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「5G」をちゃんと知ろう!~Gの歴史と5Gのポテンシャル~【前編】
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日本でも総務省が「5G」電波の割り当てを発表し、国内4社が2020年内に商用通信サービスを開始する見通しになったというニュースが流れ、ここに来てにわかに慌ただしくなってきました。ところで、みな一様に「5G、5G」と言っていますが、ちゃんと理解していますでしょうか。そこで、「5G」について基本から展望まで、博報堂DYメディアパートナーズ ナレッジイノベーション局 縄谷かおるが、クリエイティブ&テクノロジー局の森永真弓に聞きました。

「G」の歴史

縄谷:まず初めに基本的な質問ですが、「5G」のGって何ですか。

森永:GはGeneration(世代)の頭文字で、移動体通信システムの世代のことです。ちなみに世代が切り替わると、通信インフラと端末の両方がそっくり新しくなります。

縄谷:ということは、今「5G」と言われているものは1Gから始まった……ということでしょうか。

森永:その通りです。では簡単に各世代(G)の特長と変化を説明しましょう。
発祥は1968年に始まって1978年からデジタル化した「無線呼び出し」で、代表的な機器のポケットベル(ポケベル)は1990年代に女子高生を象徴するアイテムとしてドラマや漫画に頻繁に使われていたことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。

◆1979年にアナログの1Gに。1993年にデジタルの2Gへ

森永:その後、1G(第一次世代)と呼ばれるアナログの通信方式が始まる1979年、日本で世界初の自動車電話サービスが開始された年です。平野ノラが「しもしも~?」というネタで使っているショルダーホンは1985年に、初めて「携帯電話」と称されたアナログ式のものは1987年に登場しています。

1993年からの2Gへの変化は、利用者が増えたことによって帯域が逼迫、つまり「電波がめちゃくちゃ混んできた」ため、電波の利用効率を向上させる必要が生じたことによる通信方式の転換です。この時アナログからデジタルという大きな変化になりました。
デジタル化によってデータ通信サービスの提供が可能になり、携帯データ通信の利用が本格化したことで、メールやWEBの利用が一気に広がっていったのです。

携帯のデータ通信が日常的に利用できるようになると次に高速化が求められるようになり、それに応える技術開発が進められました。2Gから3Gは電波利用技術方式の革新です。

ちょっと専門的な話になりますが、2Gでは電波の利用効率の上げ方は「時間分割多元接続(Time Division Multiple Access)/TDMA」という技術が採用されていました。「時間分割」という名の通り、1つの帯域を時間で分割して分けあえるようにすることで、複数人での利用を可能にします。例えば4人で共用していたとしたら、自分が通信できているのは通話時間の1/4で、残りの3/4は他の3人が通話していました。2G時代「通話中ブツブツいって音質が悪い」と言っていたのは、まさに「時間分割多元接続/TDMA」が理由だったのです。もうひとつ、基地局の切り換え方にはハードハンドオーバー方式と呼ばれる技術を採用していました。こちらは基地局と基地局の間を移動している時に徐々に切り替え……ではなく「パツッと一気に切り替え」という仕組みで、移動中は切れやすいという難点がありました。

◆2001年、3Gが登場。2012年の4Gからスマホ時代へ

森永:そして2001年に登場した3Gは、電波効率の上げ方に「符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)/CDMA」という技術が採用されたことにより、擬似的に帯域を専有できるので「2Gと比べて圧倒的に音がいい」と言われました。基地局の切り替え方も、ソフトハンドオーバー方式になり、移動中に基地局と基地局を緩やかに切り替えていくので通話が切れにくくなりました。

2012年から始まった4Gですが、1G→2G、2G→3Gで行われた技術転換から比べると、3Gから4Gへの進化は劇的な通信方式転というほどでもなく、それゆえに一般的な解説でも写メール時代からスマホ時代へ……程度にとどまっていると言えるでしょう。敢えて言うなら、大容量・高速通信レベルが向上したぐらい……ということでしょうか。とはいえそれだけでもとてつもなく凄いことではあるのですが。

こうして移動体通信に対する欲望は、もっと快適に、もっと安定的に、もっと大容量に、もっと早く、と募っていったのですが、通信が世の中に与える影響が大きくなればなるほど、人々の通信に対する欲望は広がっていきます。
例えば自動運転。遠隔制御可能な自動運転を実現しようとした時に、今の移動体通信の環境では、「止まってほしい!」と遠隔地から指示を送信し車側がその指示を受信して動作を完了させるまで1秒程度のタイムラグが発生する可能性があります。1秒って短いようでいて結構長くて、60km/hで走行していたら軽く10m以上進んでしまうんですよ。確実に事故が起きますよね……それでは困ります。

そういった要因で、現在の規格4Gの限界を感じ、対応可能な次世代の方式5Gが渇望されるようになったのです。

◆5Gは“努力目標”ではなく“必達目標”

