N.D.PromotionとZERO、博報堂DYメディアパートナーズグループのオールブルーの3社が業務提携し、1990年代後半から2000年生まれの世代を指す“Z世代”を対象としたシンクタンク「Z総研」を発足させました。Z総研の立ち上げの背景、今後の取り組み、Z世代と関わるなかで感じる若年層の持つ新たな感性についてなどをZ総研 プロデューサーの伊藤公法さん、オールブルーの丸山紘史に聞きました。

Z世代を専門に研究する国内初のシンクタンク「Z総研」設立の背景

伊藤
昨年の夏頃にTikTokが流行り出した際、その影響力の大きさから、我々ミレニアル世代以上とは明らかに異なった生態であるZ世代(1990年代後半から2000年生まれの世代)のトレンドを解説するようなセミナーや彼らのトレンドに合わせたマーケティングが急激に増え始めました。こうした動きを見て、実際にZ世代と会って話をする中で、若者の新しい動きをいち早く研究する組織の必要を感じたのが発足のきっかけです。丸山さんが在籍している博報堂DYメディアパートナーズグループのオールブルーと、10代の若者とのネットワークを持つWEBメディア「Nom de plume」を運営しているN.D.Promotion、若年層に影響力のあるインフルエンサーのブッキングに強みを持つZEROの3社に声をかけて、発足しました。組織の最初のアクションは、Nom de plumeでネットワーキングしているZ世代たちへ調査したデータを研究することからスタートしました。

丸山
現在のZ総研の具体的な活動としては、Nom de plumeの読者を対象に、興味のあることや好きな食べ物や飲み物などトレンドを調査しています。その調査データを、Z世代をターゲットにした企業のマーケティングやプロモーションに生かしていくのがオールブルーの役割です。

伊藤
発足のきっかけでお話したように、今、マーケターにとって、10代~20代前半の学生たちの世界はいつからかブラックボックス的な、よく分からないものになっていっているように感じます。流行の移り変わる速度がこれまで以上に早くなり、利用者が爆発的に増えたプラットフォームも3ヶ月後には“最近イケてない”といった扱いを受けたりします。
こうした動きを、マーケティングの現場に関わっている方々が常日ごろからキャッチアップし続けるのは、どうしても難しい。我々のような専門家集団が、変化をキャッチアップし、データを活用しやすい形で加工してご提供していけたら、と考えています。

丸山
Z世代のトレンドの解説は、クライアントからだけでなく、社内の営業やクリエイティブから相談を受ける機会もどんどん増えていました。
若年層のトレンドをいち早くつかみビジネスへ生かしていくことを目指してきたオールブルーとしても、私個人としても、流行をキャッチアップするためにこれまでも努めてきましたが、Z総研の立ち上げにあたって、強力なコンテンツホルダーと組むことで、より一層質の高いものにできると考えました。

伊藤
Nom de plumeの持つネットワークには、Z世代であり、若者文化に関する編集のスキルや、トレンド収集に情熱をもった人が3000人以上もいます。昨年でいうと、タピオカなどのスイーツトレンドや最新のカメラアプリ事情などについて、とても魅力的に発信していました。そのような彼ら・彼女らから様々な情報を得ることができます。

ミレニアル世代以上の我々の中高生の頃を思い返してみると、トレンドって「クラスのイケてる奴のジャージの着こなしがかっこいいから真似しよう」というところから広がっていく感じだったと思うんです。Z世代の話を聞いていても、この構造はあまり変わっておらず、これはトレンドの本質的な部分なんじゃないかと感じています。
先ほどの3000人以上の若者たちは、Z世代のなかでトレンドを作り出すイノベーター層が集まっているので、最新のトレンドやまだ広がる手前の流行の兆しなどをデータから得られることが、我々の強みの一つです。
また、現在はこのグループとは別に、より人口ボリュームがあるフォロワーの層(トレンドを取り入れる側)についても、データを集められるように取り組んでいるところです。この層からは、また違った角度のデータが取得できるのではないかと期待しています。

セルフプロデュース・セルフブランディングが
自然にできるZ世代の若者たち

丸山
今の若者に一番喜ばれるインセンティブは「メディアに出られる」といった、自分のブランディングに繋がるものなんです。Z世代は、我々以上に“自分”を発信したい人たちなのだと感じます。その気持ちをくすぐるコンテンツは、バズりやすい傾向にありますね。

