レポート
アドウィーク・アジア
Agency vs Consultant シリーズ。今回はガチバトル・ライブスタイル!( アドバタイジングウィーク・アジア2019 博報堂DYグループセミナーレポート)
REPORT

毎年この季節の恒例となったアドバタイジングウィーク・アジア。今年も5月27日~30日に六本木の東京ミッドタウンで開催され、刺激的で多彩なセッションが繰り広げられました。
本稿では、おなじみとなりつつあるパネリスト―イグナイトの笠松良彦氏、博報堂及び博報堂DYメディアパートナーズの安藤元博執行役員、電通デジタルの鈴木禎久氏、アクセンチュアの黒川順一郎氏―が再々集結を果たしたセッションの模様をご紹介します。

パネリスト
安藤元博:株式会社博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ執行役員
鈴木禎久:株式会社電通デジタル 代表取締役社長
黒川順一郎:アクセンチュア株式会社 アクセンチュア インタラクティブグループ日本統括 株式会社IMJ 取締役社長 兼CEO
モデレーター
笠松良彦:株式会社イグナイト代表取締役社長Executive Producer

笠松
このセッションでは、公益社団法人日本アドバタイザーズ協会を通じていただいたさまざまな質問をもとに進めたいと考えています。こうしたセッションが予定調和で終わってはつまらないこともあって、登壇者の皆さんには質問を事前に伝えていません。ではクエスチョン1から始めましょう。

株式会社イグナイト代表取締役社長Executive Producer 笠松良彦氏

Q1 デジタルとマスの統合的な指標・KPIに関する各社取り組みや考え方を聞きたい

鈴木
テレビやデジタル、デュアル(ファネル)、さらにCRM領域まで含めて、業種や状況によって異なるので、絶対的な指標はないと考えています。基本的には、それぞれの業種や状況に応じて大事なものを採用すべきです。人の数で転換して指標にする取り組みもあります。

黒川
指標についていうことは三点あって、まず一つは、指標で重要なのは、企業の売上げや収益などにひもづくものであることです。二つ目は、デジタルとマスを使って、どのようなコンバージョンが起きたのかを可視化するのは難しく、ある程度はジャンプが必要ということです。最後は、体験のように目に見えないものを、指標によって可視化することに取り組むことが必要、ということです。

安藤
指標を何のために使いたいのか、どのように使うつもりなのかを、質問者にまず問いたいですね。それが私の答えです。デジタルとマスの統合的な指標を成立させるためにはいくつかの技術的な課題もあり、できることもできないこともある、というのが正確な現状だからです。が、統合的指標を使いたい理由さえわかれば、最適なアプローチを提案することができます。話はそこから始まるべきということですね。

Q2 国内でデジタルツールを活用してブランディングを行う際に、
1“絶対にやってはいけない事”
2クライアントに対して、“もっとこうすればいいのに”と思う事(クライアントに欠けているものは何?)

鈴木
デジタルツールも、あくまでツールにすぎないので過信しない方がいいと思います。大切なのは想像力で、データやツールだけで判断してはいけないといえますね。

安藤
これはあえていうのですが「デジタルツールを使ってブランディングをする」という考え方自体が、十分ではない、と感じます。ブランディングはさまざまな手段を使ってトータルに達成すべき行為です。デジタル施策はもちろん重要で有益ですが、そのひとつの要素です。「デジタルツール<を>活用して」ブランディング、という考え方そのものに落とし穴があり、「デジタルツール<も>活用して」、と考えるべきですね。

黒川
ブランディングには、イメージ作りなどの表層的なものでだけなく、顧客の手に届くところまでの体験も含めて、もっとコアになるものを考えることが必要ですね。デジタルは、あくまでもそのための手段の一つです。

笠松
皆さんの意見をまとめると、デジタルツールはあくまでデジタルツールであり、マーケティングの課題や目標は別にある。目標などへのアプローチにデータを使うのはいいが、データだけを近視眼的に見るのは意味がないということになるでしょうか。

Q3現状の業務において、コミッションとフィーのどちらで仕事をすることが多いか。
自社としてはどちらがやりやすいか。
それぞれのメリット、デメリットをどう考えるか。

黒川
コンサルティングのビジネスは、ひとりひとりの価値に対して、価値に見合った対価をいただくという考えですから、当然フィーだけで、コミッションはゼロです。

安藤
博報堂は広告代理店というビジネスモデルから出発していますから、コミッションが大きかったわけです。ただし、黒川さんも言われているように、最終成果に応じた報酬をいただくというのは当たり前のことで、テクノロジーの発達によって可視化できるところも大きくなってきましたから、これからもっとそちらの方向に向かうのは自然なことだと思います。

鈴木
電通はコミッションビジネスですが、電通デジタルでは、「この人にやってもらうので、この価格です」ということを目指しています。その方向に今後はもっと進むと思いますし、進めたいとも考えています。また、アクセンチュアさんなどと競合になれば、フィーで戦わざるを得ないですからね。

電通デジタル 代表取締役社長 鈴木禎久氏

Q4 自社のフィーの価格の妥当性についてどうお考えですか?(高すぎる? 安すぎる?)媒体管理フィーはもっと下げてもいいと思うし、逆にクリエイティブ無料みたいなやり方は、業界全体としてやめるべきだと思っていますが…。

鈴木
クリエイティブ無料というのは、クリエイティブを冒涜していると感じます。クオリティのあるクリエイティブは人を動かすし、成果も出すわけですから、質問にあるような売り方はしません。

安藤
クリエイティブ無料ということは、そこにはレバレッジが効いていないといっているようなものです。自分たちが提供するクリエイティブが付加価値を提供していないと思うから、そうした売り方になるのでしょうが、それは我々の考え方ではありません。

黒川
そもそもクリエイティブとは何ですか?

