コラム
データドリブン
データ・クリエイティブ対談 キックオフ座談会(後編)
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データ・クリエイティブはこれからどう進化していくべきなのか。その在り方について識者と語り合う対談企画のキックオフ座談会後編。この企画にインタビュアーとして参加する茂呂譲治、徳久真也、篠田裕之の3名がデータ・クリエイティブのこれからの課題について語り合いました。

前編はこちら

◆手に入れたデータを活用し、いかにアウトプットにつなげるか

篠田
今後データ・クリエイティブを実践するために求められるものは何でしょうか。いまメディア環境やテクノロジー、データ分析手法がものすごいスピードでアップデートされるなか、それぞれが、自分自身をどのようにしてアップデートさせていくべきでしょうか。

徳久
テクノロジーは日進月歩でどんどん新しいものが出てくるので、知識やスキルのアップデートも重要ではあるけれども、さらに上位レイヤーの視点をアップデートすることが重要と思います。たとえばコピーライティングやバナーのクリエイティブはテクノロジーによってどんどん自動化される一方で、AIにどんなデータを入れるかを決めるのは人間。入れるデータによって大きく結果が変わる。ここにクリエイティビティがあります。どのようなデータを用いてどのようにしてクリエイティブに落としこむか、仕組み自体を考えることが重要だと思います。

篠田
一方で、新しい仕組み、プラットフォームを作るときに、このデータはそもそもどのように生成されたのかといったデータに対する理解、また、そのデータを分析するアルゴリズムを理解し、意味が分かったうえでデータや分析手法を取捨選択するということも、これから重要だと思います。社内のデータ分析環境、分析スキルはここ数年で確実に向上していますが、それは、技術的な意味での向上だけではなく、思想的な意味での向上につながるのではないかと思うんです。深くデータに踏み込まないと、浅い視点になってしまう。

茂呂
まずはデータを一度まるごと見渡してみると、そこから様々な仮説がたてられます。ストラテジックプラニングはもちろんですが、クリエイティブにも仮説思考があるのでこれはある程度みんなができることですよね。ここからは、動かしたい人たちの多くの欲求や不満を解決しそうなものはどれかや、自身の経験から何を一番信じられるかや、コミュニケーションにした時に振り向かれうるものになりそうか等をぐるぐる考え続けていると、すっとひとつの道筋が見えてくる事がありますね

篠田
では、データ・クリエイティブを実践していこうとする中で、いま現場で実際に直面している課題はありますか?

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徳久
データを分析すると具体的な打ち手やインサイトがとてもよくわかるのだけれど、それをクリエイティブにつなごうとするとなかなかうまくいかないということがありますね。「素材がない」「スケジュールが間に合わない」といったことが結構多くて、結局既存のものを使って終わるということが多い。データで分かったことをスムーズにクリエイティブにつなげていく、ここのブリッジをつくっていかなくてはいけないなと思っています。
たとえばある流通企業がデジタル施策を実施するとなったとき、年に2回キャンペーンを展開すれば終わりということはなく、52週365日体制で何かやらなくてはならなくなっている。訴求素材も価格も、前日に変わるといった話が当たり前のなか、一方でクリエイティブの入稿審査は最大4、5営業日という縛りもあります。お店ごとに課題も異なるので、店舗ごとにどう変えていくか、あるいは顧客ターゲットごとにどうカスタマイズしていくのかとなったときに、人の手に負えない膨大な作業が発生してくる。こういった際にはうまくAI技術を導入して自動化を図っていくことも間違いなく必要になっていくだろうと思います。

茂呂
仮説や戦略を導いて、こういうコミュニケーションにして、こういうクリエイティブにしたらいいだろう、だからメディアプランもこうすればいい、従事者の仕組みもこう変えられる……といった理屈はぱっと出てくるんです。そこまでの流れは順調。でも最後はやっぱり、じゃあ具体的にどういうメディアプランにするか、どういうふうにクリエイティブを変えるか、PDCAはどう回していくかとなると、いま現在そこに向き合っている部署や営業にとってはこれまでやったことのないやり方なわけで、なかなか連動していけない。考え方としては素晴らしいですね、となっても、その先まではまだやり切れていないところが多いのが課題です。

