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挫折を乗り越えて手に入れた、自分のためのレスリング―― 2020年に向けて、社会人選手として、いま新たなスタートラインに立つ<宮原優/博報堂DYスポーツ>
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博報堂DYグループ、博報堂DYスポーツマーケティングで現役社員でもあるレスリング女子フリースタイル53kg級の宮原優選手。2017年6月の明治杯全日本選抜選手権では2位、7月の全日本社会人選手権では優勝、国際大会では、11月のデーブ・シュルツ記念国際大会で優勝、という成績を収め、2020年の東京オリンピックを見据え着々とトレーニングを続けています。レスリングへの向き合い方や、博報堂DYグループの一員として競技活動を行うことへの想いなどについてうかがいました。

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■得意の変化球に加え、王道を極めることで強くなれる

レスリングを始めたのは7歳のときです。幼稚園にいたころから、学生時代にレスリングの選手だった父に連れられて近所のレスリング教室に通ってはいたのですが、私が7歳になったころ、父が自宅に道場をつくることになって。そこから、本格的に監督として父からレスリングを指導してもらうようになりました。最初はなんとなく続けていただけだったように思いますが、小学校4年生のとき全国大会で優勝したのをきっかけに、「勝ちたい」という強い気持ちが芽生えたように思います。勝てば勝つほどレスリングを楽しく感じ、どんどん好きになっていきました。中1のときにJOCエリートアカデミーに入学、それから高校、大学でも、日常の一部としてずっとレスリング一本で励んできました。意外に思われるかもしれませんが、レスリング以外何もできないくらいの運動音痴なので、ほかのスポーツには見向きもせずにここまで来ています(笑)。

選手としての自分の強みは、意外性のあるプレースタイルかもしれません。次にどんな技を仕掛けるのか、観戦していてもなかなか予測がつかず、それが「見ていて楽しい」と言われることが多いです。得意技は片足タックル。数年前に外国人コーチから教えてもらった技を、自分なりにいろいろと研究、アレンジして進化させています。一方で、現在師事している佐藤満コーチ(専修大学レスリング部/ソウル五輪フリースタイル52kg級金メダリスト)にいつも言われるのは、「王道をしっかりやれ」ということ。以前はカウンターで攻めるのも得意でよくやっていたんですが、いまやると怒られますね(笑)。基本をしっかり押さえつつ、そのうえで変化球も得意になれば、より一層強くなれるだろうと自分でも感じています。

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■ロシア語も大事な武器!?

片足タックルの技を教えてくれた外国人コーチは、日本のナショナルトレーニングセンターで開かれた海外の指導者が集まるコーチクリニックの会に、ロシア語圏のレスリング強豪国から参加していた方でした。実は私は大学に入ってからロシア語を学んでいたので、その会には通訳サポートに呼ばれていたんです。なぜロシア語を学んでいたかというと、海外遠征などに行くと、ロシア語圏から来た選手は英語を話せないことも多く、コミュニケーションをとるのがなかなか難しいんですね。話ができない、通じ合えないというのは自分も不安を感じるもの。未知の存在が相手だと、やはり試合中の恐怖心にもつながってしまいます。
そこで、半年から1年くらいロシア語を学習し、海外遠征などで出会ったロシア語圏の人に積極的にロシア語で話すようにしたところ、あっという間に仲良くなれて。いつも満面の笑顔を返してくれるので、以前のような恐怖心はまったく抱かなくなった。やっぱり同じ人間だなと思いましたね(笑)。