縄谷:いよいよ第五世代移動通信システム「5G」が登場するわけですね。

森永:そうなんです!とドヤ顔したいところですが、ここでひとつ押さえておいて欲しいことがあります。

3G・4Gと比べて5Gは“努力目標”ではなく“必達目標”であることが、世の中の動きとして大きな違いだということです。ですから変化の速度がこれまでより早くなったり、5Gへの切り替えを強制される可能性が大いに考えられます。

縄谷:それはどういうことなのでしょう。

森永:ひとことで言うと通信に求められるものが「コミュニケーション領域から社会的領域へ」に変わったということです。
4G時代はコミュニケーションをリッチにするための技術進化でしたが、5G時代は「より豊かで便利な暮らし」「産業高度化&競争力強化/働き方改革」「高齢化対策&健康寿命」などの社会的課題を解決するために必須なものになります。

通信にかかわる産業からみても、5G時代はその分野が拡大します。
4G時代はスマートフォンを介した情報サービス産業でしたが、5G時代には自動車分野・産業機器分野・ホームセキュリティー分野などの領域に拡がるのです。

「5Gは“努力目標”ではなく“必達目標”である」に関連するのですが、5Gが引き起こす変化の本質は、広告会社の業務の主軸であるコミュニケーション領域の外で、より多く起きていくものなのです。

2015年9月の国連サミットで193の加盟国が採択した「Sustainable Development Goals(SDGs)/持続可能な開発目標」の17の目標を2030年までに達成させるためにも、また2013年5月にマッキンゼーが発表したレポートで紹介された「2025年までに世界を変える破壊的技術」の12の技術のうち半分の6つが高度化した無線通信(5G)の実現が前提とされていることからも、理解できると思います。

◆ITUが定めた「eMBB」「URLLC」「mMTC」という3つの条件

森永:5Gには4Gと異なり、明確な実現目標に向かって国際電気通信連合(ITU)の無線通信部門が要件として定めた「eMBB」「URLLC」「mMTC」という3つの条件があります……が、英語の略語の羅列では意味がわからないですよね。

縄谷:さっぱりわかりません……。(苦笑)

森永:ですよね(笑)、自分でも言っていてなんだかなぁと……。

「eMBB」とは、Enhanced Mobile Broadband/拡張モバイルブロードバンド、超高速大容量のことで、通信速度が4Gの100倍・通信容量は4Gの1000倍になります。
よく言われている「2時間の映画を3秒でダウンロード」というものです。ここはまあ想像つきますよね。

「URLLC」とは、Ultra-Reliable And Low Latency Communications、超高信頼低遅延通信のことで、通信成功率が99.9%から99.999%に上がり遅延レベルが0.5-1ミリ秒になります。これは先ほど4Gのところで示した時速60km/hで走行中の車に停止指示を送信した場合1秒程度のタイムラグによって約16.7m進行してしまうのが、約1.7cmの進行に収まるレベルになります。自動運転や遠隔医療には、とても重要な条件になります。

「mMTC」とは、Massive Machine Type Communication/大規模マシンタイプ通信、超大量端末同時接続のことで、1k㎡内で100万台の端末の同時接続が実現できます。よく、フェスやお祭り、スポーツ大会などの大規模イベントのような人がたくさん集まるところでは電波が繋がりにくくなりますよね? そういった不具合が解決されるのはもちろん、その接続可能な機器数がどんでもない量になることで、人が持っている端末だけでなく様々なところに設置されたありとあらゆる機械までもが通信を同時にできるようになるんです。
例えば駅にいるとしたら、電光掲示板・広告ディスプレイ・監視カメラ・人の動向を把握するセンサー・キオスクの決済端末・在庫管理端末・自動販売機・ベンチ・ホームドア・遠隔にある管理システム……などなどが通信し合い、データを取得したり、機械を制御したりする状況になります。

そして重要なのは何よりも、これら3条件を低電力かつ安価に実現すること……です。

後編に続きます。

■プロフィール

森永 真弓
博報堂DYメディアパートナーズ
クリエイティブ&テクノロジー局
通信会社を経て博報堂に入社し現在に至る。 コンテンツやコミュニケーションの名脇役としてのデジタル活用を構想構築する裏方請負人。 テクノロジー、ネットヘビーユーザー、オタク文化研究などをテーマにしたメディア出演や執筆活動も行っている。自称「なけなしの精神力でコミュ障を打開する引きこもらない方のオタク」。 WOMマーケティング協議会理事。共著に「グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか」(マガジンハウス)がある。

 

縄谷かおる
博報堂DYメディアパートナーズ
ナレッジイノベーション局
1981年 博報堂入社。人事、営業管理・新聞管理の事務職を経て営業職に。営業時代は主に福岡のクライアントを担当し、飛行機に乗り込むと同時に爆睡し着陸20分前に目覚めることを習得。その後、雑誌局に異動しラグジュアリーブランド、自動車、金融など多くのクライアントと媒体社を担当。雑誌局時代には、無理難題を話術で乗り切る交渉術とタイアップ業務を通して速攻で誤字脱字・誤植を発見する校正力を会得。
2015年 新組織発足に伴い現部署に異動。博報堂DYグループ向けのメルマガ「MP18マガジン」の二代目編集長。

 

★本記事は博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました

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