2023.05.12

【NewsPicks】生活者の“イマ”を深掘り、心を動かす広告を。

生活者のメディアへの接し方が大きく変わった。
マスメディアからSNSまで生活者が時間を費やすメディアの選択肢は広がり、コンテンツ消費のサイクルは高速化している。
こうした環境変化の下で、生活者に刺さるメッセージを伝えるには、どこに、どのようなマーケティング施策を投じるべきなのか。適切なメディア戦略立案やクリエイティブ制作はどうすれば実現していけるのか。
企業が抱える広告マーケティングの課題を解決するため、博報堂DYグループが打ち出す「AaaS」とは?そして新たに立ち上げたチーム「HAKUHODOサイクロン」とは?チームの中心メンバー3名に伺った。
貞包一平氏:前職でのデジタル領域のプラニング経験を経て、テレビデジタルを中心とした統合メディアプラニングに従事。データ起点での戦略構築、メディアプラニング、効果検証設計に強みを持ち、ブランディング業務からダイレクト業務まで幅広い課題に対するメディア領域をリードする。
相沢理人氏:デジタル領域での長年の経験を軸に、統合型コミュニケーションの開発に従事。データをもとに戦略/クリエイティブ/メディアを一気通貫で発想する設計力を武器に、ブランドの「愛される成長」を生み出すフルファネルクリエイティブの構築をリード。
關彰一氏:営業、マーケティング、クリエイティブの3つの領域での経験を生かし、統合型コミュニケーションの開発に従事。SNS の文脈を理解した、生活者の反応を引き出す企画力を強みとしながら、話題と消費の両立を達成するフルファネル設計に取り組む。

加速するコンテンツサイクルに、どう追いつくか

加速するコンテンツサイクルに、
どう追いつくか

──近年、生活者のメディアへの接し方はどのように変わりましたか。
貞包:
SNSをはじめとするデジタルメディアへの接触時間が急激に伸びています。
ここ数年で「無意識のうちにスマホでInstagramやYouTube、TikTokなどを開くようになった」という人も多いのではないでしょうか。
デジタルメディアは、接する情報が利用者によって細分化されていますし、コンテンツの流行り廃りのサイクルも物凄く早いという特徴があります。
私たちメディアプラナーは、どのメディアにどのような属性の生活者がいるのか、メディア自体の特性を鑑みながら、クライアントのメディア出稿戦略を立案するのが仕事です。
デジタルメディアでは、比較的早いサイクルで情報やコンテンツの流行が変わってしまいます。
そのため、デジタルメディアを含んだマーケティングでは、常に適切なメディア戦略を立てていくことはとても難しいのです。
關:
広告コンテンツを制作する側から見ても、SNSが生活に浸透しつつあった6〜7年前から、生活者がコンテンツを消費するスピードが、加速しているのを感じます。
──そこまでサイクルが早いと、出稿する頃には広告内容がターゲットの関心とずれてしまう可能性もありますよね。
相沢:
そうなんです。
せっかく出稿したのに「ターゲット層の関心は別のコンテンツに移ってしまっていた」という可能性もゼロではありません。
クライアントもその辺りの変化にかなり敏感になっていますね。
打ち合わせで、「これって本当に“今”流行っているんですか?」と聞かれる機会が増えています。
貞包:
「今」って言葉の範囲が狭まってきていますね。
「最近」とか「少し前」ではなく、本当に「今まさに、リアルタイムで」という意味での「今」です。
せっかく出稿した企画を無駄打ちしたくない。
しかし、狙ったターゲットがいつまでも同じコンテンツにいてくれるとは限らない。
だからこそ、「リアルタイム」のデータへの需要が年々強まっています。