伊藤
普段、芸能マネジメントに携わっている私には、Z総研をつくりたいと思った動機の一つに、「Z世代の才能ある子たちと会って話がしてみたい」ということがありました。これまでは、都市部の人が雑誌などのメディアにも出やすく、トレンドセッターとして目立つ存在になりやすかったですが、今はSNSやウェブのおかげで、地方に住んでいても全国の若者から支持を集めている方が沢山います。SNSの世界では情報を発信する場所に情報が集まってくる。Z総研として、情報を発信することでそのような才能のある方々にお会いしたいと思っています。

丸山
僕は名古屋出身なのですが、僕らの世代はとにかく東京に憧れていました。高校生の時は、週末に東京にいって流行を調べ、学校にいってそれを流行らせる、みたいなことを真剣にやっていました(笑)。でも、Z世代には“東京はイケてる”みたいな感覚はほとんどないように感じています。

伊藤
自分の個性を意識したセルフブランディングができる人は、地方に住んでいること自体を強みにしていたりしますよね。Z世代は、セルフブランディングの意識がもの凄く強いため、“みんなと同じベルトコンベアに乗っているな”と感じたら、すぐにそこから外れようとするんです。世の中の流れに対して、本当に敏感に反応して、そういった行動をしています。

僕が芸能ビジネスをしている中で、Z世代についてそれまでの世代と違うと感じるのは、オーディションという形式で才能が見つけにくくなった、ということです。プロデューサーやマネージャー主導でタレントを募集してもなかなか人は集まりません。なぜなら、Z世代には、誰か大人にプロデュースされるとか、有名にしてもらう、ということにリアリティがないんです。意思決定は自分がする。
アイドルやタレントと言ったときにイメージするものが変わって来ているのだと思っています。彼らは、これまでのような、プロデューサーとマネージャーの意思決定に従っていれば誰かが売ってくれる、という形ではないタレントのあり方を想像していると思います。

「所属」することへの社会意識の変化

伊藤
ただ、こういった動きは若年層に限らず、企業も、以前であれば社員に画一的に働くことを求めていましたが、今は個性を生かした副業を勧める企業も増えてきていますよね。同じように、たとえば最近のアイドルグループでも、メンバーのそれぞれどのような個性があって、それをどうグループに還元するか、ということを各々がすごく考えています。「神様のような存在が勝手に売りこんでくれる」ということは起きないことを分かっているので、自分達で強みを見つける必要があることを自覚しているんです。

一般論になってしまいますが、これまでは「国家と経済が成長する、大企業にいれば一緒に成長できる」といった具合に大きな組織に属する傾向にありました。組織が勝手には成長しない時代に、イノベーティブな個性が求められる空気が社会全体にあることを、若者も敏感に感じているのではないかと思います。Z世代は、10代でも起業する人が多いんですよね。会社に就職するとか、何かに属することを目指す、といった感覚が薄いのだと思います。

丸山
会社を興すこともセルフブランディングの一貫と捉えているのかもしれませんね。最近も何人かのZ世代の若者と話す機会があったのですが、いま憧れている人は俳優やアイドルなどではなく、企業の社長をあげる人も多いんです。

伊藤
Twitterなどで目立っている上場企業の社長の言動を見て、ビジネスがまるでエンタテインメント、ショーケースのように見えているんだと思います。「会社に入って10年経ってやっと大事な仕事を任される」といった上の世代の認識とは違う仕事観が彼らにはありますね。

丸山
働くという点でも、“自分がどう見えるか”ということを大切にしていますね。そして“自分は自分でやっていく”という感覚が強いので、既存の肩書きを目指すのではなく、自分の名前(バイネーム)で働くことも志向しています。

「Z総研」の今後の展望

伊藤
今後の構想としては、研究に協力してくれるZ世代を増やしていきたいと考えています。クライアント企業からのグループインタビューへの要望などについても応えられるようにしていきたいです。

丸山
2月のZ総研のローンチパーティーではZ世代のインフルエンサーをお呼びしてお話していただきました。広告会社のプランナーの方や、Z世代とコネクションを作りたい企業の方、若い世代をターゲットにしたビジネスを展開しているクライアントにも多数参加いただきました。このようなZ世代と直接交流したり、関係構築のできる場は今後も提供していきたいと考えています。

伊藤
Z世代の調査については、年に2回リリースしていく予定です。それ以外にも、勉強会やクライアントでのセミナーなども構想していますので、Z世代をターゲットとしたマーケティングをされている方々にお役立ていただければと思っています。また、Z総研自体の仲間になってくださる企業、個人も大歓迎です。いつでもツイッター、インスタでDMをください(笑)。

 

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