鈴木
アイデアすべてです。顧客体験設計、ホームページやWEBコンテンツも、戦略の立案もすべてクリエイティブといえます。

黒川
そもそも付加価値を創造する存在であるクリエイティブが無料というのはありえないですね。

安藤
想像ですが、この質問でのクリエイティブとは、バナーなどのごく限られた広告制作物のことを指しているのかもしれません。

黒川
バナーなら機械でも制作できる時代になっていますよね…。

鈴木
それだって、人間の知は入っています。

黒川
そうはいっても、狭義のクリエイティブはどんどん安くなっていますよ。

鈴木
そこはちょっと考えが違う。何万本ものバナーの中には、クリックやコンバージョンアップを掘りあてるものはあると考えています。そこは重要です。

Q5デジタル領域のエージェンシーの選定において、見るべきポイントはどこか?

鈴木
我々がご提案する人と実績を見てほしいですね。成功確率の高い人、メンバー・チームであるかということと、過去にどういった結果を出してきたかを見てほしい。

黒川
エージェンシーは、お客様のビジネスパートナーであるべきです。ビジネスの成長を助け、パートナーとしてお客様のそばにずっといる覚悟が求められます。そのためには、当然、お客様の業界に関してよく知っていなければなりません。門外漢では話になりませんからね。もう一つは、スピード感を持って、その企業に合わせたサービスを提供できる構造体であるいうこと、僕はこの二点がポイントだと思います。

アクセンチュア株式会社 アクセンチュア インタラクティブグループ日本統括/株式会社IMJ取締役社長兼CEO 黒川順一郎氏

安藤
デジタル領域のエージェンシーの選定において、黒川さんの話に付け加えると、いまやマーケティング、ブランド、商品/事業がおかれている領域はすべてデジタルといっていいと思います。生活全体、ビジネス全体が「オールデジタル」の環境下で、どういうパートナーを選ぶのですか、というのが、ひとつのポイントになります。狭義のデジタル領域をしっかりとすすめながらマーケティング全体、ブランド全体の成功につながっていく上で、どのようなノウハウとナレッジ、クリエイティビティ、データやテクノロジーの基盤をもち、どういった実績があるのか、といったことが、エージェンシー選定のポイントになるのでは、と思います。

鈴木
生活・ビジネス全体がデジタル、という考え方には賛成です。

笠松
こういう質問が出てくるのは、エージェンシーにもいろいろな会社が沢山あって、誰に声をかけていいのかわからない、誰が何をしてくれるのかわからないということが、クライアントにあるからだと思います。それを招いたのは私たちの責任であり、発信不足ともいえますね。

Q6 俗人的な担当者のレベルの違いを、今後どう解消していくか? それとも各社のなかで、そこは正直諦めざるを得ないと考えているのか?

安藤
どんな分野の、どのようなレベルなのかがこの質問からだけではわかりませんが、デジタル運用の知識や、デジタルメディアの最新状況に関する知識といったことのすべてに精通した担当者のみかと問われれば、100%の対応ではなかったかもしれません。これに対しては個々人のレベルを上げると同時に組織的に体制強化し、しっかりと改善していきます。しかし今、あらゆることが急速に動く時代において、最前線の技術を含むすべての面に詳しい人はいない、というのもまた事実だと思います。それが現代におけるマーケティングの、日本のみならず世界の趨勢であることを、クライアントのみなさんにもわかってもらう必要があるし、我々はみなさんの要望にたいして多様な専門家による的確な「チーム」をつくって対応していくことが必要です。

博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員 安藤元博

黒川
個の時代になるので、レベルの高い人を集めるには、集める側が、そうした人が共鳴でき、引き付けることができる「磁石」、つまりビジョンやミッションをしっかりと持つことが必要です。お客様も、みんながやりたいと思えるテーマを持つことが求められます。

Q7 各社に依頼したほうがよい理由を30秒で教えてください

鈴木
デジタルでも結局、人なんです。人の想いや想像力がわかる会社でありたいと思っています。

黒川
企業の変革を具体化し、結果を出すには総合力のある会社が必要です。それが私たちです。

安藤
ひとことでいうと、博報堂は広義の「マーケティング」の会社です。ここでマーケティングというのは、デジタル領域は当然ですが、戦略も、エグゼキューションも、クリエイティブやイノベーション領域も含みます。必須であり広範なマーケティングの能力を有し、それらを統合し、クライアントの成果にパートナーとして向き合えるのが博報堂です。

笠松
話は尽きませんが時間となりました。みなさま、本日はありがとうございました。

 

◆プロフィール

安藤 元博
株式会社博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ執行役員

 

鈴木 禎久
株式会社電通デジタル 代表取締役社長

 

黒川 順一郎
アクセンチュア株式会社 アクセンチュア インタラクティブグループ日本統括
株式会社IMJ 取締役社長 兼CEO

 

笠松 良彦
株式会社イグナイト 代表取締役社長 Executive Producer

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