レポート
アドウィーク・アジア2016
【電通総研×メディア環境研究所】日本の若者のモバイルコミュニケーション最前線(アドバタイジングウィーク・アジア2016より)
REPORT

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2016年5月30日~6月2日に東京・六本木で、アジア初となるアドバタイジングウィーク・アジアが開催されました。業界の最先端を走るキーパーソンが登壇し、ブランド、メディア、マーケティング、テクノロジーや文化について熱い議論が交わされました。本セッションでは電通総研とメディア環境研究所が、各々の最新メディア行動研究の結果をもとに、独自の切り口で若者のモバイルコミュニケーションの最新トレンドについて紹介しました。(以下敬称略)

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■若者のスマートフォンの利用実態とは?

奥:本セッションでは、電通総研、メディア環境研究所がさまざまなアプローチで行ってきた、若者のモバイルコミュニケーションの実態に関する調査分析結果をご紹介します。皆様の企業やコミュニケーションにおける施策のヒントになればと思います。

吉川:メディア環境研究所では10年にわたりメディア定点調査を続けてきました。この10年、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、パソコン、スマートフォン(以下スマホ)、タブレット端末などのメディア接触時間は全体で約50分増加していますが、この中で唯一タブレット端末と携帯電話・スマホ、つまりモバイルだけが増加し続けており、ほかは減少傾向にあります。こうした傾向を我々は「モバイルシフト」が起きているととらえていて、この傾向がもっとも顕著なのが10代20代の若者です。時間で見てもシェアで見ても明らかにモバイルがそれ以外をリードしている。今後はマス対ネットではなく、モバイル対それ以外という見方が必要だと思います。

<資料①「メディア総接触時間の時系列推移:東京」(1日あたり・週平均)>
(博報堂DYメディアパートナーズ 「メディア定点調査2016」時系列分析より)

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美和:続いてスマホユーザーベースでのログ解析を見てみます。
時間帯別の利用率を見ると、朝8時には6割を超え12時くらいに3分の2ほど、夕方にかけて少し下がり夜にまた6割を超えます。コミュニケーション系通話、ソーシャルメディア、動画共有など、利用者は一度に2、3のアプリを切り替えて使っていることがわかります。1日の起動回数は全体で約50回。特に多いのが10代女性で65回です。1日の起動時間は全体では115分ですが、10代20代の女性では150分近い。起動回数のシェアが多いインスタントメッセンジャーやソーシャルメディアは、利用時間ではそこまでシェアを高めていません。つまり短い時間内にそれだけ起動とシャットダウンを繰り返しているということ。とても「せわしない」ことがわかります。

<資料②「主なアプリ分野利用1回あたりの利用時間」>
(インテージi-SSPモバイルパネル 2015年7月利用ログデータより電通総研作成)

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加藤:メディア環境研究所では、定性調査として、実際のメディア行動を把握するために生活者の起床から就寝までをビデオ記録するメディアライフ密着調査も行っているのですが、ここでは首都圏在住一人暮らしの26歳女性会社員の1日を紹介したいと思います。朝、スマホのアラームを止めたその手でフェイスブックを見ます。リビングに行き、テレビの情報番組とスマホのニュースを同時に見ます。通勤時間もファッションを検索したりラインのやり取りをするなどスマホを利用。お昼にはランチの写真をインスタグラムに投稿します。夕方、帰宅する電車内で夕食のレシピを検索し、ゲーム、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターなどを次々と起動。帰宅後しばらく忙しく動きますが、この後2時間ほどソファーの横にスマホを置いてゆったりテレビを見ます。そしてデザートを食べて就寝。これが彼女の1日です。 ここからわかるのは、情報接触の緩急が非常に激しいということ。情報接触のスピードが非常に早くせわしない時と非常にゆっくりな時がある。スマホが登場して以来情報量がどんどん増えていく中、自分で情報接触のスピードを調整し情報環境を最適化したいという欲求が生活者の中に生まれているのではないでしょうか。そしてこれからはこうした情報欲求の緩急の幅がますます拡大するのではないかと考えています。

