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テレビCMの効果を可視化する画期的サービス ──Gunosyと博報堂DYグループの協業から生まれた「Guhack」
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テレビCMの効果を可視化する画期的サービス ──Gunosyと博報堂DYグループの協業から生まれた「Guhack」

情報キュレーションアプリを運営するGunosyと博報堂DYグループの協業プロジェクトがスタートしたのは2019年末でした。その協業の第一弾としてリリースされたのが、テレビCMの広告効果を「視聴者のレスポンス」によって測定するサービス「Guhack」です。このサービスのコンセプトと可能性について、両社のキーパーソンに語ってもらいました。

CM出稿データとレスポンスデータを掛け合わせる

──Gunosyと博報堂DYグループのパートナーシップがスタートしたのはいつ頃からですか。

竹谷:
もともとのおつきあいが始まったのは、2015年くらいですね。Gunosyは広告を受注する媒体社であり、テレビにCMを出稿する広告主でもあります。その2つの立場で博報堂DYグループとおつきあいをさせていただいていました。その中で、「協業という形で何か新しい取り組みができないか」という話題が出たのが去年(2019年)のことでした。

糸永:
博報堂DYグループがもつ広告マーケティング事業のノウハウ。Gunosyの媒体社と広告主としての経験。さらに、Gunosyのテクノロジー力。それらの要素を掛け合わせることによって、新しい価値を生み出せるのではないかというアイデアが発端でした。念頭にあったのは、デジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れていると言われているテレビなどのマス広告の領域です。二社の協業によって、テレビCM市場のDXを進めることができるかもしれないと考えました。

──そうして最初に生まれたサービスが「Guhack」というわけですね。その概要をお聞かせください。

渡辺:
視聴率や時間帯といったテレビCMの出稿データと、CMを見た視聴者のレスポンスデータ。その2つを組み合わせて、CM効果を可視化するのがGuhackです。レスポンスデータは、例えばアプリならダウンロード数、ウェブサイトなら流入数、コールセンターなら入電数ということになります。

松浦:
テレビCM出稿のKGIが売り上げだとすると、アプリのダウンロード数やウェブサイトへの流入数は中間KPIです。その中間KPIの達成を広告効果と考える手法です。

──従来、テレビCMの効果を測る指標はリーチや認知率だったわけですよね。

竹谷:
ええ。それ以外の数値を可視化するのは難しいと言われていました。しかし、アプリやウェブサイトを展開している事業者なら、テレビCMに対する視聴者の反応を数値として把握することは決して難しくはありません。実際、僕たちは社内で活用するための測定ツールを開発し、意思決定に使ってきました。いわゆる獲得系、あるいはレスポンス系と呼ばれる商材であれば、CM効果はかなりの確度で可視化できる。それが僕たちの実感でした。

渡辺:
その測定ツールを使わせてほしいというニーズが、Gunosyのクライアントからも多数寄せられていました。ニーズがあって、ソリューションもほぼできている。ならば、それを外部に提供できる形につくりこめばいいと考えました。

──社内用のソリューションをGuhackというサービスにするに当たって、とくに難しかったのはどのような点でしたか。

渡辺:
異なる種類のデータの紐づけですね。出稿データにしても、レスポンスデータにしても、標準的な共通フォーマットがあるわけではありません。それらの雑多なデータを結びつける技術が一番のハードルでした。もっとも、サービスの仕組み自体はとてもシンプルなので、開発にそれほど長い時間はかかりませんでした。

テレビCMの「無駄」をなくすソリューション

──Guhackはどのようなクライアントに活用いただけるのでしょうか。

竹谷:
CMを流した後に、短期的なスパンで視聴者の反応や態度変容を確認したい。そのようなニーズがあるクライアントには広くご活用いただけます。

糸永:
スピーディに反応を見たいというニーズに合致するソリューションですよね。逆に、長期的に生活者の態度変容を期待するコミュニケーションには、あまり向かないかもしれません。

