
「Media Spiral」~フロー・ストック・サーチ・ソーシャルのメディアデザイン~
2011年11月22日(火) 開催
メディア環境研究所長 吉田弘より、「第8回メディア環境研究所フォーラム」のレポートをお届けします。
メディア環境研究所 所長 吉田 弘
2011.3.11東日本大震災以来、生活者はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなどを利用して、一つのコトモノに対して、多面的な情報収集を行うようになっています。一方、Facebook、Twitter、mixiに代表されるソーシャルメディアは、震災時に互いの安否確認や地域の生活情報源としても活用し、若年層のみならず、壮年層にも浸透しつつあります。
そんな中、去る2011年11月22日(火)、『第8回メディア環境研究所フォーラム』が六本木アカデミーヒルズにて開催されました。 2004年からスタートしたこのフォーラムは、「メディアとコンテンツ」を生活者の視点から考え、新しい価値を生み出すためのヒントを発信する取り組みとして回を重ねています。今回のフォーラムで掲げたキーワードは、「Media Spiral」です。このキーワードを軸に、「生活者の密着取材レポート」、「ソーシャルやスマホによる生活者のメディア行動変化の分析」、「海外の最新事例」の3部構成でお届けしました。
■バーチャルなお茶の間として(生活者の密着取材レポートから)
すっかり日常生活の中に浸透したソーシャルメディアですが、テレビにおいてもソーシャルメディアを使いながら視聴するスタイルが若年層を中心に増えています。Twitterにおいては、ハッシュタグ(#)を使って離れた場所にいる人たちとつぶやきながらの一緒にテレビ視聴を行う、という具合です。「リアルタイムでのテレビ視聴はTwitterのため」というケースも珍しくありません。もはやテレビは、バーチャルなお茶の間としてコミュニケーションの場となりつつあります。今後の新たなメディアの楽しみ方を予感させる動きです。
一方で、緊急時には安否情報や生活情報など新たな情報発信の形を示してくれましたが、不十分な情報で混乱を招くケースもあり、信憑性や信頼度点で課題があるのも現実です。
■フロー、ストック、サーチ、ソーシャルのメディア・デザイン
前述のように、生活者はメディア行動を組み合わせ、ひとつのメディア内にとどまることなく積極的にアクションを起こし続けています。この現状を「コンテンツの送り手と受け手の関係」(1→n または n→n)、「メディア、コンテンツに対しての情報取得機会」(“偶然に” または “要求に応じて”)の2つの視点を掛け合わせて、「フロー」「ストック」「サーチ」「ソーシャル」の4つに分類したチャートがこちらです。

「フロー」:特定の送り手が発信する(1→n)情報に“偶然に”接触する体験 (例)ニュースサイトなど
「ストック」:特定の送り手が発信する(1→n)情報に“要求に応じて”接触するもの (例)録画番組、書籍など
「サーチ」:不特定多数の送り手が発信する(n→n)情報に“要求に応じて”接触する体験 (例)検索サイトなど
「ソーシャル」:不特定多数の送り手が発信する(n→n)情報に“偶然に”接触するもの (例)Twitter、mixiなど
さらには、生活者は、この4つの情報接触体験をシームレスに行き来しています。たとえば、あるアーティストについてニュースや動画サイトで情報を得ながら、SNSで楽曲の評判を聞き、その情報をもとに検索エンジンや動画サイトから新たな楽曲情報を探してくる、というようにこの「メディア組合せ行動」を継続的に循環させています。同じメディア情報でも組合せ行動しだいで起点となったり、併走したり、受け皿となったり、様々な役割にリアルタイムで変化し続けています。これからは、「ソーシャルの連動」というひとくくりの言葉ではなく、「組合せによって生まれる価値」が重要となります。「フロー」「ストック」「サーチ」「ソーシャル」の4つの情報行動を組み合わせて、メディアビジネスをデザインしていく。これが、Media Spiralのコンセプトです。
■加速度を増すスパイラル(海外の最新事例から)
海外に目を向けてみると、アメリカではMedia Spiralの事例がいくつか見受けられます。テレビのダイジェスト版を提供するWEBサービスはまさに、「フロー」×「ストック」の事例。
テレビ番組にチェックインするソーシャル視聴サービスは、「フロー」×「ソーシャル」といえます。
さらに、社会現象にもなっている、国民的ドラマ「glee」では、「フロー」「ストック」「サーチ」「ソーシャル」の組み合わせを、を2重にも3重にも重ねて、Media Spiralを築き上げています。このように米国では「魅力あるコンテンツ」を中心に据え、多層的なスパイラル構築しているケースが存在しています。
今後日本でも、「フロー」「ストック」「サーチ」「ソーシャル」の4つの情報行動を組み合わせながら、メディアビジネスを多面的かつ多層的に設計することで、ビジネスチャンスにつなげられるのではないでしょうか。今回の「Media Spiral」のコンセプトがメディアビジネスの芽となれば幸いです。



