2022.11.11

【宣伝会議2022年12月号】ヒト×テクノロジー×データで実現するテレビの価値向上プロジェクト

広告ビジネス全体のDXを図る、博報堂DYメディアパートナーズが提供する「AaaS」。テレビ広告の効率を最大化するソリューション「TV AaaS」や、テレビ広告ビジネス自体のアップデートに向けた取り組みについて、AaaSアカウント推進三部部長の松浦伸二氏と、9月より新たに始動した「TV AaaS Lab」のメンバーに話を聞いた。
(写真左から)

伊藤稔  テレビタイムビジネス&ラジオ局 テレビ四部

赤座弘記 スポット&エリアビジネス局 スポット&エリアビジネス二部 部長

松浦伸二 統合アカウントプロデュース局 局長代理 (兼) AaaSアカウント推進三部 部長

内藤匠哉 AaaSビジネス戦略局 戦略二部 部長/TV AaaS Lab 編集長

柴田真由 AaaSビジネス戦略局 戦略二部

態度変容からWeb上の行動へ 求められるKPIが変化

態度変容からWeb上の行動へ
求められるKPIが変化

マーケティング投資に対する説明責任が強く求められるなか、投資配分の最適化をどう実現するかは企業のマーケティング部門の大きなテーマとなっている。特にマーケティング投資の中でも金額の大きいテレビとデジタル、その最適化配分は近年、企業のマーケティング活動で注目の課題となってきた。
こうした環境の中で、博報堂DYグループは2020年12月より広告メディアビジネスの次世代モデルとして「AaaS(Advertising as a Service)」の提供を開始。AaaSでは独自のデータウェアハウス(DWH)を構築し、広告主のマーケティングデータや媒体社データ、同社の保有する生活者データなど、あらゆるデータを統合。「Analytics AaaS」「Tele-DigiAaaS」「TV AaaS」「Digital AaaS」の4つのサービス群を通じて、メディアバイイング、プラニング、モニタリング領域において統合的なマーケティング施策を実現する。
テレビとデジタルを統合指標で評価・運用することで、マーケティング活動の最適化を支援する「AaaS」。本格稼働から約2年の間に、まさに広告メディアのDXといえる状況が加速し、「AaaS」の構想にとっての追い風も生まれている。
昨今の広告メディアビジネスのDXについて松浦氏は、「これまでのテレビは広告接触や認知などの態度変容をKPIにしたプラニングが行われてきたが、徐々に中間KPIとして指名検索やサイト来訪といったWeb上の行動を設定することが増えてきている」と現況を説明する。
さらに、新聞や雑誌などのアナログメディアに関しても、テクノロジーを活用して行動指標に基づく施策ができるようになってきており、オンラインメディアとオフラインメディアの境目はますますなくなってきていると話す。
「枠の取引」から「“効果”の提供」へと、既存の広告ビジネスモデルのDXを図るAaaS構想。発足からこれまで、アルゴリズムの開発や対象メディアの拡張、対応可能なKPIの追加などアップデートを重ねてきた。

未来の広告効果を予測し バイイングにもつなげる

未来の広告効果を予測し
バイイングにもつなげる

2022年8月に「TV AaaS」の新機能として搭載したのが、過去データから未来のテレビCM枠の広告効果を予想する「TV CV Simulator」機能だ。
従来、テレビCMの効果は事後に実際に出稿した枠でしか比較できなかった。TV AaaSの「TV CV Simulator」機能では、個々の広告主の保有する、過去のテレビCM出稿データ・オウンドサイトデータを機械学習にかけ、1GRP当たりのWebコンバージョンリフト値を予測するモデルを構築。枠ごとの予測視聴データを掛け合わせ、最も投資対効果の高いスポットバイイング枠を検証することが可能となる。
「例えば同じ時間帯のドラマでも、出演者やストーリーによって視聴者の年代や性別は異なってきますよね。これは例ですが、さらに詳細なデータを用いて、ブランドのターゲットに合致した人が視聴している枠を高精度に予測できるのです」(松浦氏)。
通信教育を提供するクライアントからの依頼で行った予測精度検証でも、高い精度の結果を生んだという。
しかし、いくら枠の効果を精緻に予測しても、実際のバイイングにつなげられなければ活用は難しい。そこで「TV AaaS」に、複数広告主間のスポット枠組み換えを最適化する機能を搭載。
同ソリューションは、独自開発のAIが数万通りのパターンの枠組み換えをシミュレーションし、複数の広告主の広告効果を同時に最大化する組み替えパターンを導き出すことを可能にするもの。
またこれを「TVAaaS for Search and CV」と連携させることで、キャンペーン期間中に放映結果をモニタリング、即座にWeb上の行動を起点にスポット広告の最適化を実行できる。
「広告主ごとに欲しい枠、最適な枠は異なります。放送局側との調整を行いながら、各広告主それぞれに最も効果の出る枠を提供していきます」と松浦氏。効果予測に加えて、放送局との関係性を生かし、広告主にとってより良い枠を提供できることが、総合広告会社である博報堂DYグループの強み。量と質の両面を支える運用が可能になる。
今後について松浦氏は「OTTやCTVの浸透により、視聴するデバイスやコンテンツの境目がなくなっている中、AaaSを活用することで拡大するタッチポイントを包括したプラニングを提供していきたい」と語る。

