レポート
セミナー・フォーラム
「枠 トゥ ザ・フューチャー!」クリエイティブが奏でる、これからの時代の新聞・雑誌広告(ABC東京フォーラム2016)(前編)
REPORT

2月2日に開催されたABC東京フォーラム2016においてメディア・コンテンツクリエイティブセンターの杉山豊が登壇。「枠でワクワクさせるには?」「枠をワークさせるには?」そして「枠はちょっといじれば粋(イキ)になるハズ!」という発想から、さまざまな事例や証言を取り上げながら、新聞・雑誌広告のこれからの可能性について語りました。

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杉山豊と申します。本日、若干新聞寄りではありますが、本当にシンプルに「新聞・雑誌広告ってやっぱりいいものだな」と改めて皆さんに感じていただく機会になればいいと思っております。僕自身は1987年に博報堂入社、2010年から博報堂DYメディアパートナーズに所属しています。ここ20年くらいクリエイティブ畑におりますが、実は映画ライターという肩書きも持っていて、特にアメコミ原作の作品を得意としています。そこでちょっとご紹介したいのが皆さんもご存知のスーパーマン。1938年、第二次世界大戦以前に生まれたスーパーヒーローの元祖です。まだアメリカ国民が国家に対して理想を持っていた頃、主人公が地球での仮の姿として選んだのは新聞記者という職業でした。また1960年、ベトナム戦争でアメリカの価値観が揺さぶられていた頃に生まれたのがスパイダーマン。主人公はタブロイド紙でカメラマンのアルバイトをします。写真ジャーナリズムの隆盛という時代背景が透けて見えます。続いてスーパーヒロインのミズマーベル。ミスでもミセスでもなくミズ。ウーマンリブが盛んだった70年代に誕生しました。彼女の職業は「ウーマン」という雑誌の編集長です。これらの例は当時のアメリカの時代背景がよくわかって面白いのですが、それ以上に、まずいかに新聞が社会の正義として機能しているか、そして雑誌が世の中の新しい文化、習慣を生み出すメディアとして捉えられているかがわかると思います。

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■新聞・雑誌についていま何が言われているか

私が同業者や周囲の人たちから集めた証言をご紹介します。これらを通じて、紙媒体としての新聞・雑誌が持つパワーや可能性を改めて考えていければと思います。

「『届ける(リーチ)』から『つながる(エンゲージメント)』へ」
情報をただ届けるという段階から、地域や読者への深い知見を大きなデータとみなして社会や地域がつながっていくメディアになっていくべきだという声です。

「“印刷されている”ことに価値がある」
ネット上ではいまや様々な人が文章を書く時代になったので、かえって紙に印刷されている時点でそれが素晴らしい、というふうな捉えられ方になっていくかもしれません。

「新聞広告はデジタル施策の一つでもある」
新聞広告がネット上で話題になる=「バズる」ことも多々ある。デジタル施策のひとつとして新聞広告を捉えるという手もあります。

「ターゲット、顧客でもない『読者』という存在」
新聞・雑誌ならではの存在です。通常はどれだけの人数読んでいるのかという数字の話を前提に、だったらこういう広告を出しましょう、となる。そうではなくて、●●新聞の読者はこういう人だから、こういう広告がいいですよという提案のしかたも必要になってくるのではないでしょうか。読者を特定のキャラに見立てる「擬人化」の発想も使えそうですね。

「なぜ画面より紙のほうが間違いに気づきやすいのか?」
有名な議論で、「なぜ画面より紙のほうが間違いに気づきやすいのか?」というものがあります。答えを言うと、脳科学的に、人は紙に印刷されたものを読むときは脳が分析モードになるそうです。一方PCやスマホの画面を見ているときはリラックスモードで情報を受け流す。分析モードの脳に対してどう見せるか、という視点も必要だと思います。

「情報の伝え方は新聞が一番しっくりくる」
情報が煩雑で不明瞭になっているものこそ、新聞の伝え方が一番しっくりくる。発信者が明確で情報がきちんと整理、編集されているからです。

「映像よりも文字のほうが自分ごと化できる」
テレビでもニコニコ動画でも、テロップの力が強い。多くの人はまずテロップに共感できるかどうかで視聴を判断するのだそうです。

「文字が好き、だから新聞・雑誌が好き」
表意文字である日本語は、ひとつひとつの文字がビジュアライズされて意味を持つ。そんな「文字」に惹かれる人もいるんですね。

「新聞を広げると文字でつくられたバーチャルリアリティにいる感覚になれる」
新聞一面で360°自分を囲うと、バーチャルリアリティの中にいるように感じられる。メディアはどれだけ情報体験をつくれるかも重要です。

「新聞社力・雑誌社力というもの」
新聞社や雑誌社が持つファシリティ力のことです。ローカルに強い新聞社なら地元企業と力を合わせられるし、女性のマーケティングが必要な場合は雑誌社と組むこともできる。その総力で企業の課題に答えていくべきでしょう。

「新聞広告の発想で企画の良しあしを見定める」
そう仰ったデザイナーの方もいました。新聞広告を作ると、その広告において何を一番伝えたくて、何を言うべきか、頭が整理されるそうです。新聞の一面に納めきれなければ、良いキャンペーンではないとも思っているとか。

「地元人の人に支持される地元のメディアとしての新聞」
地方でテレビをつけると東京と同じ番組をやっていますが、新聞は地方紙がそれぞれある。博報堂ブランドデザイン若者研究所の原田曜平が言っているような「マイルドヤンキー」の人たちは地元を大切にしている。新聞はそういう人たちに求められる地元メディアという見方もできます。

「企業としてきちんとものを言いたい時は新聞」
企業が居住まいを正して何かをきちんと言いたいときは、テレビCMでもネットでもなくて、新聞広告を出稿するのだと思っています。

後編~「仕面」としての新聞・雑誌広告を紐解く~へ続く)

<プロフィール>

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杉山豊
博報堂DYメディアパートナーズ メディア・コンテンツクリエイティブセンター

1987年博報堂入社。セールスプロモーション、デジタル、コンテンツ・ビジネス、クリエイティブ畑を歩み、2010年から博報堂DYメディアパートナーズに新設されたクリエイティブ・チームに所属。現在メディア起点の広告コンテンツの開発に取り組む。 

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