2022.12.23

【VR FORUM 2022レポート】プログラマティック化するプランニング

登壇者(左から)
株式会社ビデオリサーチ 企画推進ユニットPFビジネス推進グループマネージャー 小木 真氏
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 局長 飯塚 隆博
ノバセル株式会社 代表取締役社長 田部 正樹氏
Xandr Japan マネージングディレクター 城西 將恒氏
さまざまなデータやシステムを活用して行う「プログラマティックプランニング」について、総合広告会社、運用型テレビCMサービス企業、広告最適化テクノロジープラットフォーマーというそれぞれの立場で最前線で活躍している登壇者3名と、データ&システム会社であるビデオリサーチ社でディスカッションしました。「テレビCMは効果が見えづらい」という言葉を見聞きすることがありますが、絶賛進化中であることがわかるセッションです。その一方で、どんな課題を抱えているのか、というところまでエピソードを交えて踏み込んでいきました。
※この記事は「VR Digest+」に掲載されたコンテンツをビデオリサーチ社の許諾を得て転載したものです
【もくじ】
プログラマティックは、KGI・KPIに紐づく効果効率を高めるメディアプランニング
難易度が上がるプランニングに対する各社の取り組み
多様化するデータとどう向き合う?そしてバイイングとの断絶は?
さまざまなプレイヤーとともに、業界全体で考えていくことを

プログラマティックは、KGI・KPIに紐づく効果効率を高める
メディアプランニング

プログラマティックは、
KGI・KPIに紐づく効果効率を高める
メディアプランニング

まず、「プログラマティックプランニング」とは何か、という定義からディスカッションをスタートしました。類似する概念として、ここ数年、「運用型テレビCMサービス」という単語が登場しています。まず、運用型テレビCMとはどういうことを指すのか、サービスを提供するノバセル株式会社の田部氏は、事業主としての立場でテレビ出稿の経験を元に、第一の定義は「事業主が自分の意思をもってプランニングできること」。そして、もう一つは「デジタルマーケティングのように継続的に効果を改善していくこと」と考えていると語りました。従来のテレビCMの場合、今月は出稿して来月は止める、といった1回限りのキャンペーン的な施策となり、キャンペーン単位で終わっていく発想になるが、点を線に繋げて、出稿していく中で効果を改善していくのが運用型の特徴だとしました。
株式会社博報堂DYメディアパートナーズの飯塚氏は、運用型に関して、テレビCMに関して、システムやデータを通じてできることできないことはあるが、目指しているのはクライアントのマーケティングKGI・KPIへの貢献で、それを最適化するために、「“枠・時間帯・放送局・クリエイティブ”の効果を常時的に可視化していき、最終的にはキャンペーン内でのKPIの向上を図っていくこと」と語ります。それぞれの立場からの「運用」の捉え方ですが、効果の可視化と継続的な改善という点では一致していることがわかります。
ここで、改めて「プログラマティックプランニング」とは何かを整理すると、「プログラマティック」は、デジタル広告において入札の自動化を狭義では意味したり、データに基づいたプランニングだけのことを指したりすることもありますが、広くKPIに紐づいて効果向上を図ることまでを含める場合もあります。当セッションでは、後者の意味で捉え、「プログラマティックプランニング」を、“KGI・KPIに紐づく効果・効率を高めるメディアプランニング+α”と定義しました。この「+α」の部分には、バイイングなどが含まれており、後半のディスカッションテーマにもなっています。

