1月9日からオーストラリアでAFCアジアカップが開催されている。そこで、サッカー観戦のヒントを探るべく、2014年11月19日に行われた日本代表とオーストラリア代表の試合を、過去の試合と比較しながらスポーツデータを使って読み解いてみた。オーストラリア代表は、どのように攻撃を仕掛けていたか?アギーレジャパンの攻撃のポイントはどこか?スポーツデータで読み解くスペシャリスト データスタジアムのフットボール事業部アナリスト丸井剛氏に聞いた。

ヒント①:"パスの長さ"に注目
~ショートパスの割合が8.9%上昇したオーストラリア代表~

オーストラリア代表の戦い方の変化について丸井氏は、「体の大きな選手を前線に揃えるオーストラリア代表は、2011年当時は前線にロングボールを放り込むスタイルが主流でした。しかし、2014年の試合ではショートパス(※1)を細かくつなぐスタイルで攻撃を組み立てていたようです」と語る。ちなみに、オーストラリア代表が試合中に出したパスの割合を見ると、ロングパスが16.7%から8.3%へと低下している一方、ショートパスは46.4%から55.3%へと8.9%上昇。「結果として、細かくつないで日本代表のディフェンスを崩しにかかる戦術で来たという解釈もできます。もしかすると試合序盤、日本代表は『あれ?オーストラリアのロングパスが少ないのかな?』と感じたのかもしれません」(丸井氏)と分析した。

オーストラリア代表は、ショートパスをどのように使ったのか? 図1を見ると、前半は相手チームにボールを持って入られると危険なエリア(赤枠で表示)に多数ボールが入っている。この点について、丸井氏は「日本代表は慣れていない4-1-4-1のシステムをとっていたため、アンカー(※2)横のスペースがどうしても空きやすくなってしまったことが、要因として考えられます。しかし前半の終わりからシステムを4-2-3-1に変更することで、後半はこのエリアにボールが入りづらくなっています(図2)」と分析した。

9日から始まったAFCアジアカップで、日本代表が予選を勝ち抜き、決勝トーナメントでオーストラリア代表と対戦することになった際には、オーストラリア代表の “パスの長さ”にも着目。もし、ショートパスを多用してくる場合には、図中の赤枠で囲んだエリアをどの程度活用してくるか?それとも、全く新しい攻撃か?ぜひ、注目してみたい。

※1 ショートパスは0から15m、ロングパスが30m以上。ミドルパスはその間を示す。
※2 守備的役割のMF

ヒント②:"空中戦とセカンドボール"に注目
~ペナルティエリア内の空中戦は勝率0%。
しかし、セカンドボールの獲得数ではオーストラリア代表を圧倒~

ゲームの行方を左右する空中戦。空中戦と言えば、“ポーン”と宙に上がったボールを空中で競り合うサッカーで最も激しいシーンの一つ。2014年の空中戦の勝率を見比べると(表1)、日本代表はオーストラリア代表に比べて圧倒的に低い(実際、日本のペナルティエリア内では全てオーストラリア代表が獲得)。しかし、「空中戦の後のボールの行方(セカンドボール)を見ると、日本代表の獲得数は決して少なくはない」と丸井氏は語る。空中戦後のボールの獲得数では、日本代表は13回、オーストラリア代表は6回ということから見ても、日本代表はセカンドボールをしっかりと拾っているようだ。ただ、筆者は、どうしてもセカンドボールもオーストラリア代表が優勢だったような印象を受けたが・・・。それについて丸井氏に聞くと「相手が空中戦後のセカンドボールを、そのままシュートに持ち込むなど、“冷やっ”とした場面が見られたのが、セカンドボールでも競り負けているという印象につながっている。セカンドボールの獲得数はオーストラリア代表の方が少ないものの、前半だけでもシュートに2回持ち込んでいる。これにより、オーストラリア代表に競り負けているという印象を与えてしまったのではないか?」と分析してくれた。

なるほど・・・データで見ると、また違った角度から試合が見えてくる。

ヒント③:"本田圭佑選手のボールタッチ"に注目
~シュート前の5プレーから浮かび上がる、日本のキーマン~

2014年のオーストラリア戦で、日本代表が放ったシュートは14本。そこに至るまでのラスト5プレーでのパス回数を見ると(表2)、本田選手と酒井高徳選手の6回がチームでトップ。本田選手は、その6回のパスを全て成功させている。
この点から見ても、本田選手が前線でボールを持った時は、シュートにつながる可能性が高いようだ。

本田選手がボールを持った後、日本代表のチャンスにつながりやすいことを頭の片隅において、日本代表戦を見てほしい。

(取材:博報堂DYメディアパートナーズ 広報室 / 協力:データスタジアム)

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