キャリジョたちの結婚事情 ~キモチ編~

◆専業主婦は憧れ。そしてファンタジー。

結婚そして寿退社。
第3回目のコラムにあったように、結婚して専業主婦になる女性が多い時代もあったが、現在は共働き世帯のほうが専業主婦世帯の約2倍もあり、専業主婦は減りつつある。(内閣府男女参画局HPより)
専業主婦というのは一見、古めかしくも感じるかもしれないが、実はそんなことはない。なんといまや若者には憧れの職業だ。

キャリジョ研の調査では「専業主婦になりたい」「一時的にでも専業主婦になりたい」「できれば専業主婦になりたい」という人を合計すると、全体の49%。女性の約5割が専業主婦に憧れていることが分かった。
しかし現実はどうだろう。実際に「結婚後に専業主婦になれる」と思っている人はたったの8%しかいない。今後の働き方として「ずっと仕事をしていると思う」というのが54%、「仕事を減らしたい」が30%、「仕事の仕方を工夫したい」が8%。それらを合わせると「仕事を続けるだろう」と思っているのは9割にも上る。(調査実施:2014年3月。調査方法:インターネット調査。調査対象者:23~34歳の子なし有職女性334名)

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専業主婦に憧れていても、働き続けなきゃいけない。
その理由のひとつはお金だ。特にいまの20代は、生活レベルや環境を変えたくない。安定・快適を重視する。だから結婚しようが子供を産もうが、今の生活レベルを続けるには、夫だけに頼らず自分も働かねばいけない。なぜなら夫のほうが収入が高いとは限らないし、妻のほうが安定した職に就いている場合もある。夫だって、会社との契約が切れるかもしれないし、病気になるかもしれないし、先に死ぬかもしれない。もしかしたら夫になる人はDVかもしれないし、離婚する可能性だって大いにある。ちなみに離婚率は「2.9組に1組」(2015年厚生労働省)と、誰もが他人事とは思えない。

キャリジョ研の世代分析に出てきた、将来が漠然と不安な「ヨット世代」「波止場世代」たち。(第3回コラム参照)。彼女たちは安定を求める世代がゆえに、結婚してすっぱり仕事をやめることは人生のリスクだと考える。バブル世代が「なんとかなる」という自信が漠然とあるように、キャリジョの20代30代は専業主婦になることは「なんとかならなそう」という不安が漠然とあるのだ。ゆえに専業主婦という職業とは、なりたくてもなれない、おとぎの国の姫様のようなファンタジーなのだ。かつて、シンデレラや眠れる森の美女は、イケメン金持ち王子と結婚することがゴールで、そこで物語が終わり、その後は(たぶん)幸せになったことだろうと思うが、キャリジョには結婚したあとの先の長~い人生物語が待っている。結婚後も安心して人生の続きを送りたい。切実な願いだ。

◆結婚は、人生のケジメじゃない!?

女性にとって結婚とは何だろう。
その昔。独身女性の年齢をクリスマスケーキに例えて、「24歳までにお嫁にいくべき」と言われた人もいる。結婚を機に会社を辞めて、専業主婦になることが正しい道のひとつとされた時代もあった。結婚とは、家も家族も生活も、人生が180度切り替わるケジメであり、新しい人生のスタート地点だっただろう。
しかし今。働く女性たちにとって、結婚はたしかに人生最大のイベントのひとつではあるが、その前後で生活もあまり変わらないので、結婚は必ずしも人生のケジメとは限らない。
結婚しても仕事は辞めない。仕事場では旧姓を名乗り続けるから、仕事上の自分はなにも変わらない。
結婚に失敗したくないから結婚前に同棲をしてみる人もいる。親だって娘の同棲を認める。そうすると、結婚前も後も変わらず同じ家にいて、暮らしもなにも変わらない。
子どもが生まれたら子育てをジジ&ババに手伝ってもらうために、実家に近い家に住む。これは「近居」といってここ数年で急増している住み方だ。そうすると物理的にも精神的にも「親離れ」をしない。そもそも親との関係性も、仕事も恋愛も相談するような「友達親子」だ。つまり、結婚しても結婚しなくても、女性の生活はほとんど変わらない事もあるのだ。

このようにキャリジョたちの結婚観が変わってきたからこそ、結婚にまつわる消費実態も変わってくる。
後編では、結婚にまつわる消費意識やトレンド予測をご紹介します!

illustration : Yurika Yoshida

<キャリジョたちの結婚事情 ~オカネ編~へ続く>

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キャリジョ研って?
「働く女性」(キャリジョ)をテーマに、博報堂および博報堂DYメディアパートナーズの女性マーケティングプラナー、プロモーションプラナー、メディアプロデューサーにて立ち上げた社内プロジェクト。
女性のトレンドを集めたインサイト分析や、有識者ヒアリング、女子会形式の定性調査、インターネットによる定量調査、クラスター調査などから「働く女性」を徹底的に分析。
その成果を社内外のナレッジとして共有し、日々のマーケティング・プランニング業務に生かしている。

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プロフィール
瀧川千智(たきがわちさと)
雑誌局

2005年博報堂入社。マーケティング職を8年経験したのち、博報堂DYメディアパートナーズの雑誌局へ異動。女性プロジェクト「キャリジョ研」のメンバー。好きな科目は日本史、好きな食べ物は漬け物、好きなニュースは芸能情報。