松浦:
それから、中間KPIを設定しにくいというケースも難しいですね。中間KPIを数値として把握することが可能なら、商材を問わずお使いいただけると思います。

──Guhackの具体的な活用のイメージについてもお聞かせいただけますか。

竹谷:
例えば、キャンペーンの期間中に4種類のCMを流して、どれが一番効果的かを短期間で把握する。そんな使い方が考えられます。

糸永:
Guhackを使えば、キャンペーンの途中で高速でPDCAを回して、より効果的なクリエイティブに差し替えていくことが可能です。

松浦:
Guhackによって、メディアバイイングの方法も改革できると僕は考えています。例えば、従来のキャンペーン期間を前半と後半に分けて、前半のCM効果を分析し、それをもとに後半の出稿時間帯や出稿先の放送局を変えていくといった方法です。

竹谷:
これまでテレビCMを出稿してきた経験から、必要のない出稿も多いのではという実感があります。Guhackを使うことによって、その無駄を可視化し、出稿の配分を変えることができます。より商材との相性のいい枠、時間帯、あるいは局を選ぶことで、CM出稿を最適化し、広告効果を最大化できるツールがGuhackと言っていいと思います。

松浦:
本来、クライアントごとに、あるいは商材ごとに「プライム枠」の定義は異なるはずですよね。最も効果的なのは深夜の枠なのか、平日昼間なのか、それともいわゆるゴールデンタイムなのか。それはクライアントや商材によってまちまちです。その独自のプライム枠の設定のためにGuhackを使っていただくのはとても有効だと思います。

渡辺:
Guhackは別のサービスとの組み合わせも可能です。例えばGunosyには、CM効果を出稿前に調査する「Gunosyリサーチ」というサービスがあります。それを活用し、キャンペーン展開の初期の誤差を最小化し、さらにキャンペーン期間中の改善をGuhackを用いて行う。そんな展開も考えられます。

糸永:
事前にリサーチをし、キャンペーン中に効果測定を行い、さらにキャンペーンが終了した後にキャンペーン全体の評価をする。そうやってテレビCMの価値を継続的に高めていくことができるのがこの協業の強みだと思います。

「優れたCM」の基準が明確になる

──Guhackを活用することによるクライアント、広告会社、放送局それぞれのメリットとはどのようなものですか。

糸永:
クライアントにとっては、ここまで述べてきたように、テレビCM出稿の最適化が実現することが最大のメリットですが、加えて情報共有が非常にスムーズになるというメリットもあります。社内のさまざまな部署の方々がGuhackのダッシュボードで同じ数値を見て、議論をすることができる。さらに、広告会社側の営業、クリエイティブ、メディア担当といったスタッフもダッシュボードで情報を共有できる。これはこれまでにない仕組みです。レポーティングまでのタイムロスが発生しない点で一種のDXとも言えるし、すべてのステークホルダーがどこからでもリアルタイムでデータを確認できるという点では、ウィズコロナ時代にふさわしい仕組みとも言えます。

竹谷:
これまで曖昧だった部分が明確になるというのも大きなメリットですよね。Guhackを使えば、CMクリエイティブの良し悪しを「面白い」とか「話題になっている」という曖昧な基準ではなく、「視聴者のレスポンス」というはっきりした数値によって判断することが可能になります。それによって、ディスカッションの質が向上し、次の打ち手の選択もしやすくなります。広告出稿は企業にとって非常に大きな投資ですから、曖昧な部分はできるだけなくしていかなければなりません。

松浦:
一方の広告会社のメリットとして挙げられるのは、プランニングが合理的になること、クライアントのKPIに寄り添い、その達成を目指すことができることなどです。また、いわゆるナショナルクライアントだけでなく、スタートアップ系の企業にアプローチしていく武器にもなりそうです。

糸永:
広告展開の提案のクオリティが上がるのも、広告会社のメリットですよね。それから業務全体のフローの効率化が測れる点は、クライアント、広告会社双方にとってのメリットと言えると思います。

松浦:
放送局にとってのメリットとしては、これまで取り引きがあまりなかったデジタル系クライアントの出稿が見込めること、CM枠の販売方法が多様化することなどが挙げられそうです。Guhackによって、テレビCMの付加価値は高まると言えるのではないでしょうか。

