コラム
株式会社TOKIOとの共創でも話題。丸亀製麺のパーパスドリブンなマーケティング戦略とは
【アドテック東京2021レポート】
COLUMNS

「パーパスドリブン」や「共創」という言葉が注目される昨今。そのキーワードを実践し、売上という結果を生み出し続ける丸亀製麺は、どのようなマーケティング戦略を仕掛けているのか。共創パートナーである株式会社TOKIOとの取り組みについても、国分太一さんをゲストに招いて語り合いました。

本稿では11月1日、2日に開催されたアドテック東京2021のセッション「好調な丸亀製麺のビジネスを支える新マーケティング戦略 共創型パーパスドリブンとは?」の模様をお届けします。

南雲克明氏
株式会社丸亀製麺 執行役員 CMO

ゲスト
国分太一氏
株式会社TOKIO 副社長

モデレーター
嶋田三四郎
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ クリエイティブ&テクノロジー局 局長

パーパスドリブンとは、“我々らしさ”を伝えることで売上を上げること

嶋田
昨今、マーケットの世界では「パーパス」や「共創」について語られることが多い一方、ちょっと概念的で抽象的だな、と思われる方も多いのではないでしょうか。今日はそのキーワードを常に実践している丸亀製麺流の新しいマーケティング戦略についてお話ししていこうと思います。
早速核心に近いことを聞いてしまいますが、パーパスドリブンと売上は直結するの?というのがみなさん気になっていることだと思います。いかがでしょうか?

南雲
マーケティングである以上、売上を上げなくてはいけないという使命を抱えているわけですが、パーパスドリブンというのは、簡単にいうと我々らしさをわかりやすく世の中に発信することで、売上を上げるということにつながっていないといけないと思っています。丸亀製麺は、今年4月以降の売上高も非常に好調に推移しています。

嶋田
パーパスを起点にした活動が、数字にもしっかり表れているということですね。我々広告会社としても、CMをつくろう、キャンペーンを打とうということが目的ではなく、“想い”を前提にしながらビジネスの部分までご一緒させていただいているのが大切だと感じています。この好調の原因となっているパーパスの活動が具体的にどういうものなのか、また本格的にパーパスの活動をはじめたきっかけついて教えてください。

南雲
ご存知の通り、昨年からのコロナ禍で外食産業は苦しいときを過ごしています、この変化にどう対応するか考えたとき、創業当時からの想い、パーパスの起点に立ち戻ろうということになりました。我々のパーパスは、食体験を通じて感動をご提供すること。これを起点に、昨年からさまざまな活動をしています。
キッチンカーを使って医療従事者のみなさまにあたたかいうどんを届けに行ったり、お子さまにうどん教室を体験していただいたり。店舗でお客さまの笑顔に会えることが少なくなっていたので、それなら我々から届けにいこうということではじめた取り組みです。

想いが同じパートナーとつくる“共創ワーキングチーム”

嶋田
共創というキーワードでは、第一弾が「食いっプリ!グランプリ!」でしたね。うどんを食べるみなさんの姿こそが元気の源、ということで、写真を募集して、最終的にテレビCMをつくるプロジェクトでした。これは世の中のみなさまとの共創でしたが、共創を推進していくうえで大事にしていることはなんでしょう?

南雲
大切にしているのは、想いが同じパートナーのみなさまとご一緒させていただくこと。エージェンシーやテレビ局など、我々の想いに賛同いただいた各領域のスペシャリストと“共創ワーキングチーム”をつくって活動させていただいています。

嶋田
この“共創ワーキングチーム”は、我々エージェンシーから見ると共演NGなんじゃないかと思うようなメンバーもいるくらいなんですが(笑)、だからこそ“想い”をともにすることが大切なんだと感じます。垣根をこえてプロフェッショナルのスキルが融合するだけでなく、全員で議論することで視点が広くなり、さらに全体を俯瞰することでラピッドに実行される。想いをひとつにすることで、結果的にどうやってお客さまを笑顔にするかということに全員で向き合えた気がします。

南雲
とにかくみなさんには、余計な気を遣わないでくれ、気を遣うくらいならお客さまにとっていいことを考えてくれという話はしましたね。知恵と知恵をぶつけることで今までにない価値を生み出すぞ、という意気込みてやっていただいています。それがうまく数字にも反映できているのではないでしょうか。

