レポート
アドウィーク・アジア2017
広告会社とコンサル会社、AIとテレビ、エフィー賞、等様々なテーマで多数の社員が登壇 ~アドバタイジングウィーク・アジア2017(博報堂DYグループセミナー)より
REPORT

2017年5月29日~6月1日、第2回となるアドバタイジングウィーク・アジアが東京・六本木ミッドタウンで開催されました。今回も広告、マーケティング、テクノロジーの各分野で活躍する第一人者が世界中から集結。モバイル・マーケティングや人工知能の未来など、刺激的なトピックについて議論を展開しました。
本稿では、博報堂・博報堂DYメディアパートナーズの社員が登壇したセッション『デジタル領域(データ戦略)における広告会社とコンサル会社の協業と競争』『AIは、テレビと視聴者のコミュニケーションをどう拡張するか』『日本はどうやって、エフィー賞を獲れるのか?』をご紹介します。

■デジタル領域(データ戦略)における広告会社とコンサル会社の協業と競争

●パネリスト
安藤 元博:博報堂・博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員
鈴木 禎久:電通デジタル 代表取締役社長
黒川 順一郎:アクセンチュア デジタルコンサルティング本部 アクセンチュアインタラクティブ日本統括 マネジングディレクター
松永 エリック・匡史 :PwCコンサルティング PwCデジタルサービス日本統括 パートナー
●モデレーター
笠松 良彦 :イグナイト 代表取締役社長

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「コンサル会社と広告会社の違いについて、正直なところ、よくわからないという人が多いと思います。そもそもお互いにお互いをどう思っているのでしょうか」という、モデレーターの笠松氏の問いかけに、「表面上、両者は似通ってきている。互いにとって何が違うのかという問いは重要なテーマです」と答えた安藤執行役員。「デジタルトランスフォーメーションの世界の中で、マーケティングが経営に近いところに位置するようになってきました。マーケティングの本質には生活者価値をどう作るかということがあり、それが経営の中心に位置するようになった。コンサルと広告会社の生活者発想の領域は以前にも増して重なってきたわけです」と、その理由を解説しました。鈴木氏も「デジタルトランスフォーメーションによって、マーケティングにお互いが向かっているので、ここは確実に重なり合います」と言い、「そこには競合もあるでしょうし、反対に一緒にできることもあるはずです」と付け加えました。コンサル側の黒川氏も「コンサルはメディアを扱えないので、そこは広告会社にお願いすることも実際にあります。広告会社とは得意領域が違うが、少なくともバーサス(対立)の関係にはないですね」と指摘。松永氏は「バーサス関係どころか、広告会社に学ぶことが多いと思っています」と、デジタル領域に対するコンサル会社の問題意識を語りました。

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一方、コンサル会社の強みについて、安藤執行役員は「コンサルは仕組みを作るのがうまいですね。課題の解決に向けて、こうするべきという型があり、スピーディーでソリッドな対応が得意です。広告会社は案件ごとに創造的に、手づくりで対応するようなところがありますが、デジタルトランスフォーメーションの場面では、それだけでは足りない面もある」と発言。それに対して黒川氏は「実際には型のみで対応しているわけではなく、ただ、過去の成功事例はわかりやすいので、使っています」と応じ、「クリエイティビリティということでは、広告会社に一日の長があります」としました。

「経営層が求める再現可能性について、メソッドや方程式があると説明しやすく便利です。その点はコンサル会社が長けています。しかし、クリエイティビリティには再現可能性がありませんね」というモデレーターの発言に、松永氏は「経営コンサルにおいて、大切なキーワードになっているのは非連続的な変化への対応です。そこでは今までのメソッドは通用せず、むしろ弊害になっています」と、現状の課題を語りました。安藤執行役員は「その点では、私たちが目ざしているところは一緒ですね」と応じました。