難易度が上がるプランニングに対する各社の取り組み

難易度が上がるプランニングに対する
各社の取り組み

セッションでは、プログラマティックプランニングが求められる背景についての考察が進められました。生活者が多様化しているなか、データの拡充によってターゲット解像度が上がっています。その一方で、メディアや広告主のKPIも多様化、デジタルデータの増加によってファネル全体のコンディションを描くことができるようになった分、ファネル全体を見なくてはならないため、プランニングの難易度が上がっていることが業界の課題となっています。
飯塚氏は、プログラマティックプランニングは、それらの課題をデジタルの力で革新する手法として注目されるようになっていると分析しています。そのアンサーとして、株式会社博報堂DYメディアパートナーズでは「AaaS(Advertising as a Service)」を提唱し、広告メディアビジネスのDX化を提案しているとのこと。これは、システムを基盤にモニタリング、プラニング、バイイングのサイクルを回しながら、広告主のKPIにコンサルタントが寄り添っていく総合メディア運用のサービス。エグゼキューションからマーケティングといったフルファネル領域に対応し、事業成果の最大化に寄与する「Marketing DX」につなげられるのが特徴です。
「AaaS」では、テレビ広告について、「枠」から「効果」へと価値転換することを標榜しています。その実現において、メディア間の取引・評価指標が分断し、さらに広告主のKPIとメディア指標も分断している状況がありました。しかし、投資を行い、散らばっていたデータの集約・統合をすることで、メディア横断での統一指標、広告主KPIとの常時連携を実現できる素地ができ、メディア広告ビジネスのPDCAが回せるようになったと語ります。飯塚氏は、「これまで、広告やマーケティングは“費用”という考え方が多かったが、費用が効果を生み出すとわかると、“投資”という考え方になる」とAaaSを推進する背景を語りました。
さらに、「『枠」から『効果」という価値転換に関して、広告主は元より『効果」が欲しくて広告を出稿しているのは変わらないが、かつてはデータが十分に揃っておらず、効果が表現しきれないことに忸怩たる思いもあった。今はダイレクトにデータをつなげることにより可能になることが増え、広告やマーケティングに投資することで、経営が回っていくという感覚が出てきた」と続けました。
続いてノバセル株式会社の田部氏は、事業主はテレビCMの正しい効果計測や投資判断ができていないのではないかとし、事業会社ラクスルでの出稿ノウハウを活用した運用型テレビCMサービスを開発。デジタル広告において、脱3rd Party Cookieにより追跡型の広告が難しくなる中で、指名検索の重要性がより高まると予測し、検索数を伸ばすことに目的を特化させた「ノバセルトレンド」を開発した、と説明しました。これは、テレビ出稿タイミングと合わせたネットでの検索アクションを計測、「瞬間指名検索数」を可視化するサービスです。指名キーワードの検索によるCVRは、一般キーワードの検索より約12倍も高いという結果もあり、出稿した放送局や時間帯ごと、クリエイティブごとの指名検索数をトレースして運用のPDCAに活かすことで効果・効率を高めることができる、と説明しました。

多様化するデータとどう向き合う?そしてバイイングとの断絶は?

多様化するデータとどう向き合う?
そしてバイイングとの断絶は?

