2022.07.28

【Digital Adoption Forumレポート】東京海上、博報堂DYグループの「データ×DX」が業界の枠組みを変える

データから価値を見出す“非連続の進化”で事業は育つ
(写真左) 東京海上ホールディングス株式会社 常務執行役員グループCDO 生田目 雅史 氏
(写真中央) 株式会社博報堂DYホールディングス 取締役常務執行役員 安藤 元博
(写真右) Pendo.io Japan株式会社 カントリーマネージャー 高山 清光 氏
ビジネス環境やマーケットの変化が激しい時代において、競争力を高め、ビジネスを加速するためにカギとなるのがデータ活用だ。このセッションでは、グループ全体でDXを加速させている東京海上HDグループCDOの生田目氏と、博報堂DYホールディングス取締役常務執行役員の安藤氏をゲストに迎え、企業変革にとどまらず各業界の既存枠組みをも変革する「データ×DX」について議論がなされた。
※本コンテンツは、2022年7月14日に開催されたPendo.io Japan株式会社主催、JBpress/JDIR協力「Digital Adoption Forum~『デジタルの利活用と定着化』で実現する真のDX」のセッション3「業界の既存枠組みを変える『データ×DX』」の内容を採録したものです。

東京海上グループがDXで取り組む新たな価値提供

東京海上グループがDXで取り組む
新たな価値提供

高山:
このセッションでは、「業界の既存枠組みを変える『データ×DX』」と題し、東京海上の生田目さん、博報堂の安藤さんをお招きしまして進めていきたいと思います。初めに、お二方の自己紹介や取り組みのご説明をお願いします。

生田目:
当社ではデータの活用/DXは戦略の中心において多岐にわたる領域での取り組みを進めていますが、東京海上グループのDXの代表的な事例として4つご紹介します。まず、「自動車事故予兆サービスの実証実験」です。国内の中核会社である東京海上日動は、業界で初めて個人向け通信機能付きドライブレコーダー(DAP)を発売しました。収集した4400万時間分のGPS・加速度・画像データを、自動車事故発生の予兆を示すデータとして活用し、グループ全体で事故防止サービスの進化に取り組んでいます。

また、「音声マイニングを活用した社内体制改革」では、通話内容の分析と記録の入力方法について提案を行うAIを自社開発し、業務時間を大幅に削減することができました。
「人工衛星を活用した保険金支払いの高度化」では、人工衛星を使うことで、例えば水害被害発生から最短数時間で被害状況を把握、保険金支払いまでの期間を大幅に短縮することができます。

最後の「共創型自動車保険の開発」は、東京海上グループのイーデザイン損保が、全ての手続きがスマートフォンで完結する新自動車保険「&e(アンディー)」を通し先進的な契約プロセス、カスタマージャーニーを提供するものです。

2022年7月14日時点のデータです

損害保険事業は、さまざまな業務プロセスが複合的に積み上がり、お客様に保険としての商品・サービスを提供しています。そのあらゆるところで、テクノロジーを実装、あるいはデータを把握することで、より滑らかでスムーズなお客様価値を提供することができると考えています。

一方で、データそのものの価値だけでなく、データから推察されることを新たなサービスに転換していく人の能力も不可欠です。そこで当社では「デジタル×ヒトのベストミックス」というキーワードを掲げ、当社の業務能力を高めていこうと考えています。

博報堂DYグループは広告産業のDXを進める「AaaS」を提唱

博報堂DYグループは広告産業の
DXを進める「AaaS」を提唱

安藤:
私は博報堂でずっと、広告・マーケティングに携わってきました。現在は、博報堂DYグループが提唱する広告メディアビジネスの次世代型モデル「AaaS(Advertising as a Service)」の推進責任者を務めながら、グループ全体のテクノロジー部分の統括をしています。

私たちの主な業務はクライアント(広告主)にDXを提案し、その実現をお手伝いすることです。ただし、私たち自身のDXが進んでいるのかと考えると、心もとないものがありました。

クライアントから厳しい意見もいただいていました。クライアントは、メディア全体でどういう使い方をすべきか考えているのに全体最適な運用ができていない。例えば広告であれば、テレビCMとデジタルとでは評価指標は大きく異なります。ところが、クライアントの事業成果(KGI)や評価指標(KPI)とメディアの指標がうまくつながっていないため、効果も把握できなかったのです。

この課題を解決するためには、広告業界全体でDXをしなければならない。その思いから、私たちが提唱するのがAaaSです。

AaaSでは、データの集約・統合により、メディア横断での指標を統一することが可能です。クライアントのKPIとの常時連携を実現し、メディア広告ビジネスのPDCAを回すのが狙いです。AaaSではその実現のために、膨大なメディア取引データを一元的に扱えるシステム基盤を構築しました。