これからやりたいことは?という質問に対して、「共闘したい」と回答した安藤執行役員。「生活者価値をどのように作るかということを、日本の企業全体が本気で考え始めています。それを経営の真ん中に置き、組織も形成するようになってきた。そうした動きを進めようという意志において、コンサルも広告会社もありません。そういう意味では、日本の企業社会やマーケティングのあるべき姿を実現するために共闘したいと思います」と説明しました。

この「共闘」というキーワードについて、松永氏は「企業間の共闘だけではなく、むしろ個人同士ですね」と語り、安藤執行役員も鈴木氏も「最後は人というのはその通り」「まずは私たち自身のような、個人同士が理解しあい、関係を深めていくことも大事ですね」と答えて、セッションを終えました。

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◆プロフィール

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安藤 元博
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員

1988年博報堂入社。以来、数多くの企業の事業/商品開発、統合コミュニケーション開発、グローバルブランディングに従事。ACC(グランプリ)、Asian Marketing Effctivenss(Best Integrated Marketing Campaign)他受賞多数。ACCマーケティングエフェクティブネス/カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル等の審査員を歴任。著書『マーケティング立国ニッポンへ―デジタル時代、再生のカギはCMO機能』(共著)等。東京大学大学院・学際情報学府修了(社会情報学)。

■AIは、テレビと視聴者のコミュニケーションをどう拡張するか

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●パネリスト
藤原 敬三 :マイクロソフトディベロップメント シニアプログラムマネージャー A.I.&リサーチ
中川 卓也 :テレビ朝日 総合ビジネス局 デジタル事業センター
薄井 司 :エム・データ 取締役
●モデレーター
森永 真弓 :博報堂DYメディアパートナーズ メディア・コンテンツビジネスセンター

テレビ朝日では現在、AIの中でも特に会話型AI(Chat Bot)を活用したコミュニケーション施策、「あさこ(仮)プロジェクト」の実証実験を行っています。セミナーでは、当プロジェクトの実証実験の現状や課題、テレビとAIの関係やAIの機能などが紹介されました。

モデレーターを務めた森永は、テレビに関わる会話型AIの働きや役割として、「番組制作自体に活用する」、「番組の視聴体験をリッチにする」、「今週と来週の放送など放送と放送との間を埋める」の3つをあげました。「今回のプロジェクトでは、どういう働きを求めていますか」と問いかけたのに対して、中川氏は「放送と放送との間を埋めるコミュニケーションに活用するもの」と答え、その理由を「これまでは、番組・コンテンツファンとは特定の曜日・時間での一過性のつながりしかありませんでした。いわばフロー型です。それに対してこれから大切なのはストック型。常にコミュニケーションできる状態を作ることが必要で、ここにAIを働かせたいと考えています」と説明しました。「人間のオペレーターでは視聴者とは1対1でしか対応できませんが、AIなら何百人もの視聴者と同時に会話ができますからね」と、AIを利用する意味を森永が解説。視聴者とのコミュニケーションについて聞かれた中川氏は、「友達と会話するような、ゆるいやり取りの中に、コンテンツ情報を押しつけにならないように織り込むことを考えています」と答えました。こうしたコミュニケーションを可能にするために、プロジェクトでは、会話型AIエンジンとしてマイクロソフト社の「りんな」を用い、テレビに詳しいキャラクターになるための補強データとして、エム・データ社の「TVメタデータ」も活用しています。

プロジェクトの実用化の見通しや課題について、森永が質問したところ、藤原氏は「テレビ朝日ファンやテレビ朝日の番組ファンに限らず、総体としてのコンテンツファンとゆるくつながるために、AIのキャラクターや能力はどうあるべきかをさらに追求する必要があります」と回答。薄井氏は「テレビ局のAIだからこその特徴を出すために、他では出来ないテレビ局なら使えるデータをもっと集めて、活用する必要があります」とし、中川氏も「テレビ局にあるデータ、例えば字幕データなどをもっとうまく使っていけるようになりたいですね」と答えました。こうした課題を踏まえて、中川氏は「テレビ局のキャラクターとして、『あさこ』を世の中に出すには、さらに精度を上げる必要があります」と、今後の見通しを明らかにしました。

