コラム
YouTubeコネクテッドテレビ広告が効く理由を“視聴の質”の観点で分析
──Advertising Week Asia 2023より
COLUMNS

2023年6月6日(火)~8日(木)、東京ミッドタウンにて「アドバタイジングウィーク・アジア2023」が開催され、さまざまなコンテンツトラックやインタラクティブなディスカッション、基調講演、ネットワーキングが展開されました。

本稿では、「コネクテッドテレビにおける YouTube の現在地 – ユーザー・広告主双方の視点から「効く理由」を解き明かす -」と銘打ったGoogle 提供セッションにおいて、REVISIO株式会社の佐藤良祐氏と株式会社博報堂DYメディアパートナーズの佐藤憶人が登壇し、「視聴質」に着目しブランドリフトの向上を果たした事例をご紹介します。

佐藤 良祐
REVISIO株式会社
シニアアカウントエグゼクティブ

佐藤 憶人
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
メディアプロデューサー

地上波テレビとデジタルメディア両方の特性を持つコネクテッドテレビ

佐藤(憶)
私は現在、博報堂DYグループが掲げるAaaS(Advertising as a Service)の戦略構築、実装に携わっており、コネクテッドテレビを含むメディアビジネスの次世代化に日々取り組んでいます。本日ご一緒する佐藤良祐さんとはブリヂストンの事例でご一緒したのですが、同い年、同じ苗字ということもあり、親しみを込めてファーストネームで呼びたいと思います。良祐さんよろしくお願いします。

佐藤(良)
よろしくお願いします。弊社REVISIOでは「視聴質」というデータを通し、新しい視点から広告の新しい価値を生み出せるような分析、調査を行っています。

佐藤(憶)
では早速ですが、コネクテッドテレビ上のYouTube広告が、広告主のマーケティング活動の広告投資効率を引き上げた事例として、ブリヂストンの事例をご紹介します。

まずは取り組みの背景からお話しします。
現在博報堂DYグループは、比較的新しい広告配信面であるコネクテッドテレビにおけるメディアビジネスを推進しており、2020年にローンチしたAaaS (Advertising as a Service)を活用し、テレビモニター、画面などのテレビデバイスにおける動画コミュニケーションに新たな価値を生み出すべく進化を続けています。AaaSについてもう少し詳しく説明すると、独自開発したデータウェアハウスを構築しており、その中に広告主のデータ、媒体社データ、弊社が保有する生活者データなどを統合。プラニング、バイイング、モニタリングのサイクルを回しながら、広告のマーケティング効果を可視化し統合メディア運用を実現するサービスです。対応メディアは日々増え続けており、コネクテッドテレビもその一つです。

一方で、コネクテッドテレビ自体はまだ発展途上の領域だと我々は考えています。
大画面、共視聴といった観点では地上波テレビ広告と同様ですが、ターゲティングが可能だったり、能動視聴が見込まれる点ではデジタルメディアに近い。つまり、テレビメディアともいえるしデジタルメディアとも言える存在なのです。そんな中私たちは、昨今急速に注目を集めているコネクテッドテレビへのアプローチ方法を探るべく、広告主と一緒にチャレンジを続けています。データやテクノロジーを駆使したAaaS活用で広告効果を明らかにし、その結果を今後のプラニングに活かすことで広告効果をさらに高めていくことができるのではないかと考え、今回、ブリヂストンにもYouTube広告のコネクテッドテレビの配信を提案しました。広告出稿を行える配信サービスはあまたありますが、その中でもっとも多いユーザー数を抱えているYouTube広告の知見をためていくことが重要だと考えたことも、この取り組みに至った大きな理由です。

ではここから具体的に、実際の配信と検証内容について見ていきます。
今回、ブリヂストンのスタッドレスタイヤのブランドである「ブリザック」のキャンペーンの一環として、地上波テレビCMの出稿期間に合わせ、YouTube広告のコネクテッドテレビ配信を行いました。
その際、Googleとも協働しながら、二つの調査を実施しました。
分析の対象としたCMは機能性の高さをしっかりと伝えたクリエイティブで、すでにご覧になった方も多いのではないかと思います。
ブリザックはすでに有名ブランドであり、認知も非常に高く、かつ検証素材となるCMは以前からテレビ広告やYouTube広告としてすでに配信した実績がありました。それゆえ、ある意味ベースラインが非常に高い状態で、そこからさらに認知を上げていくというなかなか難しい状況でした。にも関わらずなぜ今回あえてこのタイミングでコネクテッドテレビの検証をしたかというと、今までのコミュニケーションに新しいメディア・手法を組み合わせたとき、今まで獲得できなかった顧客へのリーチという効果がどのように定量的に表れていくかを検証したかったからです。

