2021.09.29

AaaSによる広告メディアビジネス革新の現場②
Tele-Digi AaaSの現場
〜テレビとデジタルの統合管理と最適な運用〜

博報堂DYグループが推進する広告メディアビジネスのDX化「AaaS」について分かりやすく紹介する本連載。第2回目のテーマは、テレビとデジタルの統合運用を可能にするTele-Digi AaaS(テレデジアース)についてです。その具体的な内容や導入ポイントなどについて、サービスの導入や推進を担当する博報堂DYメディアパートナーズ統合アカウントプロデュース局の佐々井美嘉、福田春奈と、博報堂第三アカウント戦略局の中井勝大に対談してもらいました。

広告効果を同一指標でモニタリングし、
スピーディに最適な手を打てる

広告効果を同一指標でモニタリングし、
スピーディに最適な手を打てる

中井:
まずはTele-Digi AaaS(テレデジアース)というサービスの概要について、佐々井さん、福田さんからお願いします。

佐々井:
Tele-Digi AaaSは、広告の要であるテレビとデジタルを横断し、プラニングから評価までを同一指標で行うことができるサービスです。従来のテレビ広告は、多くの場合広範なリーチを目標に起爆剤的に活用されてきましたが、検索やサイト来訪やダウンロードといったデジタルならではの指標も合わせて活用することで、どのCM枠でどういう効果があったのか、ターゲット層はどこを視聴しているのかといった明確なテレビCM視聴のヒートマップを作成することも可能になります。つまりTele-Digi AaaSなら、テレビ特有のリーチ力を活かしつつ、デジタルデータ活用によるマーケティングKPIに合わせた広告配信の最適化も図ることが可能です。また博報堂DYグループには、さまざまな広告主とお付き合いする中で培ってきた強力なバイイング力、交渉力があります。運用や買い付けにおいても、決して絵に描いた餅に終わらせず、高い実現性が期待できるのがこのTele-Digi AaaSです。

中井:
ありがとうございます。テレビとデジタルを統合的に管理し、同一指標で効果検証することが可能になるわけですね。それにより、それぞれのメディアでターゲットに応じた最適化ができる。さらにバイイングに紐づいた効果的・効率的な運用が可能になる、まったく新しいソリューションということですね。

福田:
具体的に私がTele-Digi AaaSの中で活用することが多いのはTele-Digi AaaS for Search & CVなのですが、それを活用することにより、これまで実績視聴率やリーチ、意識指標の認知などで効果を計るしかなかったテレビにおいてもログベースでの評価を可能にし、テレビとデジタルでの統合評価を実現しました。何より革新的なのはその点だと思います。

中井:
リアルタイムに近い形で、テレビとデジタルをモニタリング、チェックできて、次のアクションに進めることができる。PDCAのサイクルもより加速させることができそうですね。
ここで少し深堀りして、AaaSソリューションの一つである、テレビとデジタルの広告効果を高速かつ一元化してモニタリングできる統合ダッシュボードTele-Digi AaaS for Reach & FQ(Frequency)について、佐々井さんから教えてもらえますか。

佐々井:
これまで、特にテレビにおいては、1~2カ月経たなければ実績視聴率がわからなかったり、デジタルも運用しているがテレビとの相関性がわからないといったことがありました。しかしTele-Digi AaaS for Reach & FQを使えば、テレビとデジタル双方でどれくらいリーチを達成しているかの状況をリアルタイムで見ながら、たとえば「テレビと重複が少ないデジタル媒体を買い足そう」とか「相乗効果で伸びているからもう少しデジタルを強化しよう」といった打ち手をすぐに実行することが可能です。

中井:
それに加えて、カスタマイズ性のよさもありますよね。たとえばツイッターの発話量とか世の中のトレンドを反映した指標や、競合のSOVとの相関をBI(Business Intelligence)で可視化することもできる。広告主に応じたカスタマイズも可能ですし、ゆくゆくは各広告主のニーズに合わせたオリジナルのBIをつくるといったことにも着手できそうですよね。

佐々井:
そうですね。現状だと、広告主の内部でも広告担当者とブランド担当者がそれぞれいて、各メディアのレポートがばらばらと出てくるような状態の場合もあります。広告会社も含め、議論における共通指標、共通言語がなかったんですよね。その点、一つのBI、ダッシュボードで各種データを見ることができれば、相互のディスカッション効果、広告効果の向上にも確実につなげられると思います。

