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ラジオ放送の多様な「聴き方」続々と 聴取環境改善へ
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「radiko(ラジコ)」には民放70局以上が参画

ここ10年来、減少傾向であったラジオの広告費も、昨年度は前年比102.3%と、上昇基調が見えてきました。民放連研究所によると、2015年度もラジオ全体で0.5%の伸びになるとの予測が出ています。

しかし予断を許さない状況であり、ビデオリサーチによる首都圏の聴取率調査ではセッツ・イン・ユース(男女12~69歳 週平均6~24時=注)が昨年10月以降、6.0%を切ったままです。この要因のひとつにラジオの聴取環境の悪化が挙げられるでしょう。

住環境の変化や高層建築の林立により、電波が届きにくくなったことに加え、さまざまな電子機器の普及によって、今の都市部には大量の電子ノイズが充満しています。

代表的な発生源はインバーターと呼ばれる装置です。各家庭に送られる電気は固定された電圧と周波数を持った交流です。これをそのまま電圧や周波数を制御するのは非常に難しいため、一旦直流に変換し、交流に戻(逆変換)してコントロールしています。

最近のエアコンや冷蔵庫、炊飯器など多くの家電製品や、大きいものではビルのエレベーターや鉄道車両にも使われており、欠かせないシステムであるため、今後増えることはあっても減ることはないと考えられます。

こうした難聴取を解消するためにスタートしたサービスの一つが、インターネット経由でラジオを聴くことができる「radiko(ラジコ)」です。

2010年から実用試験配信を開始、今年の4月時点で民放ラジオ70局以上がそのプラットフォームを通じて配信を行っています。また昨年、放送エリアの制限をはずした有料のエリアフリーサービス「radiko.jpプレミアム」も開始され、会員数も当初の計画を上回るペースで伸びているようです。

(注)セッツ・イン・ユース:調査対象世帯のテレビやラジオのスイッチの入れられている受像(信)機の割合。

画像やテキストもラジオで受信

一方で、地上波のラジオでの難聴取対策として進められているのが、FM方式を利用したAMラジオの補完放送です。秋田放送、北日本放送、南海放送、南日本放送が既にFM放送を始めており、「電子ジャーの保温の際に入っていたノイズがない」、「工事現場が近くて聴き辛いのが解消された」、「音がキレイ」、「混信しなくなった」などの声が寄せられており、リスナーから好評のようです。

周波数は90~95MHzを使用するため、古いラジオでは受信できない周波数ではありますが、メーカー各社から対応する受信機やカーラジオ(ナビ)が発売されており、量販店の店頭にも並び始めています。

首都圏でも今年度内に放送を開始するために、現在東京スカイツリーにアンテナを設置中とのことで、「radiko」と並んで、ラジオ聴取環境の改善、ラジオ業界の活性化に役立つことが期待されています。

また、今年度動きがあるのがTOKYO FMが主体となって推進している「V-Lowマルチメディア放送」です。

日本のラジオとしては初めてのIP(インターネット・プロトコル)放送であり、音声信号以外にもテキストや画像など、さまざまなデータを、デジタル放送することが可能となります。いよいよ今年末ごろ、福岡を皮切りに、大阪、東京と、順次放送を開始する予定と聞いています。

2015年度はラジオ業界の動向から目が離せない1年となりそうです。

AdverTimes「メディアガイド2015」リレーコラムより転載

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露木 浩貴 ラジオ局 ビジネス企画開発部

1991年博報堂入社。テレビ局、ラジオ局、中部支社などを経て、2007年博報堂DYメディアパートナーズに。テレビ局衛星メディア部を経て、2014年より現職。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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