──リリース(2020年の6月末)後の反響はいかがでしたか。

竹谷:
反響は非常に大きかったですね。多くのクライアントが共通する課題を抱えていたことがあらためてわかりました。

糸永:
実際に導入していただいているケースも増えてきています。成功事例が出てくれば、さらに多くのクライアントに興味をもっていただけるのではないかと考えています。

DXによって広告コミュニケーションを進化させる

──Gunosyにとって、博報堂DYグループとパートナーシップを結ぶことの意味とはどのようなものでしょうか。

竹谷:
博報堂DYグループは、テレビCM関連のビジネスに長く携わってきて、クライアントやさまざまなプレーヤーとの広範なネットワークをおもちです。これは僕たちにはない大きな価値であると考えています。

渡辺:
テレビ広告の取引の中で、何がデジタル化していて、何がされていないのか。それが僕たちからはなかなか把握することができません。その知見のある博報堂DYグループの皆さんと協業することによって、テレビ広告のDXの道筋を具体的に考えることができる。その意味は非常に大きいと思います。

竹谷:
博報堂DYグループの皆さんとおつきあいをしていると、「変わらなければならない」という意識が隅々まで浸透していることをいつも感じます。新しいことに挑戦し、新しいことを受け入れようとする姿勢。そこから学ばせていただくこともとても多いですね。

糸永:
僕たちの側から見れば、Gunosyのテクノロジー力と、データサイエンティストなどのデジタル人材の層の厚さは非常に魅力的です。博報堂DYグループのような大手広告会社が、社会全体のDXが進んでいくこの時代に成長を目指していくには、Gunosyのような新しい企業との協業は欠かせません。

──最後に、今後の展望をお聞かせください。

糸永:
まずはGuhackのサービスを向上させていくことに注力したいと考えていますが、中長期的に見れば、ほかにもさまざまな可能性があると思います。DXやアドテクノロジーの領域におけるあらゆる可能性を探っていきたいですね。

渡辺:
一方にデジタル技術があり、一方にデジタル化やオートメーション化が遅れている分野がある。その間を結びつける作業に博報堂DYグループの皆さんとともに積極的に取り組んでいきたいと思います。

竹谷:
新型コロナウイルスの影響で、無駄なコストを省こうという動きが加速しています。何が無駄で、何が無駄でないのか。それを知るための手段がDXです。広告マーケットにはDXが進んでいない領域がまだまだたくさんあります。そのすべてが、この協業のターゲットであると考えています。

松浦:
可視化できるデータを拡充していくことは、広告マーケット全体の生産性を上げることにつながるし、コミュニケーションの質の向上につながると思っています。DXによって広告コミュニケーションを進化させる取り組みをこれからも続けていきたいですね。

■プロフィール

竹谷 祐哉
株式会社Gunosy 代表取締役社長
早稲田大学創造理工学部経営システム工学科卒業。グリー株式会社を経て株式会社Gunosyに参画。2013年8月取締役最高執行責任者、2016年8月代表取締役最高執行責任者、2018年8月より代表取締役最高経営責任者、2020年6月より代表取締役社長に就任。

渡辺 謙太

渡辺 謙太
株式会社Gunosy 新規事業開発室部長
東京大学工学部卒。2016年株式会社Gunosyに新卒として入社。新規事業開発に従事。2018年9月より執行役員メディア事業本部、「LUCRA(ルクラ)」事業担当を経て、2019年2月より新規事業開発室部長。現在は「Guhack」の開発事業を担当。

松浦 伸二

松浦 伸二
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
データビジネス開発局ソリューション業務推進部 部長
東京工業大学工学部卒業。2000年博報堂入社後、テレビ番組担当やメディアプランニング、TVerやAbemaTVなどの動画広告セールスなど入社からメディア領域を担当。現在はデータ戦略立案やそのマネタイズに従事。

糸永 洋三

糸永 洋三
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
メディアビジネス基盤開発局マーケットプレイス開発部 部長
慶應義塾大学商学部卒業。2000年博報堂入社後、営業として自動車、家電などの広告キャンペーンプロデュースを担当。その後、インターネットメディア・プラットフォーム担当、社内ベンチャー起業からデジタル系子会社の設立、運営などを経て現在はグループ内のDX戦略推進に従事。

 

★本記事は博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました

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