中井:
確かにそうですね。
では具体的な活用方法として、たとえば一週間のテレデジキャンペーンでのTele-Digi AaaSの導入に関していかがでしょうか。

佐々井:
少なくとも、非常に短い期間で運用したいという広告主では正確な運用が難しいかもしれません。というのも、もちろん3日4日でスピーディに効果を見ることは可能ですが、どうしても平日や休日などの曜日による効果の違いが存在します。それから、早いタイミングで回すことだけがビジネスにおいて正とは限らないのでその辺りの見極め、また、テレビやデジタルの運用スケジュールは最短でも中3日くらいは必要になるなど、総合的な判断が必要となります。

中井:
広告接触後にすぐダウンロードできたりするダイレクト商材もあれば、購入まで検討期間の長い耐久財などの商材もある。そうした商材による導入の難しさの違いもありますか。

福田:
商材というより、どの段階にKPIを置くといった効果指標やキャンペーンの設計が重要だと思います。KPIを検討期間の長い商品やサービスの購入に置くならば運用は難しいでしょうが、検討期間の長い商品でもサイトに来てもらって認知を上げるなど、浅めのところにKPIを置くのであれば運用も可能です。
また、先程の一週間キャンペーンのケースでも、月に一度必ず一週間キャンペーンを実施しているような広告主なら、継続的に観測することができるので向いていると思います。早めにお声がけ頂くことで、テレデジで最適なキャンペーン運用を行うための設計の部分からお手伝いさせて頂くことも可能です。

広告主の課題に応じたカスタマイズ、
一括した最適なプラニングが可能

広告主の課題に応じたカスタマイズ、
一括した最適なプラニングが可能

中井:
実際、多くの広告主がさまざまな広告効果検証ツール、ソリューションを活用されていると思いますが、改めてどういったところがTele-Digi AaaS特有の強みといえるでしょうか。

福田:
そもそもテレビとデジタルを統合的に評価できるのは、業界でも博報堂DYグループのTele-Digi AaaSだけ。これは最大の強みだと思います。業界的にもテレビとデジタルをそれぞれ単体で測るしかなかった中で、両者を横並びで検証できるようになったことには大きな意味があります。すでに導入済みの広告主からも高い評価をいただいています。

佐々井:
そうですね。これまでだと、たとえばデジタル単体でリーチを見るならDAR、テレビで見るならVRの視聴率データから概算リーチを算出する、というふうに分かれていました。実際、各広告会社もさまざまなツールを開発、展開している中で、広告主も、キャンペーンを一括して見る際に一体どのツールを活用すればいいか選択に迷う部分はあったと思います。
博報堂DYグループが推し進めようとしているAaaSは、広告主のKPIにコミットするために、ツールをカスタマイズしコーディネートするという意味合いも大きいです。我々グループ内にはAaaSに限らずさまざまなツールが存在するので、それらを組み合わせることでキャンペーンを通してKPIのコミットに向けた一括して最適なプラニングをご提案できるという優位性があります。

中井:
広告主各社が商品やサービスの特性やターゲット、KPIを考慮してどのようなツールを入れるか、組み合わせるか、見極めは改めて重要だと認識しました。
ではTele-Digi AaaSを推進する立場として、どういうことが導入のポイントになりますか。

佐々井:
広告主がマーケティングのどのフェーズにいて何を目指しているかによって、どのツールを導入すべきか、何を分析すべきかは変わってきます。たとえば新商品で、広告をそれほど出稿したことがなくノウハウもないという広告主が新商品でキャンペーンを行う場合、そもそも想定している商材のターゲットが適切かどうかといった検証から入るパターンもあるかと思います。以前、ある広告主がアプリダウンロードキャンペーンを行ったのですが、ビジネスマンがターゲットなので平日夜と土日に広告を出すイメージだったところ、実はサイト来訪者がもっとも多かったのが平日昼間で、ダウンロードされていたのが日曜の夜ということが判明しました。ですから広告主がどこを目指したいか、ターゲット自体の居場所の検証も非常に重要だと思います。一方で、キャンペーンを過去に何度もやってきて、ノウハウもあり、ある程度効果検証ができている広告主の場合、そのデータをもとにしたプラニングによって、さらに効果検証、最適化を行うということになるかと思います。

中井:
広告主のフェーズやニーズに応じてツールの導入ステップが変わってくるし、こちらからの提案内容も変わってくるということですね。
その時に重要になってくる視点は何でしょうか。

福田:
実践的な部分はAaaSの専門部隊があたりますので、ダッシュボードをつくり、提案し、運用していくなかで、広告主とつねに向き合う立場としての営業機能は大切だと思います。広告主の課題や事情などを明確に把握し、社内スタッフとやり取りするなどして、社内外でいろいろな議論ができる状態が望ましいでしょうね。

中井:
専門チームは営業とタッグを組みながら、共に広告主の対面に立ち、課題感を把握しながらカスタマイズを進めていく。将来的には広告主と広告会社の垣根も超えて議論しながら、よりよいマーケティングを実現していけるようなサービスになりそうですね。

