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VR FORUM 2019 ~Data Orchestration 基調講演「インターネット広告の未来」
REPORT

2月13日に開催されたビデオリサーチ社主催「VR FORUM 2019 ~Data Orchestration」の基調講演に当社代表取締役社長 矢嶋弘毅が登壇し、「インターネット広告の未来」をテーマに講演を行いました。講演では、矢嶋がデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム設立時から歩んできた道のりとインターネットビジネスの環境変化や広告ビジネスの変遷を振り返ったあと、この先のインターネット広告ビジネスの未来予想について語りました。

■ インターネット広告の20年間を振り返る

講演の冒頭、「1996年から自分の歩んできたインターネット広告世界では約5年に一度、大きな変化があった」とした上で、1996年から2016年の約20年間のインターネット環境をベースに、ビジネスのトレンドと広告市場の変遷について語りました。

デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムが設立された1996年当時は、日本のインターネットの幕開けのとき。そこから現在までの約20年を振り返ると、創成期・拡大期・発展期・変革期と、日本のインターネットの変遷は4つのステージに分けることができる。

●創成期(1996年~2000年)
パソコンによるインターネットサービスが始まった時期。メール広告、バナー広告が主流。
●拡大期(2001年~2006年)
携帯電話が情報端末になった時期。ブロードバンド化が一気に進展。検索連動型広告とモバイル広告が市場の拡大を牽引。
●発展期(2007年~2011年)
SNSが急速に浸透。広告では、アドネットワークやアドエクスチェンジ、RTBやDSP等の革新的なアドテクノロジーが次々に登場し、インターネット広告は、企業のマーケティング活動と切り離せない存在になった。
●変革期(2012年~2016年)
スマートフォンの普及率が50%から70%を超えるまでに拡大。通信環境が4Gとなり、スマホで動画をみる習慣が広がり、「動画広告」のジャンルが確立された。

そして、2017年ごろからインターネット広告は次のフェーズへと移ってきた。現在はその過渡期であり、「これまでの20年」と「これから」を分ける大転換期である。そのヒントになるのは、「世界的な動画広告市場が急拡大」もそうだが、「年始の学生スポーツイベントに見られた、テレビとインターネットによる番組視聴の結果」(※)から見て取れる。このイベントでは、テレビの視聴率が過去最高であったが、それに加えて、インターネット経由での動画コンテンツ視聴回数が前年を大幅に超えたこと(前年比180%超)、そしてインターネットでの視聴者の70%がテレビでも視聴していることから「放送と通信のデバイスを活用した視聴が好循環を生んだ事例で、ここに大転換の本質がある」と考察した。この先、通信インフラやデバイスの進化が加速するが、スポーツやエンタテインメントを初め、さまざまな領域で放送と通信のデバイスが絡み合う好循環が加速することを予感している。

(※)ビデオリサーチ社提供の「VR CUBIC」を用いて分析

■第四次産業革命のインパクトは、「テレビビジネスがモニタービジネスになること」である

2016年のダボス会議で、現代は第四次産業革命期にあることが語られ、ヒト・モノ・マチなど全てが通信インフラのうえでつながる時代。矢嶋は、最大のインパクトである「デジタルトランスフォーメーション」が私たちのビジネスをどう変えるか?通信技術とデバイスの進化が加速する中、次なる広告会社のビジネスのヒントは何か?について話を進めました。

先日開催されたCES(Consumer Electronics Show)では「5G」と「4K/8K」が大きなテーマだった。会場内には、美しい映像のテレビ受像機のみならず自動運転車、家電、最新のスマートデバイスからアウトドアメディアといった展示の至る所にモニターがあった。それを見た時、社会の至るところに登場するモニターは、広告会社にとって大きなビジネスのチャンスになるのではないかと感じた。

このモニターが増えという事象を広告会社の視点で捉えなおすと「テレビビジネス」が「モニタービジネス」となり、「テレビ広告市場」は「モニター広告市場」となっていく。このようにビジネスフレームを捉えなおすことに今後のインターネット広告の活性化につながるヒントがある。すべてのインターフェースが「放送と通信につながったモニター」になることが最大のビジネスポイントである。

モニター広告市場は、現在のテレビ広告市場に加えてインターネット広告市場の約半数を占める動画広告市場の規模がある。この新たな市場を活性化させるためには、テレビ業界がもつコンテンツとクリエイティブ、デジタル業界が持つテクノロジーとデータのナレッジを掛け合わせながら、メディアを価値化することが重要であり、そのために業界を越えた新しいコラボレーションが広がることでイノベーションが加速する。

■新たなる課題への対応

テレビやデジタルが業界を超えたコラボレーションで、よりオープンにイノベーションを加速度的するための協力関係について語り、世界広告主連盟が発表した「グローバルメディア憲章」について紹介しました。

当然のことながら、透明性やトランスペアレンシー 、ブランドセーフティーやデータの安全性を担保し、生活者の体験向上に貢献するという共通の価値観が重要だと考えている。この先、業界を越えて全員で取り組んでいかなければならないテーマと考えている。
また、「世界広告主連盟」がまとめた「グローバルメディア憲章」で挙げられているテーマはインターネット広告が社会的な役割を果たす上での土台となるため、こちらも皆で議論をしながら進めなければならないと考えている。

■本格的な融合の時代へ

そして最後に、「業界を越えたコラボレーション」の重要性を語り、講演を締めくくりました。

この先、「メディア」という概念が再定義される。「マス」か「デジタル」の二元論ではなく、「コンテンツ」「クリエイティブ」「テクノロジー」「データ」といった業界を超えたコラボレーションの重要性が増し、本格的な融合の時代となっていく。

海外では、有力プラットフォーマーがテレビ広告を強化しており、「ブランド構築に関して、テレビの訴求力を上回るものはないということに気が付き始めた」との記事を目にした。この記事では、「デジタル企業が消費者を相手に直接のビジネスをしており、それが消費者に直接うったえるテレビ広告の利用を増やしている要因ではないか?」との考察がついていた。
この先、デジタルを通じてブランドが消費者と直接関わるビジネスが増えるが、テレビビジネスをモニタービジネスと捉え直すことで、大きな可能性が見えてくると考えている。

■プロフィール
矢嶋弘毅
博報堂DYメディアパートナーズ 代表取締役社長
1984年博報堂入社。マーケティング局などを経て1996年にデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムの設立に伴い代表取締役に就任。2011年より当社取締役を兼務。2015年、D.A.コンソーシアムホールディングスの設立に伴い同社 代表取締役。2017年6月より現職。

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