レポート
セミナー・フォーラム
獲得から育成まで『顧客LTVを最大化』する実践的マーケティング手法(博報堂Consulactionセミナーより)
REPORT

参考 → 博報堂Consulaction HP

獲得から育成まで『顧客LTVを最大化』する実践的マーケティング手法

いよいよ加速するデジタル化の中で蓄積された膨大な顧客データを企業はどのように活用していけばいいのでしょうか。
また、自社の顧客データと外部の生活者データをどのように連携させていけばいいのでしょうか。
このセミナーでは、「顧客LTVを最大化する」ことをゴールにした場合の、マーケティングデータ活用の最新手法や事例をご紹介しました。

4%e4%ba%ba

左から
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局 デジタル業務推進部 部長 天石 直
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局 オウンドメディア企画制作グループ
インタラクティブプロデューサー 南 奈津子
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 マーケティングシステム部
インタラクティブプロデューサー 吉田 敬
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディア マーケティングセンター
データマネジメントプラットフォーム部 部長 柴田 貞規

■「4つの分断」の克服が必要

顧客のLTV(ライフタイムバリュー/生涯価値)を最大化するマーケティング戦略とはどのようなものでしょうか。
これまでの一般的なマーケティングモデルでは、ブランドマーケティングとCRMは分断されていました。顧客LTVを最大化するためには、その2つのプロセスをつなげ、マーケティングサイクルを循環させる必要があります。線形のマーケティングモデルから、顧客を「見つける」「連れてくる」「育てる」「見極める」というサイクルを回しながら進化させていくマーケティングモデルへ──。それを実現するためには、プライベート(自社)DMPとパブリックDMPの連携が必須となります。
博報堂が展開するパブリックDMPである「生活者DMP」は、生活者意識データ、購買データ、オンラインメディアデータ。屋外行動ログ、テレビ視聴ログ、オンライン行動ログなどを統合して、世の中の生活者の行動をまるごと理解することを可能にするプラットフォームです。
さて、顧客LTVを最大化するためには以下の4つの「分断」を克服しなければなりません。

【課題①】データの分断
外部の生活者データと自社の顧客データが分断されている。

【課題②】未顧客と既顧客の分断
見込み顧客を顧客化する施策と、すでに顧客となった人たちを育成する施策が分断されている。

【課題③】システムの分断
マーケティングのプロセスごとにシステムが個別に導入されていて、それぞれのシステムが分断されている。

【課題④】PDCAの分断
広告運用におけるPDCAとCRM運用におけるPDCAとが分断されている。
これらの4つの分断を克服して、マーケティング活動全体を最適化する必要があります。

■顧客LTVを最大化するための3つの戦略

博報堂は、「HAKUHODO Advanced CRM Program」というソリューションを先日リリースしました。rink.jpg
これは、データやテクノロジーを活用して顧客を深く理解し、顧客のニーズに合った情報やサービスを提供することで顧客との絆を生み出し、顧客LTVを最大化させるソリューションです。このソリューションが統合的に実現する戦略は、次の4つです。

①マーケティング戦略
②チャネル戦略
③マーケティングシステム戦略
④データ戦略

従来のCRMは、一般に、インセンティブを提供することでリピート購買やクロスセル、アップセルを目指す取り組みでした。しかし、キャンペーンの頻度が上がったり、インセンティブが過剰になっていったりする中で、結果として顧客LTVの低下を招いていました。ほかにも、従来の方法には以下のような問題がありました。

●何が最適なCRMツールかがわからない。
●システムやツールがばらばらに立ち上がりばらばらに運用されている。
●デジタル広告とCRMとリアルな施策とが分断している。
●マーケティング戦略とCRM戦略が分断、もしくは対立している。
●自社の顧客データのみに依存している。

それらの問題を解決して、顧客LTVを最大化するのが博報堂の「Advanced CRM」です。

crmprogram-2

このソリューションを使った戦略が次の3つです。

①オウンドメディアの新しい視点での構築と運用
②自社データを最大活用するマーケティングプラットフォーム整備
③生活者データと自社データの連携がもたらすマーケティングシナジー

