コラム
メディア環境研究所
~「情報のバランス取れていますか?」情報の偏り、不安を感じる若年層~ メディア環境研究所 メディア定点調査連載コラム④
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欲しいのは、“バランスの良い情報生活”

「ニュースなど自分が得ている情報は偏っているのではないかと不安に思うことがある」という質問に対して、10・20代の若年層の半数が「不安に思う」と答えている[図1]。

図1 ニュースなど自分が得ている情報は偏っているのではないかと不安に思うことがある
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全体(36.9%)と比べると、若年層は10ポイント以上高い。モバイルシフトを牽引する若年層の情報に対する不安は、情報そのものが取れているかどうかではなく、「情報のバランスが取れているか」にあるようだ。彼らは「インターネットの情報は、うのみにはできない」(全体79.0%、10代男性81.8%・同女性88.7%、20代男性88.5%・同女性90.6%)と思っているし[図2]、「SNSだけで、ニュースを取得するのは不安だ」(全体39.5%、10代男性56.4%・同女性50.9%、20代男性57.7%・同女性60.4%)と感じている[図3]。

図2 インターネットの情報は、うのみにはできない
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図3 SNS(ソーシャルメディア)だけで、ニュースを取得するのは不安だ
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動画やSNSなど新しいメディア・サービスを駆使して自分が欲しい情報を取っている若年層は、“バランスの良い情報生活”を送っているかどうかということに関しては自信が持てないようだ。「自分に届く情報は自分向けにカスタマイズ(選択・編集)されていた方がいい」と考える若年層は1,2割で、情報のカスタマイズ欲求は高くない[図4]。

図4 自分に届く情報は自分向けにカスタマイズ(選択・編集)されていた方がいい
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若年層に限らず、生活者の情報のカスタマイズ欲求が総じて低いのは、自分の興味・関心に基づいた好きな情報ばかりでは情報のバランスが悪くなるという気持ちの表れではないだろうか。好きな食べ物だけ食べたいという欲求はあっても、さまざまな栄養をバランス良く摂ることが「健全な食生活」に必要であるように、さまざまな情報をバランス良くとることが「健全な情報生活」には必要なのだと考えているのかもしれない。

改めて見直される情報の質や信頼性

ニュースなどの必要な情報を取る際に、生活者がメディアに求めているものは何であろうか。ニュースメディアの代表格である新聞のメディアイメージを例にとって見てみたい[図5]。

図5 新聞のメディアイメージ
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新聞の「情報が信頼できる」(2015年:49.5%→2016年:58.8%→2017年:65.8%)は昨年に引き続き上昇し、7割に近づいている。一昨年から見ると、16ポイント以上伸びているのは注目に値する。モバイルシフトによって情報量の多さやスピードの速さがあたり前になり、「信頼」という価値が見直されたと捉えることができる。また、「勉強になる」も昨年より7ポイント近く上昇し(2016年:66.4%→2017年:73.2% ※2015年未聴取)、「質の高い情報が多い」も上昇している(2016年:49.6%→2017年:53.9% ※2015年未聴取)。「信頼」や「質」の高さ、「勉強になる」ことが、ニュースなど必要な情報を選ぶ際の重要なポイントになるようだ。「ポリシーやメッセージを感じる」(2015年:33.5%→2016年:48.3%→2017年:51.7%)ことも情報過多の時代に情報の読み解き方を伝えるという点で、大きな強みとなるであろう。それらの強みを生かしつつ、モバイルシフトによって情報量の多さとスピードの速さが前提となった生活者に、“どのように届けるのか”という届け方を考えることが、大切なポイントであることは言うまでもない。

【関連情報】
メディア定点調査ニュースリリース
★メディア環境研究所サイト
★メディア定点調査連載コラム[1] ~「メディア定点調査2017」から見るソーシャルメディアのいま~
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★メディア定点調査連載コラム[2] ~中高年に拡がるモバイルシフト~
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★メディア定点調査連載コラム[3] ~「好きなものを好きな時に好きなだけ」期待されるテレビコンテンツ~
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★メディア定点調査連載コラム[5] ~「メディア行動のTPO」~
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新美妙子 メディア環境研究所

1989年博報堂入社。メディアプラナー、メディアマーケターとしてメディアの価値研究、新聞広告効果測定の業界標準プラットフォーム構築などに従事。
2013年4月より現職。メディア定点調査や各種定性調査など生活者のメディア行動を研究している。「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド2015」(宣伝会議) 編集長。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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