それでは1つ目の検証、「クロスメディア態度変容調査」について説明します。
この調査はインテージが保有するパネル、「Media Gauge Dynamic Panel」を活用し、地上波テレビCMとYouTubeコネクテッドテレビ広告の、接触・非接触をログベースで判断し、態度変容調査のアンケートを配信してそれぞれの比較分析を行ったものです。検証の軸は大きく2つあり、1つ目はリーチ効果。「地上波テレビCMとYouTubeコネクテッドテレビ広告に接触することで、態度変容が見られたか?」というもの。
2つ目はフリークエンシー効果。「地上波テレビCMに加えてYouTubeコネクテッドテレビ広告を出稿した場合、何回接触すると態度変容が見られたか?」に関して我々は検証しました。

1つ目のリーチ効果についての結果からご紹介します。
今回は検証期間前から出向実績のある広告素材だったので、実はベースラインの広告認知はすでに53.3%という高い水準にありました。
さらに今回のキャンペーン期間で継続してテレビCM出稿していたということもあり、テレビCM接触者の広告認知に関しては多くて5.5ポイントの増加となり、結果58.8%まで上がりました。さらに、テレビCMに加えてYouTubeコネクテッドテレビCMでも重複接触した場合がもっとも高く、約68.5%、15.2ポイント増加したのを確認できました。同じ素材、デバイスではあるものの、地上波テレビとコネクテッドテレビで接触が重複することで高い広告認知リフトを確認することができたのは、まさしく広告効果を高めるという、私たちの目的に近しい結果がきちんと見られたと感じています。このようにテレビとYouTubeの重複接触による伸びが顕著だったことから、やはりコネクテッドテレビ上のYouTube広告が強く広告認知を伸ばすことを確認できたと、我々はこの結果からとらえています。

今回のキャンペーンにおいては、キャンペーン開始前から継続的に同じ素材を使用していたこともあり、基準となる接触者のスコアが地上波テレビのほうが非常に高く出ていました。その影響もあり、結果として地上波テレビについては、すでに商品、CMとの関与度が高い生活者の方へのリテンションという役割を担っていたのではないかと考えています。一方でコネクテッドテレビに関しては、商品との関与がこれまで低かった生活者に対しての新鮮な認知を獲得できました。このように地上波テレビではリーチできなかった層にきちんとリーチし、認知を獲得することこそが、コネクテッドテレビが今後担っていく役割の一つではないかと考えています。

2つ目の分析軸であるフリークエンシーごとの態度変容分析においては、地上波テレビと比較して、コネクテッドテレビの方が少ない接触回数で生活者の認知を獲得することを確認できました。YouTubeは2回以上の接触で15ポイントリフトと、高い広告認知のリフトを出すことができました。こちらも先ほどの分析結果と同様、コネクテッドテレビが新たな顧客開拓の可能性を広げる手助けになったのではないかと考えています。新しい広告配信面だからこそ、効率的に認知を獲得することができる。広告主にとっても提案する我々にとっても、非常に重要なファクトが明らかになったのではないかと考えます。

以上のように、同じデバイスでも視聴者特性が異なるからこそ、YouTubeコネクテッドテレビ広告は効率的に認知を獲得することができるという結果を得ることができました。今度は、リーチやフリークエンシーといった配信の量や頻度だけではなく、視聴の質を分析する必要が出てきます。その分析をご一緒したのがREVISIOさんです。ここからは、視聴質調査に関する概要と、得られた示唆を、REVISIOの良祐さんからご説明いただきます。