嶋田
エージェンシーの立場になると、どうしても広告主の方を向きがちになってしまうんですが、そうではなくて、全員が世の中を向いていこうというのがパーパスであり、結果的に数字につながっていくということなんですね。そうやって想いを同じくする仲間が増えていくなかで、ここでもうひと方、スペシャルゲストをお招きしたいと思います。株式会社TOKIO副社長の国分太一さんです。

株式会社TOKIOが掲げた「Do it ourselves」は、まさしく“共創”だった

国分
株式会社TOKIO副社長の国分太一です。よろしくお願いします。

嶋田
すごく大きいリュックを背負ってますね。

国分
はい、会社を立ち上げたら資料がいっぱいで、こんなパンパンに(笑)。

嶋田
今日は株式会社TOKIOの副社長として来ていただいていますが、そもそも株式会社TOKIOというのはどんなことを目指している会社なんでしょう?

国分
グループを長くやっているといろいろな変化があるなかで、変化のときをどう楽しむかを考えたときに、会社を立ち上げるのがいいんじゃないかと3人で話し合って決めました。自分たちが得意としていることはなにかといえば、「汗をかいて。手を働かせて。想いを重ねて。」ということ。これを会社の理念として、僕たちの活動に共感してくれる方と一緒になにかできればと思い「Do it ourselves」という言葉を掲げて会社を立ち上げました。そうしたら、世の中には「共創」という言葉が飛び交っていることをはじめて知って。もしかしたら時代にあっているのかな、と。

嶋田
実はマーケティングの世界では「共創」と呼ばれていたんですね。丸亀製麺さんとしては、なぜ株式会社TOKIOにお声がけしようと?

南雲
我々のパーパスは、食体験を通じて感動をご提供すること。そのためには、今までと同じようなタレントさんとの契約ではなく、一緒の想いでものをつくったり、笑顔を広めていきたいと考えました。それはTOKIOのみなさんにしかできないと思い、声をかけさせていただきました。

嶋田
はじめてお話をしてから1カ月後くらいにはもう共同の記者発表をしていましたもんね。

国分
とにかくテンポが早い、丸亀さんは。

南雲
早さだけには自信があります(笑)。

メニューも小道具もキャラクターも。国分太一の視点だからできたこと

嶋田
実際の活動の第一弾は国分さんをリーダーにした「こどもうどん弁当」でしたが、開発の中でどんな気づきがありましたか?

国分
そもそも“こども”ってどの範囲なの?ひらがなだから小さいこども?小学校6年生くらいまで?というところから本当に悩みましたし、みなさんに喜んでもらえるものをつくることのむずかしさを実感しました。

嶋田
こどもの定義から考えましたもんね。国分さんからは親御さんのことも考えたメニュー開発という着眼点がありましたが、中身についてのこだわりはどうですか?

国分
子供の笑顔を喜ぶのは親御さんだよな、と考えたとき、栄養バランスにもこだわってつくれたらいいなと思いました。

南雲
我々だけの視点だと、お子さまが好きなものを入れて喜ばせようということになりがちなんですが、そこに親御さんの目線を入れてくれたことが新しかったです。

嶋田
僕としても驚くことがあったのが、このCMをつくるとき、コンテを見た国分さんが「この小道具、僕らがつくっていいですか?」とおっしゃって。

国分
CMのコンテを拝見したとき、少しだけテーブルがうつっているのが見えて、こういうところで僕らは活躍できるんじゃないかなと。CMではテーブルをつくっていることは一切表に出てこないんですが、メイキング映像をつくることでCM発表の時に情報番組の尺を伸ばすことができるんじゃないかなと考えまして(笑)。自分も情報番組をやっていたのでわかるんですが、メイキング素材が豊かなものほど長く扱われることが多いんですね。それってすごい大切なんだなと思いまして(笑)。

嶋田
CMの出演者に小道具までつくっていただくのははじめての経験でしたし、まさか尺が長くなるというマーケティングの視点まで出してもらえるとは(笑)。TOKIOのみなさんでつくったテーブルと椅子がこちらなんですが、国分さんはキャラクターまでつくってくれたんですよね。

国分
こどもうどん弁当に携わって、商品開発のむずかしさを実感しました。だからこそ自分にできることはなにかな、と考えて。丸亀さんにはキャラクターがいないということだったので、勝手に書いて、勝手に出して。まぁ笑ってもらえればいいかなくらいに思っていたんですけど、結果形になったので、本当によかったなと思っています。

南雲
キャラクター自体がかわいいのももちろんなんですが、なにに驚いたかといえば、我々からお願いしたわけではないのに、こうしたほうがお客さんが喜ぶんじゃないかというアイデアをどんどん出してくれること。これこそが共創だなと。

嶋田
実際こどもうどん弁当の反響は?