■どん底を体験し、自分のためのレスリングを取り戻した瞬間

実はほんの2年前、大学3年のときに、レスリングを辞めるかどうかの瀬戸際に立ったことがありました。2015年6月、リオ・デ・ジャネイロオリンピックの予選でもあった明治杯全日本選抜選手権で人生で初めて初戦敗退したんです。オリンピックを賭けた大会でしたし、親や友だちも応援に来てくれていたので不甲斐なく、本当に自己嫌悪に陥りました。その後2カ月間は「もう辞めるからいいや」と、練習をする気もなくなって。それでもやっぱりレスリングが好きな気持ちが再燃し、8月末に練習を再開したところ、今度は肩を痛めてしまった。10月に手術を終えた頃には、「もう本当にレスリングを辞めるしかないんだ。自分には何もなくなってしまった」と、文字通りどん底の気持ちでした。

ずっとレスリングを見ていてくれた父も、「辞めたかったら辞めてもいいよ」と言ってくれていましたね。そして12月、私が高校生のころからずっと出続けていた天皇杯全日本選手権を、初めて観客席から応援することになりました。純粋に楽しむ側でいようと思っていたのに、いざ選手たちの姿を見るとものすごく感情を揺さぶられて。「この舞台に立つために、彼女たちはどれほどの辛い練習を乗り越えてきたんだろう」と思ったし、だからこそ、勝った選手も負けた選手もめちゃくちゃ輝いて見えたんです。泣きそうなくらい、かっこいいと思った。そして、「なぜ自分はあそこにいないんだろう?」という悔しさもこみあげてきた。そこで、もう一度自分も頑張ってみようかなという気持ちになれたんです。私も、「自分が頑張る姿をたくさんの人に見てもらいたい」、そう思いました。それ以来、いろんなプレッシャーから解き放たれて、純粋に「自分が好きなレスリングを楽しもう」という、新しい気持ちでレスリングに向き合うことができるようになりました。

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■2020年を見据え、社会人選手として新たなスタート

ご縁があって博報堂DYグループに就職が決まってからは、新人研修会や社員運動会に参加するなど社会人としての新しい経験も積めています。博報堂DYグループの皆さんは、さすが広告会社というだけあって、コミュニケーション力が非常に高い方ばかりだなという印象(笑)。私は少々引っ込み思案なところもあるので、学ぶことも多いですね。出場した大会の会場には、会社の皆さんがおそろいのTシャツを着て応援に来てくださっていて、その声援がしっかりと耳に届いてきました。初めて会う社員の方からも「いつも応援しているよ」という声をいただけるのはとても嬉しいですし、改めて「自分も頑張らなきゃ」という気持ちにさせられます。こうしてしっかりとした練習環境、レスリングに専念できる環境を整えていただけていることが本当にありがたいのと同時に、これからは会社の代表として、皆さんのサポートをしっかりと力に変えて戦っていこうという気持ちを、いま新たにしています。

2020年の東京オリンピックに向けて、2018年から少しずつ予選が始まってくるので、着実に目の前の山を越えていきたいですね。まずは今年12月の天皇杯全日本選手権で優勝すること。そして来年の明治杯全日本選抜選手権と、ハンガリーのブダペストで行われる世界選手権での優勝。これらの目標をしっかり見据え、勝つためのトレーニングに励んでいきたいです。

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【選手プロフィール】

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宮原 優(みやはら ゆう)選手
レスリング女子フリースタイル 53kg級
博報堂DYスポーツ所属

・主な実績:
2013年 世界選手権 51kg級 9位
2013年 全日本選手権 51kg級 優勝
2014年 全日本選抜選手権 48kg級 2位
2014年 世界ジュニア選手権 48kg級 優勝
2014年 全日本選手権 48kg級 2位
2016年 全日本選抜選手権 53kg級 3位
2016年 東日本学生女子選手権 53kg級 優勝
2016年 全日本学生選手権 53kg級 2位
2017年 全日本選抜選手権 53kg級 2位
2017年 全日本社会人選手権 53kg級 優勝
2017年 デーブ・シュルツ記念国際大会 53kg級 優勝

★レスリング男子フリースタイル61kg級 中村倫也選手のインタビューはこちら
「強くなりたい」一心で続けてきたレスリング―― その極みに立つための努力を、これからも続けるだけ
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