リアルタイムの広告効果を測るデータベース

リアルタイムの広告効果を測る
データベース

──こうした環境変化に対して、広告会社はどのように対応しているのでしょうか。
貞包:
博報堂DYグループでは従来型の「広告枠」をクライアントに提供するビジネスモデルから、「広告効果」を提供するビジネスモデルへの転換を図ろうと考え、AaaS(Advertising as a Service)という次世代型の広告モデルを提唱しています。
そのために、テレビやデジタルなどの媒体データ、そしてグループとして長年生活者データを蓄積・活用するための独自のシステム基盤をいち早く構築しました。
テレビで言えば視聴率や視聴層のデータ、デジタルだと検索行動データやSNSの発話データなど様々なデータが蓄積されています。
それらのデータを、ダッシュボード等を用いて簡単にリアルタイムで把握することができます。
以前はデータ自体の取り寄せや調査&分析に時間がかかったデータでも、AaaSを活用することで、例えばミーティング中にその場で調べられるようになりました。
關:
最近はCM1本打って終わりではなく、テレビCMを打ちながらデジタル広告にも出稿して、店舗では販促キャンペーンをやって、という多角的なマーケティング方法が主流になってきました。
マーケティングの手法が増えれば増えるほど、検証すべきデータも増えていきます。
AaaSの登場で、こうした環境に対応しやすくなったと感じています。
貞包:
また、これから放送されるテレビ視聴率や視聴者属性といった数値の予測も可能になり、提案の幅は大きく広がりましたね。
相沢:
リアルタイムのデータがあることで、広告出稿の軌道修正をしやすくなったのも大きなメリットですね。
出稿1日目の結果を見て、CMの打ち方や内容を改善できるようすぐに社内で対策が取れるようになりました。
出稿戦略の修正が利くようになったことで、「成功か失敗か」ではなく、「トライアンドエラー方式でやっていきたい」というクライアントが増えつつあります。
關:
これは少し社内的な話になるのですが、AaaSの登場によって、メディアプラナーとクリエイターが共通のデータをもとにコミュニケーションしやすくなりました。
どこの会社もそうだと思うのですが、部署が違うと使っている言葉の定義や重視するデータが違うじゃないですか。
そこに共通で簡単にデータを確認できるダッシュボードができたことで、社内コミュニケーションが密になったし、それによってクライアントへのレスポンスの速さも質も上がっていると思います。
貞包:
AaaSは当初、メディアプラナーの仕事領域の中で活用することが多かったのですが、クリエイターの側でも活用を進めることで、かなり高い相乗効果が得られることがわかりました。
例えば、複数パターンのテレビCMを放映したときに、どのクリエイティブが一番広告効果が高かったのか、ダッシュボードで一目で確認することができます。
デジタル広告の世界では当たり前に行われているABテストが、テレビCMでも容易に、リアルタイムでできるようになりました。
また、テレビとデジタルを横断で評価することにより、今回の広告出稿が、どのユーザーのどのファネルに効果的だったのか、などを仮説立てて検証し、次のアクションに活かしていくことも可能となってきます。
相沢:
AaaSを活用することで、出稿戦略の最適化だけではなく、クリエイティブを含めたCM内容の最適化も一体的に考えられるようになりました。
「クライアントと生活者とのコミュニケーション全体をいかに設計するか」という課題を一緒に考え、解決する体制が整ったわけです。
こうした状況を踏まえ、メディアプラナーとクリエイターでAaaSを活用しながら戦略立案から効果検証まで一気通貫して担当し、常時接続型で広告効果向上に向き合うチームとして、「HAKUHODOサイクロン」を立ち上げることになりました。

あらゆる領域を一貫して担う共同チーム

あらゆる領域を一貫して担う
共同チーム

──HAKUHODOサイクロンは、どのようなチームなのでしょうか。
貞包:
AaaSに関連するデータ/ソリューション群を基盤とし、メディアプラナーとクリエイターが一体となって、クライアントのKPIに対して、何が最適解なのかを考え、その実現に向けてPDCAを回していくチームです。
生活者インサイトを軸にしたコミュニケーション戦略立案から、クリエイティブ制作、メディア設計、検証スキーム規定までをすべて実行します。
そして実際の出稿結果を見ながらコミュニケーション戦略自体の修正から、クリエイティブ/メディアプランの細かい軌道修正などまでをチームとして一貫して行います。
相沢:
広告出稿の効果を最大化するためには、一つ一つの施策が全体の戦略とどのように関連づいているのかをしっかり考える必要があります。
例えば「SNSでバズらせよう」みたいな手段の部分にだけフォーカスをしてゴールを設定すると、途中で何のためのアクションなのか、解決すべき課題の本質は何だったのかを忘れて施策だけが先走ってしまう危険性があります。
そうなると、「なんか面白いですね」「新しいですね」と話題だけ広がったものの、本来目指すべきコミュニケーションゴールへの役割が曖昧なまま終わってしまうかもしれません。
戦略の全体像が見えていれば「認知度を上げるためには、この層に対して話題を投下しよう」とか「売上を作るための施策だから、こういう文脈の発話を生み出していかなきゃいけないな」と軸をぶらすことなく考えることができます。
──実際の分析の事例はありますか。
貞包:
低アルコール飲料を担当したときに、「そもそも低アルコール飲料」って、どんな人、どんな場面に需要があるんだろうって議論になったんです。
そこで「生活者があえてアルコール度数が低いお酒を選ぶ」のは、どういうタイミングなのかを調べることになりました。
相沢:
一般的には、アルコール度数が低いお酒を好むユーザーのペルソナを作って、それをもとにメディアの出稿戦略もクリエイティブも作って、という進め方が多いと思います。
しかし、データに基づいてメディアプラナーもクリエイターもクライアントも目線を合わせようという視点から、SNSで低アルコール飲料と一緒に、どのような単語がつぶやかれているのかを分析しました。
それによって、実際にユーザーがどのような場面で飲んでいるのかをカテゴライズしようと試みたのです。
そうしたらゲームにちゃんと集中したいときとか、読書をじっくり楽しみたいときとか、我々が想定していなかったリアルな楽しみ方がいっぱい出てきたんです。
關:
最初の想定と違う、でもユーザーに極めて近いところから議論が始まりましたよね。
特に「酔ってしまってはせっかくのゲームに集中できなくなるから、ゲーム中は軽めのお酒を飲む」というのは、ゲームをやる人じゃないと思いつきません。
そういった「私はこう使う」という一人称視点のユーザーデータが集まると、自分じゃない自分になりきって企画が考えられるのは楽しいし、クライアントへの提案としても面白いものが作れるなって思います。