南雲
これまでは男性のお客さまからの支持が多かったんですが、相対的に少なかったお母さん層に「こどもに食べさせたい」と言っていただけるようになりました。売上も好調に推移しています。

嶋田
こどもうどん弁当の次には松岡さん監修のトマたまカレーうどんが発売されましたし、秋からは城島さんのキッチンカープロジェクトがスタートするわけですね。

南雲
ほんとうに心強いですよね。小さいところからはじまったキッチンカーの取り組みが、TOKIOさんと組ませていただくことでこれから日本中に届けることができると思うと本当にワクワクします。

国分
今回こういう形で共創させていただいていますが、うどん一杯つくるためにも昆布だったり粉だったりいろんな生産者さんとの共創でできているんだな、と改めて思いました。僕もまだまだやりたいことがたくさんあって、実はこのリュックのなかに次の構想がたくさん詰まってるんです。このあと南雲さんにプレゼンさせてもらいたくて(笑)。

南雲
ありがとうございます。ぜひ聞かせてください!

嶋田
これからも「うどんで日本を元気に」というアクションが続いていきますが、さいごに南雲さん、丸亀製麺のパーパスを起点にしたマーケティングロジックについてまとめをお願いします。

パーパスドリブン×データドリブンで売上に貢献する

南雲
今回のTOKIOさんとの取り組みでは、想いが一緒のパートナーと“好き”をつくって“好き”を育てるといういいループができていると思います。
我々マーケターは、常に右脳と左脳の両方に働きかけなくてはいけません。頭で理解していただく左脳に訴えかけるコミュニケーションと、「なんかいいよね」という直感的な右脳への訴えの両方を、消費者のインサイトを考えながらやっていく。その裏側では、データドリブンをまわして数字でしっかり説明できるようにすることも大切です。
テレビCMやPR、デジタル、SNSといった情報の総量と、認知や高感度といった数字をしっかりトラッキングして、なにが売上に貢献しているのか、どこがうまくいっていないのかを分析し、客数を向上させるロジックを積んでいくことが重要だと考えています。

嶋田
パーパスドリブンでありながら、裏にはしっかりとした数字の裏付けがあるというのが丸亀製麺のマーケティングロジックということですね。さいごにひとこと、マーケターのみなさんにメッセージをお願いできますか?

南雲
今はこれまでのセオリーが通用しない時代。でも、マーケターの力で世の中をもっと良くすることはできると信じています。我々マーケターの知を集結して、日本をもっと元気にするような共創をやっていきましょう。

南雲克明氏
株式会社丸亀製麺 執行役員 CMO
早稲田大学大学院商学研究科卒MBA。コナミスポーツ、サザビーリーグなど実店舗を持つB2Cの事業会社においてマーケティング責任者を歴任。ブランディングと統合コミュニケーションの実践による業績拡大を幅広く経験。2018年8月よりトリドールホールディングス・マーケティング部長。2021年7月1日より現職。
消費者理解と脳科学に基づく「ブランド戦略」、独自のメソッドでデータを使い勝率を上げる「データドリブンマーケティング」、DX for CXの思想で取り組む「CX戦略」を軸に、丸亀製麺のブランド戦略とコミュニケーション戦略の革新に取り組む。

ゲスト
国分太一氏
株式会社TOKIO 副社長
1974年9月2日生まれ
東京都出身 O型

モデレーター
嶋田三四郎
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ クリエイティブ&テクノロジー局 局長
1995年博報堂入社。
ラジオ担当として数々の番組をプロデュースした後、音楽著作権管理事業会社へ出向。
ライツクリアランス・音楽コンサルティング・アーティスト開発等を経て、博報堂DYメディアパートナーズにて、エンターテインメントビジネス全般を担当。
現在は、メディア・コンテンツの特性を活かしたクリエイティビティを軸に、統合的コミュニケーションプロデュース・メディアコンテンツプロデュースを手掛ける。

 

 

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