では、これらを一つずつ見ていくことにしましょう。

  戦略1──オウンドメディアの新しい視点での構築と運用 

現在のオウンド(自社)メディアの課題として、次のような点が挙げられます。

●手段が目的化してしまい、運用評価がページビューやユニークユーザー数になっている。
●スマホ、アプリなどの展開をしているが、その効果が把握できていない。
●ターゲットが求めるコンテンツを継続的に配信できていない。
●コンテンツを発信してもアクセスが少ない。

オウンドメディアは従来、PCのブラウザで見るウェブサイトのことを意味していました。しかし、デジタルツールやメディアが多様化している現在、デジタル上のあらゆるタッチポイントでオウンドメディアの展開は可能になっています。スマホアプリ、ソーシャルメディア、メールマガジン、オンライン店舗、リアル店舗などです。それらのタッチポイントのすべてで顧客データを捕捉できるようになっていることを考えれば、オウンドメディアがマーケティング基盤の中心となりうると言っていいいでしょう。オウンドメディアは、顧客との関係構築におけるいわば「主戦場」なのです。
顧客LTV最大化をゴールとする場合、オウンドメディア戦略には業種ごとに次のような展開のパターンが考えられます。

①耐久財メーカー(自動車、住宅、家電など)
ブランディング中心のオウンドメディアから、顧客育成のマーケティング基盤としてのオウンドメディアへ。
→「運用型顧客育成プラットフォーム」としてのオウンドメディア

②消費財メーカー(食品、飲料、生活雑貨など)
コンテンツマーケティングなどによって、ブランドへの好意を獲得しファン化を狙う。
→「プレストアでファン化を目指すコミュニケーションプラットフォーム」としてのオウンドメディア

③小売流通 スーパー、量販店、百貨店など
オンラインと実店舗を連動させ、シームレスな購買行動を実現させる。
→「シームレスな購買体験のプラットフォーム」としてのオウンドメディア

④製造小売 外食・衣料など
店舗検索、来店ポイント、クーポンなどによって、来店前のアクティブ化を実現する。
→「売り場誘導のプラットフォーム」としてのオウンドメディア

⑤EC
購買履歴に応じたリコメンドや、顧客の趣味嗜好に応じたワントゥワンマーケティングを実現する。
→「PDCAを高速に回し、売上拡大を実現するビジネス基盤プラットフォーム」としてのオウンドメディア

⑥サービス(金融、保険、教育など)
利用目的に応じて提供サービスの機能性を訴求する。
→「顧客抱え込みのプラットフォーム」としてのオウンドメディア

顧客LTV最大化をゴールとした場合、オウンドメディア戦略の開発・実装・運用にはどのようなアプローチがありうるのでしょうか。その具体的なアプローチとして、以下の6点を挙げることができます。