設樂:次に、ビジュアルコミュニケーションについてご紹介します。
若者のコミュニケーションの中心は、スマホのカメラ機能やアプリの発展にともない、言葉を介するリテラルコミュニケーションから写真や動画を介したビジュアルコミュニケーションに移行してきました。この傾向はハロウィンやカラーランなどSNS映えするリアルイベントの隆盛も支えています。思い出のために写真を撮るのではなく写真映えする思い出がつくりたい、そしてSNSでアピールしたいというのがモチベーションになっている。SNS映えするかどうかが若者の新たな行動指標になっています。 ビジュアルコミュニケーションの特徴の一つに「シミュラークル」があります。シミュラークルとはフランス語で模倣・コピーなどを意味し、誰が最初に始めたのか、オリジナルがどこにあるのかわからない写真パターンなどがSNS上でどんどん真似されていくという現象です。SNS映えする写真を見て、自分もこうありたい、こんな体験をしてみたいといった憧れや欲望をユーザー同士、喚起し合う新たな情報伝達モデルです。注目すべき点は、その対象が、モノの所有ではなくコトの共有であること。誰もが体験を可視化して発信できることで生まれたシミュラークル現象は、若者のインサイトを読み解くうえでも重要なポイントだと思います。

■若者とスマホ。そして広告の可能性とは

奥:改めて、若者とスマホについては何が言えるでしょうか。

吉川:とある20代男子大学生の写真を見て、わかったことを紹介します。ベッドに寝転んだまま手にはスマホ、42型テレビではドラマのDVDが流れていて、さらにタブレットで映画を見ている。若い世代に典型的な、同時多発的で多様なメディア接触の実態を象徴的に表しています。スマホで素早くメッセージのやり取りも行っており、そういった処理能力がとても高いのではないでしょうか。

美和:それから10代の子が動画共有サイトを視聴するのは寝る前が一番多いというデータがあります。寝る前の時間帯は、若者にとって視聴のゴールデンタイムなんですね。

加藤:そういう意味で、寝る前の時間というのは案外開発が進んでいない気がします。テレビでも動画サイトでも生活者はいろいろ見ていますが、プレイヤーはきちんとコンテンツを供給できているのかが気になりますね。

設樂:発信者としての若者は視聴のゴールデンタイムをよく理解していると言えそうです。より多く「いいね」をもらうために、通勤通学時やランチタイム、就寝前を狙って投稿していますから。

奥:モバイルコミュニケーションにおける広告の可能性についてはどうでしょうか。

加藤:メディアライフ密着調査の中で10代の子がインスタグラムを見ているところがあるのですが,相当速いスピードです。広告も相当強力な一枚絵で攻めなければ、このスピード感に乗れない気がします。

吉川:スマホを持ってから消費を決定するまでのスピードも速いですよね。消費スピード、さらには生活スピード全体を速めている気がします。

美和:平均的なスマホユーザーを見てみると、6割の人は1日74分スマホを利用しています。一方で、全体の11.4%はゲーム中心に利用しており、合計4時間にのぼる。また、9.4%は動画共有やブラウザ利用が中心。ほかに通話やメールなどバランス型の人や、インスタントメッセンジャーを頻繁に使う人、ソーシャルネットワーク中心の人、ニュースなどの情報をつねに追いかけている人などがいます。同じモバイルといってもこれだけ多様なエコシステムができている。就寝前の時間が開発されていないという指摘もありましたが、こうしたことをふまえてコンテンツを出していくべきだと思います。

設樂:モノとの出会い方も変わってきています。目的に応じて検索するのではなく、何となく何かないかなと思ってサイトを見ている。SNSも、何か面白いことないかなという風に隙間時間に見ている。そのモーメントを逃さずに企業は何をメッセージとして送るのかが重要かと思います。

奥:スマホネイティブな一般ユーザーが受け手のタイミングまでを理解して発信するところまでをやっているし、使い方にしても、非常に速いスピードで、かつマルチユース、マルチデバイスで利用している。さらに一言でスマホユーザーといっても、さまざまなとがったグループでマスが構成されていることなどが調査報告からわかりました。今改めて、広告のありようが問われているという気がします。
本日はありがとうございました。

 

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