導入は広告主の課題と目的に合わせて柔軟に

導入は広告主の課題と目的に合わせて
柔軟に

中井:
ちなみにこれまで、導入にあたりハードルになったこと、難しかったことはありますか。

福田:
Tele-Digi AaaS for Search & CVに関しては、導入にあたり広告主の心理的ハードルが高かったことがあります。導入費はもちろんですが、それまで各部署に点在していたデータをまとめてBI化するということで、実際に手間がかかる、社内的にも規模の大きいプロジェクトになってしまい、負担を懸念されていたようでした。ですからそのときは、「いきなりテレデジを始めるのではなく、まずはテレビだけでやってみましょう」という話をしました。その広告主はそれまで実績視聴率や認知といった指標で測っていたのですが、一段階層を引き上げて、テレビ視聴ログベースでサーチリフトを測る運用型テレビという形をご提案しました。その成果を高く評価していただき、軌道に乗ったあたりで今度は広告主の方から「早くデジタルで始めたい」という声をいただくことになりました。

中井:
まったく新しいサービスですから、広告主が導入しやすいところから柔軟に入るということは必要かもしれませんね。
佐々井さん、Tele-Digi AaaS for Reach & FQの導入については、いかがですか。

佐々井:
ちょうどいま導入に向けて動いているものがあるのですが、広告主の保有するデータや、ツールの導入エリア、対象となる商材数などに応じて構築費が変動するといったことがあり、どこまでの範囲で導入を始めるのかジャッジが難しいケースもあります。そういった際は、一気に取り組みをスタートさせるのでは無く、必要最小限の範囲でスタートして効果を見ながら必要に応じて範囲を拡大させていくという運用を推奨しています。

中井:
そのあたりはルール化の徹底もポイントかもしれませんね。設計においてはもちろん、運用の際も、3日後に変更したい場合は前日のいつまでに連絡すれば対応可能だとか、チェックすべき指標もキャンペーン開始の6日間で確認・判断するなど、確たる基準やルールづくりがまず必要な気がします。初期の段階ではある程度の工数も増えて現場に負荷がかかってしまうかもしれませんが、ルールが整えば、理想のマーケティングに近づけることができるし、工数も削減して広告主や放送局も含めた業務効率化も図れるかもしれません。
大きなテーマになりますが、今後のTele-Digi AaaSの展望について話していきたいと思います。まず現在進んでいる動きなどがあればインプットをお願いできますか。

佐々井:
Tele-Digi AaaS for Reach & FQについては、現状では東京でしか統合データが見られない状況ですが、TV-AaasやDigital-AaaSと同様に順次全国へと適用範囲が広がっていきますし、テレビとデジタル以外のメディアへと対象も広がっていく予定です。広告主のマーケティングの最適化により貢献できるものになっていくはずです。

中井:
紙媒体のデジタル版やデジタルサイネージのようなものだと表現しやすいと思いますが、オフラインである新聞や雑誌をどう適用していくかはまだ未知の領域ですね。それらさえも包括できるようになるとすごいですよね。
福田さんは今後の展望についていかがですか?

福田:
Tele-Digi AaaS for Search & CVにおいては、現在、サーチリフト、CV、リーチとフリークエンシーを指標としていますが、今後新たなKPI指標を増やしていく想定です。たとえば来店や口コミなど、ミドルファネルからローワーファネルまでカバーするような取り組みが始まっています。
また過去の導入事例では、Tele-Digi AaaS for Search & CVの運用でサーチリフトは上がるようになったのですが、その先の見積もりや契約の歩留まりが悪いという新たな課題に直面しました。その結果、「これまではサーチリフトをひたすら追い求めてきたが、そろそろKPIの見直しが必要なのでは?」という議論が出てきています。これはTele-Digi AaaS for Search & CVの導入があったからこそ得られた気づきですし、つねについて回るKPIというものをしっかりと見定めながら、今後は全ファネル的にカバーできるようになっていくといいなと思います。

中井:
なるほど。KGIに直結するKPIが明確にわかっていればいいですが、やはりそこで、サーチリフト→見積→契約の歩留まりがどう推移しているかという点まで、深く計測して検証し、アジャイルで動かしていけるといいということですね。それ自体、当初設定したKPIに固執しすぎない、TRY&LEARNを見据えたマーケティングの新しい取り組みと言えそうですね。

福田:
さらに、たとえばオウンドサイトの接客についても、初回来訪時と再来訪時でランディングページ上の表現を変えるなど、より深く広告主が動きやすい導線、施策を講じるなどによって、AaaSのソリューションがより活かせるようになるといったことも出てくるかもしれません。また、消費財系なら、来店の購買実績や口コミなどに結びつけるなど、取れるところからデータを取ってきて、紐づけるということかなと思います。