①ゴール定義
ビジネス課題、ブランド価値の両面から到達すべきゴールを定義する。

②現状分析・課題抽出
現状とゴールの間のギャップを抽出するために、さまざまなアプローチで現状分析を行う。

③戦略策定
現状分析をもとに、ターゲットのペルソナを定義し、カスタマージャーニーを描く。

④マーケティングシステム構築・運用
データドリブンマーケティングを実現するシステム環境を整備し、オウンドメディアと連携させる。

⑤デジタルエクスペリエンス設計・運用
戦略に沿ったコンテンツ、体験装置、体験導線を開発し運用する。

⑥PDCA運用
顧客のデジタル体験のデータを集め、体験の内容を改善していく。

顧客との接点を最大化し、顧客との関係値を最適化するためのオウンドメディアの活用は、マーケティングにおける最重要課題の1つと言っていいでしょう。

 戦略2──自社データを最大活用するマーケティングプラットフォーム整備

マーケティングシステムを導入したり、整備したりする場合、ベンダー各社からの提案情報が大量にあふれているために、自社にとって何が正しい選択かがわからないというケースがよくあります。また、「デジタルマーケティング戦略」「システム構築」「データ運用」のそれぞれのフェーズが乖離してしまって、プロジェクトが失敗してしまうこともあります。
マーケティングシステムを整備するにあたっては、システム設計上のみの合理性、あるいは日々の業務のみに偏ったシステムにならないよう、導入前にマーケティング戦略と導入シナリオをしっかりと策定しなければなりません。
私たちは、「マーケティング要件」を重視する独自のアプローチでシステム導入を支援しています。
まず開発時には、マーケティング要件の策定に必要なチーム編成を行います。情報システム部門だけでなく、経営企画、販促部門等の関係する部門から参加を募りタスクフォースを形成して頂きます。そこで、それぞれが保有するデータを共有し、現状理解を深め、顧客データ活用マーケティングのToBe像を策定します。このチームが、そのまま統合デジタルマーケティングの推進主体へと進化していくことになります。
運用時には、事業、マーケティング戦略、施策の3レイヤーを個別に管理しながら連携させ、目標達成までの進捗確認、課題抽出から改善までのPDCA設計が重要になります。
以上のようなアプローチでマーケティング要件定義を進めていく上で、マーケティングシステムの要となるプライベートDMPの役割を正確に理解しておく必要があります。自社データの活用目的は様々ですが、プライベートDMPの役割は大きく以下3つあります。

①データの集約(データの取得設計)
②顧客の可視化(データ分析要件)
③具体的な施策の実施(コミュニケーション施策、社内情報支援)

この3つの役割についてマーケティング要件定義をしっかり行うことで、顧客データ活用によるマーケティング戦略の一本化を実現するマーケティングプラットフォームを構築することができます。
ただし、これらの役割をすべて実現するためには、プライベートDMPをハブにした外部システム連携が必要になります。
そのため、システム要件定義では、プライベートDMPと外部システムの連携を以下3つの観点で検討していく必要があります。

①分析環境の統合(パブリックDMP、BIツール、データマイニングツールとの連携)
自社保有データと外部データを掛け合わせた統合データ分析環境と顧客ライフサイクル管理。

②クロスチャネルキャンペーン環境の構築(マーケティング・オートメーションツールとの連携)
プライベートDMPでセグメンテーションした顧客に対して、全ての顧客接点での情報配信を自動実行。

③営業活動サポート機能の構築(営業支援システムとの連携)
WEB行動履歴データ、顧客インサイト情報などを営業支援システムに連携し、商談に有効な情報を営業スタッフに提供。

以上の視点を踏まえ、プライベートDMPを導入する際に欠かせない3つのポイントを最後におさらいします。

①システム開発に入る前にマーケティング要件を明確にする。
②顧客データ活用マーケティング推進のために必要なデータを整備する。
③すべての顧客接点において統合化・自動化されたキャンペーン管理を実現するシステム連携を検討する。

 戦略3──生活者データと自社データの連携がもたらすマーケティングシナジー

生活者が企業と接するのは、日常生活中のほんの一場面でのことです。生活者を知るには、多面的に、深く、かつリアルタイムにその動きを捉えなければなりません。それを可能とするさまざまなツールや方法論を私たちは持っています。例えば、次のようなものです。

●Querida2.0
●Audience-One
●POS-AD
●ASTRARS
●CROSSWORD TARGETING
●テレビ視聴ログ
●Yahoo!DMPとのデータ連携

これらを使って、どのようにデータドリブンマーケティングを実践したかをご紹介します。商品開発力に強みを持つ化粧品会社A社の事例です。

A社はこれまで、テレビCMの力と店頭接客力で顧客を獲得するモデルを長い間続けてきました。しかし、2014年には売上が4.5%も減ってしまいました。その背景には、顧客単価の低下という問題がありました。これをマーケティング視点で捉えると、顧客単価の高い層を狙えていない、つまり「ターゲット戦略がずれている」ということになります。

その問題を解決するために、まずは顧客を再定義し、適切な誘導策を作る作業を行いました。化粧品市場の意識調査データとA社オリジナルDMPを連携させる仕組みを作るというのがその作業の具体的な内容で、そこで活躍したのが「Querida」です。これによって、「精緻な戦略」と「効果的な実行」をシームレスにつなぐことを目指しました。

