女子のトレンドとインサイトを一気読み!「キャリジョ研」レポート

なぜ女性にこれが流行るのか?どうしたら女心がつかめるのか?分かりそうで分かりにくい女性のインサイトを分析して、男性にも年配者にも分かるように翻訳いたします。このコラムのネタは、得意先との雑談、打ち合わせでのブレスト、深夜の飲み会の小話に是非お使いください。女性をターゲットにした広告マーケティングやメディアプロデュースに役立てれば、これ幸い!

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第2回「爆買い」ならぬ「ライフスタイル買い」って?  

「リア充」女子の次のステージ

スニーカー、サードウェイブコーヒー、代官山。
女子たちのファッションが、カフェが、ショップが、街が、部屋が、次々と「アメリカ西海岸風」&「ハワイ風」になったこの夏。あなたのFacebookのタイムラインにも、どこか海色に染まっていた素敵な女子、いなかっただろうか。
彼女たちはきっと「リア充」女子ならぬ「ライフスタイル充実」女子。
彼女たちのInstgram(以下インスタ)をみると、現実とは思えないくらい「オシャレすぎる生活」が蔓延している。

流行りのエフォートレス(がんばりすぎない)ファッションの象徴であるスニーカーを履きこなすワタシ。
部屋が西海岸風にコーディネートされていてサーフボードからアンティークな雑貨や食器まで揃えているワタシ。
朝ごはんがフルーツやカラフルな野菜でいっぱいで、ヘルシーなワタシ。
おしゃれなランニングイベントや音楽フェスに、イケてる仲間とおそろいの服で行くワタシ。
光の加減、カメラの位置、かわいく見えるポーズまで完璧に自分を表現できるワタシ。
そんなライフスタイルを送るワタシ。

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インスタや写真加工アプリでは、どんなにダサいワタシでも、どんなにダサい街でも、かすれて青みがかかって、なんだか海を感じる美しい世界観の写真に仕上がる。
ライフスタイルを充実させたいし、充実していると自己確認したいし、この充実っぷりを他人にもアピールしたい「ライフスタイル充実」女子。彼女たちはFacebookやインスタで他人から評価され、たくさんの「いいね」をもらいたい。そのためにはステキに見せるための小道具を買いそろえ、撮影や加工で工夫をして、ステキなライフスタイルに「見せる」ことが重要だ。
ライフスタイルを見せたい!という欲望は、インスタの浸透が拍車をかけた。同じSNSでもTwitterは言葉のコミュニケーションなのでネガティブな発言だろうととにかく面白いことはリツイートされツッコミをうみやすく盛り上がる。しかしインスタは写真を使ったコミュニケーションだ。目で見て気持ちのいいものが求められるポジティブ系SNS。ライフスタイルが充実している人だと思われたい!見せたい!褒められたい!そんな女子たちは、背伸びをしてでもポジティブな投稿をしなくてはならないのが特徴だ。

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インスタを見ていて興味深いのは、女子たちがそれぞれの個性をアピールしているようにみえるが、実はそうでもないこと。よく見ると没個性。世界にひとつだけの花ではなく、世界でよく見る花。みんなほぼ同じセンスで、同じような理想的なライフスタイルを目指し、ほぼ同じ行動をとっている。その理由は、みんなからたくさんの「いいね!」が欲しいから。よりたくさんの人に、浅くてもいいから広く評価されるライフスタイルでないといけないから。個性が尖りすぎていてもよくない。みんなが認めてくれそうな「正解」を求め、似たようなライフスタイルになってくる。今年の夏、みんなに「いいね!」されるという正解の一つが「西海岸風」「ハワイ風」ライフスタイルだった、という事だ。

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時代とともに進化する「ライフスタイル買い」

女子たちが「正解」のライフスタイルを形作るために、ライフスタイルの「パーツ」をせっせと集め、セコセコと巣作りをはじめる。ライフスタイルの完成形を目指し、次々と消費が加速していく。これが彼女たちの「ライフスタイル買い」だ。

彼女たちの購買意欲を刺激するには、スペックありきの商品開発・プラニングをするというアプローチでは、なんだか物足りない。ライフスタイルから逆算して考えることが重要だ。つまり、彼女たちに「こんなライフスタイルになりたい」と思ってもらえるような企画や演出にこだわるという、小手先のテクニックが必要だ。だからこそ、コミュニケーションのプランを考えるときには、ライフスタイルを提案できるような仕組みがあるといいだろう。
もう数年前からマーケティングの現場では「モノからコトへ」「ライフスタイル」とは言われていたとは思うが、これまでと違うことは、「メディア環境・技術の進化」と、「生活者自身の進化」があること。