量から質へと指標を変えていき、
理想的なマーケティングを実現する

量から質へと指標を変えていき、
理想的なマーケティングを実現する

中井:
では改めて、Tele-Digi AaaSの提供価値についてそれぞれ考えがあれば教えてください。

佐々井:
テレビにおける広告は、これまで「具体的な効果は可視化されていないのでわからないが、予算を投資する価値があるもの」といったイメージを持たれてきたのかなと思います。そして、その効果を見る指標がこれまでは実績視聴率しかなかったわけですが、“実績視聴率が取れる枠”は“マーケティングに貢献する枠”と必ずしも同意とは限りません。いくら実績視聴率を最適化してもマーケティングは最適化されないといったことが実態としてあります。つまり、場合によっては実績視聴率が70%しかなくとも、コンバージョンが110%あれば、広告主にとってはそれで正解という場合もあるわけです。そうした認識と実態のズレを解消し、より目的に近い、本来目指すべき方向に向けてマーケティング手法を再構築できるという意味でも、テレビとデジタルを統合的に管理するTele-Digi AaaSの価値は高いと思います。

福田:
確かにそうですね。実際に私が体験したケースなのですが、ある広告主で、実績視聴率があまりよくなくサーチリフトは変わらないという月がありました。統合的に見れば問題ないと捉えられますが、やはり広告主にとってはこれまで実績視聴率に非常に大きな意味があったわけで、心情的にはどうしても「実績視聴率を上げるべきだ」となるんですね。

中井:
これまでずっと量の評価で来たところ、質の評価、つまり効果をもとにした指標に変えようとしているわけですから、当然、そのあたりのこれまでとの変化への対応が難しい場合もあるでしょう。広告主と向き合う立場の営業に、これまで以上に力を発揮してもらわないといけない側面かもしれませんね。一方で、バイイング指標はGRPという量なわけで、思考回路をすぐに変えることは実際難しいかもしれません。いい意味での課題ですね。

佐々井:
テレビCMのアフィリエイト型でのバイイングの取り組みも進めていますが、これによって実績視聴率という量の概念から質の概念へと少しだけベクトルを変えていきやすくなるのかもしれません。

中井:
そうですね。あとデジタルの運用においては、管理画面上ですぐにアロケーションできると思いますが、テレビの場合は放送局を巻き込むことになります。よりスピーディなサービス運用を実現するにあたり、中3日のルールなどを含む商習慣とどう折り合いをつけていくかも課題のような気がします。

佐々井:
商習慣については、広告主にも媒体社にもメリットがあるような形がどういうものか対話を続けるなかで、ある程度は柔軟な変容が期待できるような気がしています。一方、限りあるCM枠の在庫がひっ迫したときに何ができるかといった、テレビの仕組みの物理的な限度にどう対応するかも、ひとつの課題だと思います。実は過去に、複数クライアント間でのCM枠の最適化ということをトライアル的に何度か実施しています。いわゆる放送局の担当者がアナログでやっている作業を自動化するという取り組みを行ってみたのですが、やはり工数の課題はあります。そこがしっかりとルール化できたり、あるいは予算の投資の仕方を変え、いくつかの買い切った枠の中で運用を回していけたりというようにすれば、枠状況は改善されるのかもしれません。

中井:
テレビとデジタルを統合的に見ることで、たとえば自動車に強い枠とか、ダイレクト商材に強い枠といったこともデータ的に分析できるようになる。それがノーム値化されていけば、媒体社に余計な負荷をかけることなく、最適な形を我々グループ内で提供できるかもしれませんね。

佐々井:
たとえば最初スポットで買い、運用するうちに業種や目的によっていい枠が見えてきたとする。であれば、今度はその枠をレギュラータイム枠として弊社で買い切ります、などという話ができるかもしれません。そうすれば放送局にとっても、いままで売りあぐねていた買い切り枠の振り分けができるでしょうし、地場を確保できるのは悪いことではないと思います。広告主にとっても効率のいい枠を抑えられることになります。

中井:
なるほど、3者それぞれにメリットのある形ができるわけですね。Tele-Digi AaaSがきっかけとなり、未来へ向けて少しずつステップを踏んでいくことで、誰にとっても理想的なマーケティングへの進化が可能になる。これからが楽しみですね。

以上となります。今日はありがとうございました!

佐々井 美嘉

博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進1部
メディアプラニングディレクター

福田 春奈

博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進1部
メディアプラニングディレクター

中井 勝大

博報堂
第三アカウント戦略局 デジタルビジネス推進グループ
部長

博報堂DYメディアパートナーズ プライバシーポリシー
© Hakuhodo DY Media Partners Inc.All rights reserved.
お問い合わせ