジメントシステム【m-Quad】として発表しています。

http://www.hakuhodody-media.co.jp/newsrelease/service/20140806_8362.html

m-Quadは、

①「構造型モデリング」という手法を使い、複雑なマーケティング環境を構造化して把握します。
②「ベイズ推定」という統計手法を導入することにより、実際に購買の現実を理解しているセールス現場の感覚的な要素や判断も織り込みながら、より現実的なモデルを構築します。
③「状態空間モデル」という手法を活用することで、経時的に変化するマーケティング効果指標の変遷を把握していきます。

などの特徴を有したサービスです。

【~最後に~ MMMを最適に活用するために】

ただしどれほどデータ量が増大しようと、あくまで「過去のデータ」に基づいてモデル化がなされていることを、理解しておくことは、MMMを運用する企業・広告会社にとっては重要です。例えばこれまでなかったような、自社や他社の特徴的な商品・サービスが現れた際に、当該マーケットには過去のデータでは予測しがたい大きな構造変化は起きる可能性が高まります。

しかしMMMを活用し、継続的にマーケット構造を把握していれば、そのような場合にもマ-ケット環境の何がどう変化してきたかを、いち早く把握することが可能になります。MMMを通じて継続的にマーケットを理解していれば、これまで効いていた施策の効果の増減や、他社商品・サービスの強みの変化などが、迅速に把握できる可能性が高まるのです。

つまりMMMとは、マーケティング施策の最終解答ではなく、それをマーケット理解のベースとして、変化する環境の中で継続的な成長を続けるための「マネジメントプラットホーム」であるべきなのです。

博報堂DYグループの提供すサービスが、m-Quad(=Mの4乗の意味)と称されているのは、MMM(マーケティングミックスモデリング)を行うのみならず、そのモデルを基盤として、継続的な商品やサービスのマネージメントをクライアントと協働で行っていくという“Manegement”の視点が込められています。

藤原 将史 データドリブンビジネスセンター ROIマネジメント部長

2003年に博報堂DYメディアパートナーズに転籍後、メディアプラニングに従事し、トイレタリー・飲料メーカーなどを担当。
その後、メディア・コンテンツマーケティグ部で、メディアデータの整備やPDCA活用を推進。
現在はオンライン・オフラインを統合した「コミュニケーションROI業務」を担当。2011年度より現職。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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