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【ADFEST2016】審査の指針は“パワフルさ”
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3月16~19日、タイのパタヤで開催された「第19回アジア太平洋広告祭(ADFEST)」。メディア部門、ブランデッドコンテンツ&エンタテインメント部門の審査員を務めた、中澤壮吉データドリブンメディアマーケティングセンター長代理に、現地での審査の様子や今年のADFESTの傾向などについて振り返ってもらいました。

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クリエイティビティの祭典

審査員としてはもちろんADFEST自体、参加は初めてだったのですが、やはりADFESTは“クリエイティビティの祭典”だという印象を強く持ちました。今回ADFEST全体を貫くテーマとして設定されていたのが「クリエイティブ・インテリジェンス」。そこには、クリエイティビティを発揮する範囲や対象を限定せず、もっと自由に拡張・開放していこうというメッセージが込められているように感じました。“拡張・開放”というのは、プロダクトやサービス、ソーシャルイシューとの向き合い方、あるいはメディアそのものを創造するというようなこと。会場には、問題を大きく設定してクリエイティビティによってそれを解決してみせようじゃないか、という“力くらべ”感が充満していました。

審査の指針となった“パワフルさ”

私が審査員を務めた部門で最終的に問われたのは、その作品が“パワフルかどうか”ということ。審査の現場では、ストラテジーやリザルトといったクライテリア(評価要素)についての突っ込んだ議論よりも、結局、パワフルさの相対比較に意見をぶつけ合うかたちになりました。パワフルさ・・・基準が曖昧と言われればそれはそうなのかもしれませんが、国によって社会環境やマーケットが違う中で比較しなければいけないときに、共通の価値観をもって審査に臨もうとするジュリー(審査員)プレジデントや審査員チームの真摯な姿勢は、とてもリスペクトできるものでした。

サブカテゴリとの整合性を問う

各部門に設定されたサブカテゴリも、審査の大きなポイントとなりました。

たとえばメディア部門でグランプリを獲ったジョニーウォーカーの『KEEP THE FLAME ALIVE』(Leo Burnett Beirut/レバノン)は、サブカテゴリが「ベストユースオブソーシャルメディア&アーンドメディア」です。ソーシャルメディアはまだ評価のしかたが定まっていないジャンルでもあって、エントリーの中には「結果、これだけツイートされました!」みたいな作品も多い。でもそれは“ベスト ユース オブ”じゃないよねと。受賞作品は、ソーシャルメディアの“使い方”にアイデアがあり、アートワークがあって、結果大きな課題を解決したよねという評価を得たわけです。ブランドの仕事としてすごく完成されていてパワフルだと(笑)。

“力くらべ”に勝つために

全体を通して、日本の作品群はテクノロジーを使ったコミュニケーションの作り込みという点で抜きん出ている、という評価を多くの審査員から聞きました。一方で、本当にシンプルなアイデアで受賞している他国の作品も多かった。モバイル部門でグランプリを獲ったPedigreeの『Pedigree Found』(Colenso BBDO/ニュージーランド)は、バナー広告のエリア配信を迷い犬探しにうまく活用したもので、ブランドが飼い主にとっての大問題を解決するプロセスがとてもうまくストーリーテリングされていました。テクノロジーは手段であって、まさに問題を大きく設定する力の勝利と言えるでしょう。

ハードル(設問の難易度)を自ら上げて、それを解くことで力をつける。そうして「クリエイティブ・インテリジェンス」を鍛え、また来年(ADFEST 20周年!)、世界中の力自慢達と、いい勝負をしたいと思います。

中澤 壮吉 データドリブンメディアマーケティングセンター センター長代理

1995年博報堂入社。媒体、営業および統合コミュニケーションプラニング領域の経験を経て2015年より現職。DMP開発推進、データアナリティクス、メディアプラニング、デジタルマーケティング機能を統括し、メディアとマーケティングの統合~高度ソリューション化を推進している。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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