なぜ、豊富なデータがクリエイティブの幅を広げるのか

なぜ、豊富なデータが
クリエイティブの幅を広げるのか

──データがあることで、クリエイティブの幅が狭まったりはしませんか。
關:
「データを武器にする」というと、AIによって最適化された“最大公約数”的なつまらないものが出てくるのではないかと誤解されそうですが、むしろ逆です。
データがあるからこそ、生活者の実像にリアリティを持って迫ることができる。
だからこそ、刺さる広告が作れるんです。
クリエイティブの立場からすると、「武器が増えたな」というのが第一印象です。
特に生活者のリアルタイムの行動データが入手できるようになったのは大きいですね。
リアルタイムの生活者データ、広告に対する生活者の反応、出稿の反応予想といったデータによって、アイデアの切り口は大きく広がりました。
相沢:
提案の切り口だけでなく、クリエイティビティの担う役割も大きく広がったと感じています。
一般的に広告業界のクリエイティブ領域が担っていたのって、「どう伝えるか」というHOWの部分だったと思うんですよ。
それがAaaSの活用によってデータが簡単に見られるようになったことで、「誰に対して伝えるのか」というWHOの部分と「何を伝えるのか」というWHATの部分も併せて考えられるようになりました。
それによって、データをもとに、戦略立案もクリエイティブ制作も考えて、PDCAをしっかり回すというプロセスがシームレスになった。
マーケティングのすべてのプロセスにクリエイターが並走できるようになったことで、クライアントの要望に対して、より解像度の高い提案ができるようになったと思います。

“今までなかった視点”はこうして生まれる

“今までなかった視点”は
こうして生まれる

相沢:
先ほどのアルコール飲料のケースもそうですけど、新しい事業チャンスみたいなところは提示しやすくなったと思います。
生活者の調査をしてみると、実は商品に対する要望や考え方が企業側と大きく食い違っていたことって結構あるんです。
例えば、ある家電製品についてSNS での発話やサイトでの口コミ等のデータを分析してみたところ、メーカー側が「生活者は新機能などの付加価値を求めているはずだ」と想定していたのに対し、実は生活者側は「標準的な機能が問題なく、故障なく使えることを求めていた」ということがわかったケースがありました。
生活者は追加的な機能よりも、故障や不具合の煩わしさから解放されることを重視していたんです。
企業側が生活者のインサイトにたどり着けていないケースを調べて提示すると、「その視点は今までなかったです」という評価をいただけることが多いですね。
關:
視点が変わると、当然課題設定も変わるし、打ち出すメッセージも制作物も変わってきます。
「解決すべき課題」という、仕事のスタートラインの見え方がガラッと変わって、そこから与えられた課題に対する「正解」ではなく今までになかったような「別解」を積み上げられるようになる。
そうすることで、クライアントに新しい価値を提供していけると思います。
貞包:
HAKUHODOサイクロンは、フラットな仮説ベースではなく、様々なデータを根拠に動きながらも、単純な「正解」だけでなく「別解」も発想し、広告の結果にコミットできる「これからの事業成長に必要な」チームです。
何をKPIにするかというところから、データをもとにクリエイティブも、メディアプランもPDCA手法も考案し、アイデアの実現まで一気通貫しながら並走できる点が、従来の広告業界になかった強みだといえるでしょう。
クライアントの皆さまには「ぜひ一度従来のやり方で行き詰ったときに、HAKUHODOサイクロンの提案を聞いてみてください」とお伝えしたいですね。
制作:NewsPicks Brand Design
構成:土居雅美
撮影:岡村智明
デザイン:堀田一樹[zukku]
編集:金子祐輔
※本記事はNewsPicks(2023/3/13)に掲載されたコンテンツを転載したものです
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