コラム
メディア環境研究所
“女子とソーシャル”を徹底解剖 10代・20代女子の情報行動とコミュニケーションのヒント
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タイムリーなテーマで情報発信する、社内向けのカジュアルなイベント「メディア環境研究所サロン」。先日のテーマは“女子とソーシャル”。ここで見えてきた10代・20代女子の情報行動やその源にある深層心理から、彼女たちとのコミュニケーションのヒントを探りました。

■SNSなしでは生きていけない!?

まず、“女子とソーシャル”のきっかけとなったデータをご紹介しましょう。ソーシャルメディアは約7割(全体平均)が利用していますが、中でも高いのが10代・20代で、ほぼ100%が利用。「SNSは自分の暮らしに必要だ」と考えているのは20代女子が最も高く、ついで10代女子となっています。また「SNSから得た情報がきっかけで、テレビを見ることがある」も10代女子・20代女子共に7割以上で、メディア行動の起点になっていることがわかります【図表1、2、3】。

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では、彼女たちはどのようなSNSのサービスを利用しているのでしょうか。注目したデータがこちらです【図表4、5】。サービスの利用の高い順(全体平均)にLINE、Facebook(FB)、Twitter、Instagram(インスタ)となっています。全体平均では2割を切っているインスタは性年代別に見ると、20代女子で5割強、10代女子では7割近くと、10代・20代女子に突出して利用者が多い。ここまで若年層女子に特化した傾向が見られるのはインスタだけです。インスタが女子を惹きつけるポイントは何なのでしょうか。

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■インスタ女子の行動実態にびっくり

インスタ女子の行動実態を探る為に20代社会人女性にグループインタビューを行ったのですが、例えば、ある女子は、トイレや会議室に行くまでの1分の間に見るという(笑)。一日に何度も無意識に見ているようです。グループインタビューから見えてきた情報行動のポイントは3つ。1つ目は「情報の量とスピード」。短時間で接する為、文字はほとんど読まず、ビジュアルで瞬時に内容を把握します。大量の情報量をさばくためにスピードも必然的に速くなります。こんなデータもあります【図表6、7】。世の中の情報量の多さや情報のスピードの速さを感じているのは若年層、特に女子。高齢層の方が世の中の情報量の多さや情報のスピードの速さを感じているのではないかという予想は見事に外れました(笑)。2つ目は「検索行動の変化」。自分の気分や嗜好に合った情報を、言葉ではなくビジュアルで検索します。その起点がインスタになっています。また、起点ではなく、最後にインスタで確認する人もいます。いずれにしても必ず複数の情報源を通して360°全方位から確認します。若年層女子は検索リテラシーが高いんですよね。3つ目は「情報の質と世界観」。情報が欲しい時に検索するのではなく、暇な時に自分の好みに合った情報をストックしておいて、必要になったら、そのストックの中から探す。インスタはビジュアルで世界観を演出できるので、自分の“好きを溜めておく場”として利用しているようです。ビジュアルで直観的に探したり、自分好みの情報ストックから探したり、情報検索の質が上がったという声がインタビューでも出ていました。

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■FBは冠婚葬祭!?LINEは重たい!?

ここでソーシャルメディアに対する意識・態度を示したポジショニングマップを見てみましょう【図表8】。LINEは近しい友人とのやりとり、FBはたまにしか会わない友人とのやりとり、などソーシャルメディアを使い分けている様子が見えてきます。インスタは買い物の参考。自分の“好きを溜めておく場”だから、人と繋がることより、自分の世界観や趣味嗜好に合った情報を重視します。10代女子と20代女子でも使い方の違いがあるようです。20代女子は、さまざまな人が見ているFBでは冠婚葬祭的な内容が中心で、オフィシャルな情報発信の場として使用。社会人になってコミュニティが広がった結果、使い分ける必要が出てきたのでしょう。一方、友だちコミュニティが中心の10代女子は、FBの利用自体が低い。また、LINEは近しい相手と日常的に使うものだから、軽い気持ちで構えずに使える一番気楽なコミュニケーションツールだと思っていたのですが、10代女子にとっては違うようです。安易に送って「うざい」「重い」と思われたくないから気楽に送らないという。近しい相手だからこその気遣いなのか、驚きです。

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■ゴールは“アクション”ではなく、「いいね」

インスタでは、情報のスピードよりも質が大切です。写真は厳選し、加工してからアップするというように、リアルタイム性よりも、自分の世界観を演出した投稿をすることを重視します。それによって、例えばケーキを選ぶ際には、「美味しそうなケーキ」ではなく「インスタ上で映えるフォトジェニックなケーキ」を選ぶようになるし、旅先も、「行きたい場所」より「良い写真が撮れそうな場所」を選ぶ。購買行動、選択基準が変化してきているのです。インスタに見る情報行動のパターンを見てみましょう。自分の“好きを溜めておく”ストックから必要な時に検索し、その情報を360°全方位から“チェック”して、購買などの“アクション”を起こす。“アクション”した後に、買ったものをどう使うのが良いのか、どう見せるとよいのかを確認してから、投稿します。“アクション”はゴールではなく、情報行動の真ん中に位置しています。ゴールは「いいね」をもらう、つまり“承認”を得ることにあるのです【図表9】。

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 ■WANTからSEEMへ。「〇〇したい」より「〇〇に見られたい」

こうした情報行動の背景にはどんな欲求があるのでしょうか。かつては「あれが欲しい」「ここに行きたい」という風に、欲求はストレートな「WANT」でしたが、いまの若年層女子は、商品やサービス、行動を通じて、おしゃれに暮らしている「ように見せたい」、洗練された生活を送っている「ように思われたい」など、何かを手に入れることではなく「ぽく見せたい」という「SEEM」を重視するようになってきているように思います。ですから、若年層女子とコミュニケーションする際には、商品やサービスの良さをダイレクトにアピールするのではなく、「この商品を買うと〇〇な生活ができそう」、「あの場所に行けば△△な世界が広がりそう」といった世界観を醸成してコミュニケーションすることが大切なのではないでしょうか。

■新たな兆し

最後に“女子とソーシャル”にはどんな兆しが見えているのでしょうか。世界観の演出が求められるインスタでは、“加工疲れ”という側面もインタビューから見えてきました。また、きれいな自分の世界観を見せたい一方で、いまこの瞬間の気分をタイムリーに届けたいという欲求もやはり存在します。最近、タイムラインには残らないストーリー機能という動画が、10代女子に支持され始めています。動画が簡単に撮れて、すぐに投稿できる。24時間で消えて残らないので、きれいじゃなくてもOK(笑)いまの瞬間が伝えられる楽しさから、人気が出ているようです。こうした動画の活用も、今後はさらに広がっていくかもしれません。

 

【関連情報】メディア定点調査2016

新美 妙子 メディア環境研究所

1989年 博報堂入社。新聞局、メディアマーケティングセクションを経て、2013年4月より現職。シニア研究など生活者のメディア行動研究に従事。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議)編集長。「メディア10年変化(M10)」社内刊行。2016年よりメディア定点調査担当。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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