◆プロフィール

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森永 真弓
博報堂DYメディアパートナーズ メディアコンテンツビジネスセンター メディア・コンテンツプロデューサー

通信会社を経て博報堂に入社し現在に至る。 コンテンツやコミュニケーションの名脇役としてのデジタル活用を構想構築する裏方請負人。 テクノロジー、ネットヘビーユーザー、オタク文化研究などをテーマにしたメディア出演や執筆活動も行っている。自称「なけなしの精神力でコミュ障を打開する引きこもらない方のオタク」。 WOMマーケティング協議会理事。共著に「グルメサイトで★★★(ホシ3つ)の店は、本当に美味しいのか」(マガジンハウス)がある。

■日本はどうやって、エフィー賞を獲れるのか?

●パネリスト
淮田 哲哉 :博報堂 データドリブンマーケティング局グローバルデータマーケティンググループ グループマネージャー
サイード・シュナイダー: ジオメトリー・グローバル・ジャパン シニア・ストラテジー・プランニング・ディレクター
●モデレーター
松浦 良高 :マッキャンエリクソン プランニング本部長、エグゼクティブ・プランニング・ディレクター

エフィー賞はアメリカ生まれで49年の歴史があり、48のプログラムがあるグローバルな賞です。セッションでは、アジア太平洋地域を対象としたAPACエフィー賞の審査員経験のある3人のパネラーが、賞の価値や受賞のポイントなどを語り合いました。

淮田は、エフィー賞が重要視されるようになってきた理由について、「エフィー賞が評価するマーケティングエフェクティブネスが、時代のトレンドに合致するから」と指摘。「すべてのタッチポイントで、デジタルやデバイス、データ、環境といったものが変わる中で、クリエイティブをつくってメディアで流すという従来のコミュニケーションもまた、変わってきています。今では新しいコミュニケーションとビジネスをセットでつくることがスタンダードになりつつあります」と解説しました。松浦氏は「カンヌライオンズと並んで、エフィー賞は、グローバルエージェンシーにとってスタンダードな賞になっています」と評価。シュナイダー氏は「カンヌライオンズも当然素晴らしい賞ですが、エフィー賞はクリエイティブだけでなく、明確なアイデアや成果・実績を求められる点が違います」と、その価値を語りました。

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エフィー賞を獲得するために、淮田は「残念ながらエフィー賞は日本ではあまり知られていないので、まずはよく知ることです」とアドバイス。その上で「チャレンジ・目的、インサイト・戦略的アイデア、アイデアの具現化、成果の4つの審査基準について、ひとつひとつを深く突き詰めることが重要です」と、審査員を務めた経験から受賞のポイントを語りました。松浦氏も「4つの審査基準について、クリアに説明できると受賞率は高くなります。また、エントリー時期が近くなってから考えるのではなく、日頃から審査基準については考えてほしいですね」と言い、シュナイダー氏は「審査員は一度に数多くのエントリーに目を通さなければならないので、アイデアと成果を短く簡潔に表現することが重要です。また、エフィー賞は成果を検証する機会を与えてくれます。その後の戦略に役立てることができる点においてもクライアントにとって有益な賞であることを理解してもらうことを忘れてはなりません」と指摘しました。

最後に淮田は「日本のマーケティングワークのレベルは高いので、エフィー賞は高い壁ではないはずです。応募することで自分を高める機会にもなるので、積極的にチャレンジしてほしいですね」と、エールを送りました。

◆プロフィール

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淮田 哲哉
博報堂データドリブンマーケティング局グローバルデータマーケティンググループグループマネージャー

デジタルやデータを活用したマーケティング領域の戦略プラニング、マネジメント、事業開発、グローバル展開を主に担当。自動車、IT、精密機器、家電、EC、化粧品業界を中心に、デジタルシフト、データ分析、DMP活用、組織開発といった企業のマーケティング高度化のサポートを行う。アジア・中国の海外業務にも精通。APACエフィー2016審査員。

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