「メディア環境・技術の進化」でいうと、
たとえばビッグデータを使って個人の趣味嗜好や行動履歴をどんどん分析できるようになっている今、ただの商品の提案ではなく、個人に合ったライフスタイルの提案をしていくのもいいだろう。
ただ家という箱を売るのではなく、その家族の好みに合わせて、家具、家電、雑貨、食器、リフォームや、家事サービスまでトータルで見せたほうが家の購入意欲を高めるかもしれないし、すべての商品やサービスをまとめてまるっと買いたいという人が増えるかもしれない。ただ食材を売るのではなく、その家族の健康状態や好みに合わせて、旬の食材、調味料、レシピ、調理器具、健康管理サービスまでトータルで見せたほうが、購入意欲を高めるかもしれないし、その家族はもっと健康になれるかもしれない。みんなが健康。うん、なんだか1億総活躍社会へ一歩前進できそうだ。

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「生活者自身の進化」でいうと、
ライフスタイルという視点で情報や生活のリテラシーがすこぶる向上している。それは特に前述の「ライフスタイル充実」女子に顕著だ。プロモーションにおいても、そんなリテラシーの高い彼女たちに参加してもらう仕組みをつくり、編集する場、発信する場を設けるのもいいだろう。

「ライフスタイル充実」女子を取り込もう

では、「ライフスタイル充実」女子から注目してもらうには、どうしたらいいのだろうか。
「アンバサダーマーケティング」という言葉もあるように、そのブランドファンをアンバサダー(大使)としてクチコミを広げるPR手法も一つの手。またサンプリング施策も、たった一回分のお試しサンプルをただ配るだけでは、これはこれはもったいない。モニターとなった生活者たちのライフスタイル充実欲を掻き立てられるような仕掛けをつくろう。写真に撮りたくなるように、あえてパッケージデザインにムダにこだわったり、ツッコミたくなるようなきわどいキーワードを開発してみたり。一見、商品の尾ヒレハヒレに思えるところも注力して企画してみると意外とターゲットに響くかもしれない。さらにライフスタイルを想像できるような世界観にこだわった会場でイベントを企画したり、コンセプトショップを作ったりして、イケてる「ライフスタイル充実」女子を招待してサンプリングするのもいいかもしれない。彼女たちがその商品やサービスを使って、ワタシの部屋がどうなるか、ワタシの食生活がどうなるか。みんながSNSにその生活を投稿していくと、商品の新しい側面がみえてくるかもしれないし、新たなファンが生まれるかもしれない。

繰り返しになるが、「ライフスタイル充実」女子たちは次のライフスタイルの「正解」や、新しいライフスタイルの「パーツ」を求めている。いまあなたが売りたい商品がその「正解」の「パーツ」になれば、彼女たちは自然と寄ってくるだろう。そのためには、彼女たちの生活実態をSNSで観察するだけでなく、チームの仲間にいれて一緒に戦略を練るのも面白いかもしれない。

illustration : Yurika Yoshida

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キャリジョ研って?
「働く女性(キャリア女性)」をテーマに、博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケッター、女性メディアプロデューサーが有志で集まった社内プロジェクト。女性のトレンドを集めてのインサイト分析や、有識者ヒアリング、座談会ならぬ女子会での定性調査、インターネットによる定量調査、クラスター調査などから「働く女性」を徹底的に分析。その成果を社内外のナレッジとして共有し、日々のマーケティング業務やメディアプラニング業務に生かしている。

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プロフィール
瀧川千智(たきがわちさと)
雑誌局 業務推進部
兼メディア環境研究所研究員

2005年博報堂入社。マーケティング職を8年経験したのち、博報堂DYメディアパートナーズの雑誌局へ異動。現在は博報堂DYメディアパートナーズの「メディア環境研究所」も複属。女性プロジェクト「キャリジョ研」のメンバー。好きな科目は日本史、好きな食べ物は漬け物、好きなニュースは芸能情報。

「キャリジョ研」レポートVOL.1 この現象、言うなれば「フォトジェニック消費」を読みたい方はこちら↓

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