視聴質の分析からわかる高い広告効果

佐藤(良)
私からはREVISIOが行っている視聴質調査とは何か、ブリヂストンのキャンペーンでどのような結果が得られたかについてご説明します。

そもそもなぜ私たちREVISIOが視聴質に注力しているかというと、これまでは視聴の量に議論が偏っており、広告効果においてきわめて重要な要素である視聴質を正しく理解することができていなかったと考えるからです。
REVISIOは、家庭内に調査機器を設置させていただき、人体認識技術を用いてテレビの視聴態勢をデータ化して取得。視聴の質を可視化するのに成功しています。
画面の前に誰がいるのかいないのかという滞在の情報、ちゃんと見ているか見ていないかの注視の情報など、関東2000世帯、関西600世帯を対象にログデータとして保有しています。
今回のブリヂストンのキャンペーンにおいて用いたのも、このログデータです。具体的には、1秒以上画面に映っていたかどうかという「世帯のリーチ」、実際に画面の前に人がいたかどうかの「滞在のリーチ」、CMを実際に見たかどうかの「注視リーチ」という3段階のリーチで分析しました。

地上波テレビのみの世帯リーチを100%とした場合、滞在リーチは59%、注視のリーチは47%でした。もちろんこの数字は世帯から滞在、滞在から注視と移っていくほど下がっていく指標です。一方、YouTubeコネクテッドテレビのみの視聴者に関しては、世帯リーチを100とした場合、滞在リーチが77%、注視のリーチは73%という結果になりました。つまり広告をしっかり見ている可能性が高く、リーチの質が高いという結果が出せたのです。

続いて滞在リーチに焦点を当て、さらに年代別に見てみました。地上波に関してはMF2、つまり49歳以下の割合が35.6%だったのに対し、YouTubeコネクテッドテレビは59.7%。この事例におけるYouTubeコネクテッドテレビの配信は、世代に隔たりなくリーチしていることも判明しました。さらに、画面の前にいる人がどれだけきちんと見ているかという注視度だけで見ても、地上波15秒CMは34.8%、30秒CMは37.5%だったのに対し、YouTubeコネクテッドテレビの場合15秒は44.8%、30秒は50.9%と高い数値を示しています。ここからも、YouTubeコネクテッドテレビ広告はただ届くだけではなく、きちんと見てもらえるということが確認できます。

コネクテッドテレビ広告の可能性を引き続き追求していく

佐藤(憶)
これらクロスメディア態度変容調査と視聴質調査の結果を受け、我々は、YouTubeコネクテッドテレビ広告は、地上波テレビCMとは異なる層へ注視度の高いリーチを獲得することができる配信面であると結論付けています。
さらにYouTubeは能動的な視聴ニーズも満たすようになっており、結果として広告効果が出てきています。この因果関係を、今回改めて定量的に解くことができたことに大きな意味があるのではないかと考えています。
今回の検証を受け、博報堂DYグループとしての今後の取り組みとしても、クリエイティブやフォーマットの活用の機会があると感じています。今回、配信面としてのコネクテッドテレビの有用性は実証されましたが、クリエイティブ自体はテレビCMのものを流用しています。今後は6秒のバンパー広告や、長尺素材といった広告フォーマットという観点でも検証が進めば、さらに高い広告効果を同様のキャンペーンで実現できるのではないかと思います。

冒頭に言ったように、コネクテッドテレビは大画面、共視聴といった観点では地上波テレビ広告と同様で、ターゲティングが可能だったり能動視聴が見込まれたりするという点ではデジタルメディアともとらえられる、非常に魅力的なメディアです。そういった特性を持つコネクテッドテレビは、とりあえず出稿してリーチ補完して終わるのではなく、PDCAを回しながら広告効果をより高めていくことができるのではないかと考えます。今後、広告主の皆さまにもそういう軸での取組みをぜひ提案させていただきたいですね。

佐藤(良)
そうですね。テレビデバイスのインターネット接続率は今後年々高まっていって、テレビCMとYouTubeを含む配信サービスの統合プランニングに対するニーズは高まっています。広告主の皆様にとってもすごくチャレンジングな部分になってくるのではないでしょうか。その際、リーチやフリークエンシーといった旧来の量的な部分だけではなく、視聴の質も加味したうえで媒体の特性を理解していくことが、高い広告効果を得るうえでは非常に重要だと考えています。盛り上がりを見せているコネクテッドテレビ広告ですが、まだ始まったばかりです。弊社としても広告主と広告会社の皆さまと共に、動画コミュニケーションの未来を一緒につくっていけたらなと思っています。

佐藤(憶)
弊社としてもコネクテッドテレビに関するノウハウを日々蓄積していますので、相談などあればぜひお知らせください。本日はありがとうございました。

佐藤 良祐
REVISIO株式会社
シニアアカウントエグゼクティブ

佐藤 憶人
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
メディアプロデューサー

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