コラム
ダイレクトマーケティング
拡大する“次世代ダイレクト”全体設計 個別メディアで勝つ
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生活者の購買行動が多様化する今、ダイレクトマーケティングを取り巻く環境や、効果的な手法も変化している。ダイレクトマーケティングに長きにわたり携わる博報堂DYメディアパートナーズの岩間明敏氏は、「クライアントとメディアがビジネスパートナーとして向き合うことで、より成果を伸ばせる」と語る。

拡大する“次世代ダイレクト”

── 今回の特集は、通販系を含めて「読者に響くレスポンス広告」を探っています。その視点で、ビジネス環境の変化について教えてください。

かつてレスポンス広告といえば、通販系企業が新規顧客獲得のためにマスメディアや折り込みチラシなどへ出稿し、コールセンターへとつなげるものでした。それが今ではEC(イーコマース)が普及し、またテレビCMからアプリのダウンロードを促すという「テレビtoウェブコンテンツ」の手法も現れ、動線が多様化しています。

デジタル領域だけでなく、オフラインの反応も含めてデータ・ドリブンで顧客ターゲットの嗜好(しこう)や行動を事前に把握し、効率よく成果を上げようとする取り組みも広がっています。直接的な購買に加えてリードの獲得まで含めると、こういった“次世代ダイレクト”ともいえるビジネス領域は、非常に拡大していると思います。専門プレーヤーの種類と数も増え、当社でも、特にデジタル領域の対応が相当大きくなっています。

── 生活者がオンライン・オフラインを問わず自由に消費行動することを踏まえると、企業が考えるべき範囲も広がっていますか?

そうですね。複雑になっている生活者の消費行動に対応するのは、容易ではありません。アドテクノロジーが発展し、例えばプライベートDMPやCRMツールを使ってチャネル横断的に顧客IDを統合する動きもありますが、まだ過渡期だと思います。

統合するという目標は描けていても、実際に顧客IDの一元管理はなかなかハードルが高い。顧客名簿の管理・活用ひとつ挙げても、店販、電話申し込みを受けるコールセンター、ウェブの申し込みで取れた顧客IDすべてをつなげて管理し、それぞれの施策を連動させ、売り上げを最大化するためのコミュニケーション活動を展開する、というのは簡単ではありません。さらに個人情報保護の観点もあります。

ただ、ややこしくはなっているのは事実ですが、クライアントにとって顧客ターゲットとどう向き合い、どのメディアでどう伸ばすかを考えること自体は、以前とそれほど変わっていません。顧客をちゃんと見て分析すること、ターゲット、市場、需要、商品開発力、さらには店販商品との差別化など、企業や商品ごとに違う個別の要素を踏まえること。その上で顧客のいろんな動線を考えながらコミュニケーションの全体設計を描くことが、やはりカギとなっています。

新聞はLTV(顧客生涯価値)の高い顧客を見込める

── では、個別メディアでレスポンスを高めるには、どのような施策が有効でしょうか?

クライアントがメディアの特性を理解することも必要ですが、そのためにも、各メディアが自社メディアの強みを意識し、提案するべきだと思います。

例えば新聞ならテレビやウェブメディアに比べてどんな人に届いていて、効果が上がる得意技は何なのか。自分たちのメディアは、こういう人たちが見ていてこういうやり方だったら売れますよ、とか。クライアントは掲載メディアによって商品説明の仕方を絶妙に使い分けています。クライアントにとってレスポンス広告はお店であり、広告枠はお店の立地のようなもの。したがってクライアントはメディアで獲得できる顧客の生活観がそれぞれどのように違うか、把握しています。

一方メディアの先にいる生活者のことを最も理解しているのは、メディアの方々です。それにレスポンスを得るには、メディアの信頼性も大きくかかわります。立地ごとに顧客の好みや生活を知り、それに合わせてトライしてみようと提案をしていくことが大事です。それができれば、ビジネスパートナーとしてクライアントとWin-Winの関係を築けるのではないでしょうか。例えば、メディアのターゲット層に合わせた商品の新しい使い方を提案し、今までとは違う顧客を獲得して、市場を開拓した例もあるのです。

個別の広告展開におけるROI(投資対効果)も大事ですが、そこだけ見ていると結局顧客が増えないから事業拡大につながらないなんてことも起こります。レスポンス広告は出稿してすぐに結果が分かるのが利点なので、チューニングしながら成果を上げていく、つまり汗をかいて「売れる立地」を探すと同時に「立地に合った売り方を提案していく」ことが大事だと思います。

── 最後に、新聞広告の課題や期待をお教えください。

ダイレクト領域では、やはり新聞は強いと感じます。テレビ・ラジオといった電波系での獲得は比較的衝動型で、新しい商品とか潜在顧客を広げるときは強い。ただ、買わせる空気を作るのは得意だが、解約率(離脱率)も高い傾向にあります。一方、新聞はじっくり読んで考え、納得して購買を申し込むので、解約率が低く、継続して購入してくれる優良な顧客を獲得できる。LTV(顧客生涯価値)をしっかり見ている企業は、新聞を重視するという印象があります。

きめ細かく対応するには、クライアントとメディアがビジネスパートナーとして一緒に工夫することが必要ですし、私たちもその間に入るプロとしてレスポンスの向上にこだわり、可能性を追求し続けたいと思っています。

※「ウェブ広告朝日」より転載
(A15-1395/朝日新聞社に無断で転載することを禁じます)

岩間 明敏 ダイレクトマーケティングビジネスセンター ダイレクトビジネスプロデュース2部 部長

1993年博報堂入社、ラジオ局配属。2000年頃よりダイレクトクライアントを積極的に開発。2003年博報堂DYメディアパートナーズへ。ラジオ局にてダイレクト専門チーム設立。2007年ダイレクトマーケティング推進局設立と共に異動。オール媒体でのダイレクトクライアント対応に従事。2010年i-メディア局ダイレクトチームを立ち上げ、2012年より現職。15年近くダイレクトクライアントのレスポンスデータ分析に基づくメディア×クリエーティブの最適化業務に従事。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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