◆異領域の人との「接触」で、自分たちの領域を広げていく

篠田
マーケティングに活用されるデータが、これまで以上に多種多様なものになり、同時にクリエイティブが果たす役割、活用されるメディア自体が新しいものに広がっていくなか、これからは社内だけではなく、社外のチームとの連携もより重要になってくると思います。そこで、この座談会の最後に、僕らは、これからどのような分野の方々と、どのように一緒にデータ・クリエイティブ、データドリブンマーケティングに取り組んでいくべきなのかという話ができればと思います。

徳久
ヘルスデータのクリエイティブ活用などは、今後重要度がますます高まっていくと思っています。

茂呂
僕はクリエイティブとテクノロジーをセットのような形で配信していくことは、どうしたって人間の限界を超えたことが起こるだろうと思うので、業界内だけではなくて、大学の研究機関など、徹底的にそこの高いレベルにいる人たちから学び、知見をためていくということが今は必要だと考えています。

篠田
僕は、ロボティクスとゲームに注目しています。ロボティクスが発展すると、従来のコミュニケーションの最後のアウトプット、例えば店舗体験をもう少しスマートにできる、ということは沢山あるだろうと思っています。そのロボティクスの活用のヒントが、仮想世界シミュレーションとしてのゲームにあると思います。というのもゲームは、3Dのオープンワールド型が最近増えていますが、そのような仮想環境化で、AIのキャラクターと人間が操作するプレイヤーキャラクターのインタラクションは、まさにロボットと人がどのように関わるべきかのシミュレーションと考えることもできると思います。つまり、ゲームの中では人間とAIが共創して課題解決していると考えることもできるのです。ですからそれをロボティクスに応用できれば、リアルワールドにおける人間の課題解決に活かせるのではないかと考えています。そういう意味で、ロボティクスとゲーム分野、それぞれのスペシャリストに、AIの問題点や、今後AIと人がどのように共創すべきなのか、などについて伺ってみたいですね。それがデータ・クリエイティブのヒントになると思います。

茂呂
面白いね!マーケティングとかコミュニケーションを僕らの従来の範疇だけでとらえるには、もう限界が来てるわけだよね。そういう異領域の人たちとどんどん接触していき、僕らの領域の現状を変え、可能性を広げていくことにつなげられたらいいですね。

篠田
僕らはふだん現場で試行錯誤している分、解決すべき企業課題を目の前にすると、こういうフレームは使えるなとか、こういうデータがあるなとか、すぐに落としどころが見えてしまうところがある。でも実はそれは、とてももったいないことかもしれないと思っています。一度そういうフレームを取っ払ってみて、従来のマーケティング・コミュニケーションという意味で行われてきた課題解決方法を超えたデータの活用方法について考えていく必要がある。

これからこの連載を通して、外部の方とどんどん「接触」していき、マーケティングにおける新たなデータやクリエイティブの在り方のヒントを得ていけたらと考えています。
今日はありがとうございました!

◆プロフィール

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茂呂 譲治(もろ じょうじ)
博報堂 アクティベーション企画局 局長代理

深いデジタル知見をベースにしながら、国内外複数企業の事業戦略から統合プランニング、クリエイティブにまで向き合う。データドリブン×クリエイティブ領域においては、グループ十数社と連携しながら、マーケティングコミュニケーション業務や新領域ビジネスを追求。このテーマでモデレーターを務めたadtech tokyo2017では人気セッション1位を獲得。「Cannes」をはじめ国内外多数受賞。

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徳久 真也(とくひさ しんや)
博報堂 データドリブンマーケテイング局 第一グループ グループマネジャー

2005年博報堂入社。流通・通信・飲料・食品・自動車・電気機器メーカー等、50社を超える幅広い得意先のマーケティング/事業戦略立案、統合コミュニケーション戦略立案、ブランディング、商品開発、キャンペーン開発業務等に従事。 2017年より現職。データを活用したマーケティング×メディア×クリエイティブ×ビジネスデザインの融合を目指し、新規事業開発に従事。

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篠田 裕之(しのだ ひろゆき)
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンビジネス開発センター

Python/R/SQLなど様々なプログラミング言語による、統計、機械学習を用いたビッグデータ解析全般を担当。特にDMPを用いたウェブマーケティング施策立案、および、データビジュアライズ業務に従事。

★こちらのコラムは博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました
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データ・クリエイティブ対談 キックオフ座談会(前編)
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