ステークホルダーと協業する TV AaaS Labの始動

ステークホルダーと協業する
TV AaaS Labの始動

こうしたソリューションのアップデートを重ね、導入事例の増加により様々なデータが集約されてきた「AaaS」。これらをもとに2022年9月に立ち上げたのが「TV AaaS Lab」だ。あらゆる分野のステークホルダーと協業し、テレビの可能性をより大きく広げていくことを目的としたコミュニティ。実証実験や寄稿をもとにデータやテクノロジーを使った取り組みを「記事」として発信する、いちメディアとしての役割も果たす。
編集長の内藤匠哉氏は、設立の背景について次のように話す。
「テレビCMのDXにおいては、広告会社やテクノロジー企業だけでなく、放送局の皆さんとの連携、協業が非常に重要です。また現在、広告主側はデジタル広告に慣れ親しんだマーケターの方が多い中で、テレビに関しても同様に、適切なツール・指標の提供やレポーティングの説明責任を果たしていく必要がある。テレビに関わるすべてのプレイヤーの皆さんが連携して、より議論を深めていく環境が必要と考え、このコミュニティを立ち上げました」。

生活者の課題を解決する 番組とCMの相乗効果を可視化

生活者の課題を解決する
番組とCMの相乗効果を可視化

テレビ朝日「世界バドミントン東京2022」とヘルスケア企業であるネクイノと連携した事例では、「スポーツコンテンツの価値の可視化」に成功。放送枠内で、オンラインピル処方サービス「スマルナ」のインフォマーシャルCMと15秒・30秒のスポットCMを放映し、「AaaS」のソリューションを用いて、100万インプレッションあたりのサーチリフト・サイト来訪リフト数の比較分析を行った。
混合ダブルスなど男女ともに注目が集まるバドミントンが、低用量ピルに関する理解の醸成につながるのではないかという仮説をもとに行った提案。結果として、スポットCMよりもインフォマーシャルが、サーチリフト数は約2倍、サイト来訪リフト数は約1.2倍となり、インフォマーシャルの有効性を可視化することができた。「特に効果が高かったのが、元バドミントン選手の潮田玲子さんに出演いただいたインフォマーシャルです。コンディション調整に悩みを抱えていた潮田さんの語りが、共感を生みました」と柴田氏は話す。
この他、質的データの調査には、国内唯一のTwitter Official PartnerであるNTTデータが保有するTwitter全量データをもとに形態素解析を行い、ワードクラウドを作成。同じ悩みを持つ生活者からの共感の声だけでなく、理解の浸透がみられる単語も頻出した。
「スタートアップ企業のスポーツ中継へのタイム協賛は、広告効果をデータで可視化できないと、なかなかチャレンジが難しい。 “スポーツ番組へのイメージが良い”、“人気の番組”というだけではなく、データで証明することができました」(赤座氏)。
これまでも認識はされつつも見えづらかった相乗効果が、数値として検証できた形だ。
「テレビ局は番組コンテンツやその編成を通して、視聴者にライフスタイルを提案しています。一方、テレビCMはクライアントの想いを体現したもの。これらを重ね合わせることで、単なるターゲティングではない、生活者モーメントを捉えたマッチングを提供できるのではないかと考えています」(伊藤氏)。

業界全体での情報共有を行う ハブとして機能していく

業界全体での情報共有を行う
ハブとして機能していく

TV AaaS Labのキックオフ時に行ったビジョン共有会では、全国から400名以上の放送局関係者が集まった。
「社内だけで考えるのではなく、業界全体での情報共有が必要。テレビメディアに関して様々な角度から議論を行うハブとして機能していきたいので、“こんな挑戦をしたい”、“こんなことをやりたいがどうすればよいか”など、小さなことでもぜひ声をかけてほしい」と内藤氏。
目指すのは、次世代型のコンテンツセールスだ。データとロジックを元に新たな評価モデルを整備し、クライアントの課題を解決する手段として、テレビメディアを活用してほしいと語った。
※本記事は宣伝会議 2022年12月号に掲載されたコンテンツを転載したものです
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