新たな可能性を切り開くプログラマティックプランニングですが、課題もあります。飯塚氏は、データのカバレッジについて指摘。「OTTやDOOHなど、メディアが増え、デジタル化し、さまざまなデータを集めなければならなくなっている」と、対応に注力している現状を語りました。
しかし、個人情報保護の観点や戦略上、メディアからデータを提供してもらえないことが多くなっている現状も踏まえ、田部氏は、マーケティングデータは完璧には取得できないという認識が必要ではないかと問題提起します。「どうしてもデータでは特定できない領域は存在するので、予測すること、もしくは指標をシンプルにすることが大事ではないか。データを取り扱うことは目的ではなく手段であるべきでは」と語りました。
Xandr Japanの城西氏は、グローバルの視点からプログラマティックプランニングにおけるデータの課題に触れました。「デジタル広告の領域においても、3rd Party Cookieが取得できなくなっている流れの中では、ユーザーに対して説明できないデータは排除されていくだろう」と予測。データに対する制御と透明性の担保が、どこの国でも肯定的に捉えられるのではないかと、今後の方向性を示唆しました。
続いての大きな課題として、プランニングとバイイングの断絶についてディスカッションを進めました。データセントリックに最適なプランニングを行えたとしても、バイイング時にコストが高くなり実現できないといった問題に対し、田部氏は、「テレビはデジタルと違い、広告枠が有限。限られた枠に対し、多くの企業の要望があり、100%の最適化は理想だが実現は難しい。そのことを理解し、50~60%でも最適化を目指すのでもいい。テレビ業界や構造を理解した上で、最適なプランニングをすれば、バイイングもできるのでは」と提言しました。
飯塚氏は、精緻なプランニングでコストが高くなることについては、そこでKPIをどれだけ効率化できるかが重要と語ります。KPIが向上することで、結果として投資効率が良くなることがある、という考え方です。また、広告主によってKPIは異なるため、同じ広告枠でも、A社では成果が出ていないが、B社では成果が出る、ということもあります。それらをAIで分析し、両社のスポット枠をスイッチすることで結果として両社の成果が上がった事例を紹介。このような分析は、従来は表計算ソフトなどを使用し、手作業で行っていたと言いますが、現在はAIによって劇的に時間短縮できるようになったとのこと。こうした取り組みは、プランニングとバイイングの断絶を解消する大きなヒントになりそうです。
続いて、放送局側の新たな取り組みとして「Smart Ad Sales(SAS)」という商品と、それを支える「枠ファインダ」というビデオリサーチ社が提供するシステムサービスの紹介を小木が行いました。枠ファインダでは、各放送局が登録したSASの広告枠を、価格やセールス状況を実際に確認しながら、欲しい日付・ポジションを指定して15秒1本から購入予約申込が可能です。さまざまなデータ会社のデータが搭載されており、データを元にしたプランニング、それをそのまま購入予約申込できるという点で、プランニングとバイイングが直結したものとなっています。

さまざまなプレイヤーとともに、業界全体で考えていくことを

さまざまなプレイヤーとともに、
業界全体で考えていくことを

セッションの最後は、プログラマティックプランニングについて、今後の展望について語られました。田部氏は、3rd Party Cookieが使えなくなる影響もあり、デジタル広告で行われるような顕在層を狙う広告でなく、認知してもらう広告がもう一度見直されるようになるのではと考えます。「テレビ業界全体が、プレイヤーを含めて進化を続け、効果を出せるようにしていくことが重要では」と語りました。
城西氏は、プログラマティックプランニングはプランニングの効率化を目指せるが、これだけでユーザーエンゲージメントを狙えるものではなく、安価な在庫を有効化するものでもない、と指摘。CTVの領域では一周回っていて、エンゲージメントが高い視聴者向けの長編動画メディアの価値が再評価されているし、プレミアムな媒体では従来のテレビライクな広告取引が復活するのではないかと予測。「元来、テレビはセーフティで効率的なリーチが図れる唯一の媒体で、ブランディングできる最強のメディア。テクノロジープラットフォームである我々とも連携をとっていければ」と語ります。
飯塚氏も、放送局への期待は大きいとのこと。最後のバイイングや商品開発は、放送局が主役だと思っている。テレビCMの価値を高めるための施策に一緒に取り組んでほしい、と語りました。そのための“場”の提供として、「TV AaaS Lab」を立ち上げ、あらゆる分野のプレイヤーと協業し、テレビの可能性を広げていく試みが紹介されました。
最後にビデオリサーチ社の小木が「メディアプランニング手法がデジタル的なアプローチも含めて進化する中で、最適解を求めて、さまざまなプレイヤーとともに業界全体で考えて動いていくことが大切になる。我々ビデオリサーチも枠を外して考えていきたい」として、締めくくりました。――それぞれの立場からの視点がありながらも、目指している世界観は一つであることを実感するセッションとなりました。
引用元 : https://www.videor.co.jp/digestplus/media/2022/12/73632.html
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