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SXSW2019で語られた、これからの「情報」「メディア」「コンテンツ」のあり方とは
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※本記事は『PRONEWS』に2019年3月29日に掲載された記事を許可を得て転載しています。

新たな形の情報、メディア、コンテンツ

現在の映像とは、映画館、TV、スマートフォン、デジタルサイネージなど、なんらかのスクリーンに投射されるものが一般的だ。しかし、今後、そのスクリーンの外に出るような、新たな形の情報、メディア、コンテンツが生まれていくとしたら?SXSW2019のInteractiveでは、複数のセッションでそうした議論が熱く行われた。

まず会期初日、マイクロソフト ガレージに所属するM.Pell氏が語ったのは、「スマートインフォメーション」という、これからの情報のあり方だ。

ハットをかぶり、颯爽と登場したM・ペル氏に会場は沸いた

現在の情報は、二次元の平面の中に閉じ込められた、静的なものにすぎない。たとえば、私たちは今、経路案内ひとつとっても、スマホのアプリと実際の道路を見比べながら移動し、駅では構内看板で路線の乗車口を見ては、またアプリを確認して、ホームのサイネージで発車時刻を確認して…を繰り返している。見るべきスクリーンはどんどん増え、いま、ユーザーは分散化した画面を、自分の眼できょろきょろと追うのに必死である。こんな状況が果たしてよいのだろうか、というのが彼からの問いだ。

Pell氏は言う。「情報というものの根本的な性質は、今後、AI+XRによって完全に変容する」と。これまではデータを情報に加工する作業は人の手が加わっていたが、これからは大量のデータからAIによって、意味のある情報が動的に生成され、それはXRなどのインターフェースにリアルタイムに逐次投射されていく。「死んだピクセルと向き合う時代は終わりを告げる」のだ。この、従来のスクリーンを飛び出した動的な情報こそが「スマートインフォメーション」という概念であり、「スマートインフォメーションプラットフォーム」なるものも構築されていくだろう、と提言した。

M・Pell氏が提唱する、情報のレイヤー構造。ビットレベルから、上位にいけばいくほど、人間にとって有意義な「知恵」となっていく。反転している「インフォメーション」のレイヤーが、これから「スマートインフォメーション」として、大きく変わろうとしている

このようにXRやARが、新しい情報のプラットフォームをうみだすのでは、という議論は他にもみられた。「ARは人間の知性を増幅させるのか」というテーマのセッションでは、これからのARの役割を(1)ビジュアライゼーション、(2)アノテーション、(3)ストーリーテリングの3点にあるという。

ARについて13年間研究を続けているHelen Papagiannis博士

「アノテーション」という役割を説明する上で、セッションの中で大きな笑いを誘っていたのが、なんと日本の地下鉄の券売機まわりのインターフェースだ。訪日外国人が日本語だらけの表示にかこまれた券売機を前にまごまごしているところ、様子を察した駅係員が券売機横の小窓からにょっきりと現れるというもの。筆者もこの光景は実際に地下鉄でみたことがあるが、海外の方からすると、非常に奇妙で可笑しくみえるようだ。

こうした状況を解決するのに、今後はARが生活空間の情報を視覚化し、道案内のような付帯情報をユーザーに与えうるはずだ、という点において、強い印象を参加者に与えていた。

ARは現在のゴーグル型のゲームのような閉じたストーリーテリングだけなく、ロケーションに応じたストーリーテリングを提供しうるはずである、という提言は、冒頭のスマートインフォメーションの概念にも近いと言えるだろう。

■転載元:『PRONEWS』2019年3月29日掲載
[SXSW2019]Vol.03 SXSW2019で語られた、これからの「情報」「メディア」「コンテンツ」のあり方とは

 

■プロフィール

加藤 薫(かとう・かおる)
メディア環境研究所 主席研究員
1999年博報堂入社。菓子メーカー・ゲームメーカーの担当営業を経て、2008年より現職。生活者調査、テクノロジー系カンファレンス取材、メディアビジネスプレイヤーへのヒアリングなどの活動をベースに、これから先のメディア環境についての洞察と発信を行っている。2018年4月より東京大学情報学環 非常勤講師。

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