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デジタル・マーケティング最前線 後篇-dmexco@ドイツ・ケルン
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9月14~15日の2日間にわたり、ドイツのケルンで開催された、欧州最大のデジタル・マーケティング・カンファレンス「dmexco」。前篇に続き、現地を視察した、博報堂DYデジタルの舩越啓の報告をご紹介します。

★前篇はこちら→ デジタル・マーケティングの最前線 前篇-dmexco@ドイツ・ケルン

9月14~15日の2日間にわたってドイツのケルンで開催された、欧州最大のデジタル・マーケティング・カンファレンス「dmexco」のレポート、後篇です。

■LIVEビデオプラットフォームへ-twitter

twitterのCEOのジャック・ドーシー氏は、WPPのCEO マーティン・ソレル氏との対談の中で、その収益化に向けた戦略を語りました。

これまでtwitterにはさまざまの利用方法があったが、その本質的な価値は「いま何が起こっているか、いま何が話題になっているかがわかる」ということ。この「同時性・即時性」は他にない特徴であり、これを活かすLIVEコンテンツ(スポーツ、ニュース、エンターテイメントなど)に注力していく」とジャック氏。

折しも、twitterは、9月14日にライブ番組などを大画面で楽しむためのApple TV、X-Box, FireTV向けアプリを発表したばかり。このアプリを経由して、NFLの「Thursday Night Football」の10試合をはじめ、MLB・NBA、ニュース番組「Bloomberg News」など、さまざまなライブ映像コンテンツが楽しめるようになります。

 

世界中の人がtwitterアプリを通じてライブコンテンツを視聴することができ、また、同時にその動画コンテンツに関するツイートを閲覧・投稿したりできます。twitterは、ライブビデオストリーミングを軸に、かなり大きなサービス・ビジネスの方向転換を図ろうとしているように思われます。“A global broadcasting platform, sitting in our pockets” (ポケットの中にある放送プラットフォーム)。Twitterが目指している世界が提示されています。

ジャック・ドーシー氏によれば、今後もさまざまなコンテンツ会社とパートナーシップを構築する予定とのこと。今後の動向に注目があつまるtwitterですが、今はこの強力な戦略を推進していくことにフォーカスしている、と語っています。放送と通信のキワがますます曖昧になりつつある中、ユーザーにはコンテンツの楽しみ方の選択肢が増えていきます。ブランドからのメッセージを生活者に届ける手段もますます多様化していくことになりそうです。

■The Moment that Matters―「大事な瞬間」をどうとらえるか-Google

そしてGoogle。広告・コマース部門のSVP、スリダール・ラムズワミー氏は、基調講演「Building for a Mobile-First World」の中でこう語りました。

「モバイルが、ブランドと顧客の接点を変えている。いま私たちは、すでにモバイル・ファーストの時代を生きている。朝起きた直後から、寝る直前まで、私たちはモバイルに触れている。ブランドは、モバイルを通じて一日中生活者にリーチすることができるようになった。

ただし、私たちの暮らしの中で、ブランドに対してエンゲージメントが高まる瞬間と、そうではない瞬間というものがある。暮らしの中での「大事な瞬間」(The Moment that Matters)をどうとらえていくか。私たちが、「知りたい」「どこかに行きたい」「何かをしたい」・・・そういう瞬間をどうとらえるか。それがカギになる」。

モバイル・ファーストの時代、生活者にとって意味のある「Moment」をとらえる 。これからのマーケティング・コミュニケーションは、まさにそんな方向で進化をしていくことをGoogleは予感させます。

ドイツに到着した日の夜、私のスマホのトップ画面には、Google翻訳が自動的に現れ、『日本語「こんにちは」:ドイツ語「Guten Abend」』と表示されていました。私たちが慣れ親しんだ「広告」とは、少し違う形のコミュニケーションになっていくのかもしれません。

■最後に

メディアも、広告主も、エージェンシーも。
デジタル・マーケティングに関わるあらゆる立場の人が、デジタル化にともなう生活者の変化をスピーディーにとらえるだけでなく、自らその変化をリードしていこうと、さまざまな試みをしています。

また、かつてデジタル・マーケティングの領域では、「アメリカで起こったことは○年後に日本で起こる」という話をよく聞きました。今は、アメリカでの生活者の変化を待つことなく、世界中でほぼ同時に変化が起きる、コミュニケーションの仕方が変わる。そんな時代になっているように思います。

日本においても、私たちをとりまくメディア環境は劇的に変化していきます。その変化をスピーディーにとらえ、また自ら変化を作り出していくために、どんな着眼点、発想、マインドセットをそなえておかなければならないか。そんな課題意識を持ち帰ってきた「dmexco」でした。

【関連情報】
デジタル・マーケティングの最前線 前篇-dmexco@ドイツ・ケルン

舩越 啓 博報堂DYデジタル
プラニング開発ユニット ユニットマネージャー

1994年に博報堂入社。マーケティング局、インタラクティブ局にてストラテジックプランナーとしてクライアント企業のマーケティング支援に携わる。外資系金融機関において広告主としてのWEBマーケティング業務を経て、2004年博報堂にてデジタルマーケティング戦略立案業務を担当。2012年より米国赴任、マーケティング・アナリティクスの実務に携わる。帰国後、2016年より博報堂DYデジタルにて、クロスメディア効果の検証・プランニングメソッドの開発に従事。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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