また、メディアデータと博報堂DYグループが保有するデータを連携し、核となるアルゴリズムを開発しました。さらに、専門のコンサル集団を有し、ダッシュボードを活用した常時接続型のサービスを提供、クライアントの成果創出にコミットするようにしました。これらの3要素により、業界最速でAaaS構想を具現化したいと考えています。

データから何を読み、何を目指すかを描くことが大切

データから何を読み、何を目指すかを
描くことが大切

高山:
両社ともに業界をリードする存在でありながら、大きなチャレンジをされていることに感銘を受けました。

お二人に共通するキーワードとして「データ」があると思います。現在、多くの企業が莫大な量のデータを収集しています。データがあれば顧客理解が進むと思われますが、量が多すぎると、どう取り扱うべきか悩むところではないでしょうか。

生田目:
東京海上日動には、約1500万台の自動車保険のデータがあります。その向こう側にはそれだけのお客様がいらっしゃるわけです。

一方で、そこから集まってくるデータは、非定型のデータ、構造化されていないデータも多いため、これらを一貫性のあるものにし、価値を持つように統合していくのに知恵を絞っているところです。

大切なのは、そのデータから何を読むのかです。平均値などの大数を見るだけでなく、その中で際立つ個のデータの価値を見いだすという両面をしっかり考えていく必要があります。

安藤:
同感です。加えるとするならば、データをどのように使うのかという観点だけでなく、まず何をやりたいのか、きちんと描き切ることが必要だと思います。この描写とデータの活用法が掛け算になったときに価値になる。それが、生田目さんが仰っていることだと思います。

私たちのAaaSも同様です。1つの概念を置いてみることも大事です。やると決めてしまえば、どんなデータをどのように処理しなければならないのかも見えてきますし、どんなツールがどう生かされるかもクリアになります。そうすれば、新たな挑戦を始めるだけではなく、その後のツールの定着にもつながっていくと思います。

生田目:
確かにその通りですね。私は、データの価値は無限だと思っています。東京海上日動には約1500万台の自動車保険の契約があると申しました。その中の50万人の方がこんなことを希望している、といった情報はどう扱えばいいのか。1500万人に比べれば少数派です。しかし、50万人のニーズがあるとすれば、ビジネスとして大いに成立します。むしろそこを徹底的に大事にしていくという世界観もあると思います。

また、保険の世界では一度でも事故の被害に遭われた方は保険の価値をしっかりと実感していただけます。そういった方々の声はとても大切です。同じ事故を起こさないために、そういった方々から得られるデータをしっかりと蓄積し、そこに向き合っていくべきだと思っています。

安藤:
大量のデータの処理を的確に行うのは、なだらかに進化していくのではなく、非連続の進化を生むことです。データを活用することで、今まで考えられなかったような商品やサービスを生み出すことができるのです。

高山:
両社の取り組みは注目すべき成功事例だと思います。
ただ、今回このフォーラムを視聴している皆さんの中にはどこから始めればいいのか迷ったり、壁にぶつかったりしている人もいると思います。ポイントはどの辺りにあるのでしょうか。

生田目:
私自身、そのテーマに取り組んでいる最中です。新しい概念のものを生み出すといっても、KPIはどこに定めるのか、予算はどう組むのか、決めなければならないことも多く、時間がかかりがちです。大切なのは、やはりトップのコミットメントではないかと思います。非連続なことをやろうとしているわけですから、DXを止めないことが大切です。

安藤:
DXの取り組みは直近では利益につながらないこともよくあります。そのため社内に反対の声も起こりがちです。「この取り組みは必ず5年後、10年後の会社成長につながる。だから今からやるのだ」と説得することが必要です。AaaSの提唱にあたって、私も一人一人と膝を突き合わせて話をしてきました。

高山:
ここまでお二人の話を聞いて、私自身、もっとDXを推進する企業への支援を強めていかねばと感じました。

一方で、大量のデータや進化するさまざまな新しいテクノロジーを使いこなせないとデータに埋もれてしまい、テクノロジーを使いこなせなかったり、生産性が悪くなったりといったことも起こり得ます。最後にツールの定着化やDXへの期待などについてコメントがあればお願いします。

安藤:
自社だけで全てを開発するのは難しいでしょう。今は、サードパーティーのツールやプラットフォームなど、さまざまな企業との連携が前提になっている時代だと思います。新しいテクノロジー、新しいツールを常に精査しながら、トータルでどのような価値を出していくべきか考えることが大切です。

生田目:
日本でも、医療で、交通システムで、あるいは製造業で、データの価値を最大限に引き出し、そこから新たな付加価値を創出している素晴らしい企業がたくさんあります。新しい価値を創出する法則がまさにデータの活用です。あらゆる人が未知の領域、未知のリスクに対して打てる手がデータであると、本日も改めて実感しました。

高山:
お二方から貴重なお話を伺いできました。今日はありがとうございました。

※本記事は 2022年7月15日 JBpress に掲載されたコンテンツを転載したものです
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