また、調査データを精査し、「単価ポテンシャル×ブランド親和性」を軸にターゲット層を抽出し、3タイプのペルソナを作成して、それをテレビ広告に応用しました。いわば、「データドリブンなマスメディアプラニング」を実現させたわけです。

次に、デジタル施策の最適化を進めました。私たちが着目したのは、プロモーションの初期段階におけるマスメディア(テレビCM)への接触頻度によってブランドとの距離が変わってくるという現象です。マスメディア接触頻度によって、ターゲットをさらに詳細に分類し、メディア視聴特徴別に11のメッセージングシナリオをつくり、デジタルメディアで配信しました。ここでもQueridaが力を発揮しています。このシームレスな戦略によって、高い広告効果が生まれました。

さらに、オウンドメディアの訪問者の分析も行いました。訪問者のウェブ上の行動をスコアリングし、ブランドとの関係性の「HOT度」を判定し、育成のためのコミュニケーションを実施しました。そのカスタマージャーニー上で態度変容にとくに効果的であったメディアを分析し、メディア戦略をさらに精緻化しました。

最後に、これまでの論点をまとめたいと思います。顧客LTVを最大化するために必要なのは、以下のようなポイントです。

①複数の戦略・施策を統合して管理する仕組み・体制
②ゴールから逆算するオウンドメディア戦略
③マーケティングのためのシステム構築
④自社データと生活者データの連動とその活用ナレッジの保有

これらを実現し、顧客との深く、長期的な関係を築いていくために、ぜひ私たちの力をご活用ください。

 

■講師プロフィール
amaishi.jpg
■天石 直(あまいし なお)
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局 デジタル業務推進部 部長

営業職として自動車、金融、システム、ゲームアプリの各クライアントにおいて、オンライン、オフライン領域含めた幅広いマーケティング業務に従事。デジタル業務推進部に異動後、博報堂全社のクライアントに対するデジタルマーケティング領域の業務コーディネートおよびプロデュース業務に従事。

minami.jpg
■南 奈津子(みなみ なつこ)
博報堂 生活者データマネジメントプラットフォーム局
オウンドメディア企画制作グループ インタラクティブプロデューサー

営業職とオンライン、オフライン領域含めた幅広いマーケティング業務に従事。オウンドメディア企画制作グループに異動後、オウンドメディアを軸とした統合コミュニケーションの戦略立案・プロデュースに従事。

yoshida.jpg
■吉田 敬(よしだ たかし)
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局 マーケティングシステム部
インタラクティブプロデューサー

流通/小売、自動車、消費財メーカー、通信/メディア、保険等様々な業種を対象にデジタル改革構想(オムニチャネル化戦略)及び統合デジタルマーケティング戦略を策定。そして、戦略実現のためのマーケティングプラットフォーム導入、オウンドメディア再構築、PDCAスキーム策定(マーケティング業務プロセス改善)等の実行フェーズまで従事。

shibata.jpg
■柴田 貞規(しばた さだのり)
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンメディアマーケティングセンター
データマネジメントプラットフォーム部 部長
(兼)株式会社Handy Marketing取締役CMO

1996年からデジタル関連業務をスタート。ウェブ制作、プログラム開発などを現場で行い、2000年からコンテンツのプロデュース業務及びコンテンツ編成業務を担当。その後、サッカークラブのウェブビジネスプロデュースや、テレビ機器への映画・コンテンツ配信の企画等を担当。2007年に博報堂DYメディアパートナーズに入社し、リスティング広告、アフィリエイト広告、DSPの責任者を担当。
2013年期初よりDMP担当の責任者となり、DMP開発、DMPを使ったサービス開発などを推進。博報堂DYグループのDMP領域の対応責任者(現任)。4月1日より、ヤフー株式会社との合弁である株式会社HandyMarketingの立ち上げに参画し、設立と同時にCMOに就任。現在に至る。

関連ソリューションリンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
PAGE TOP