コラム
データマーケティング
データマーケティングの未来を語る
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データドリブンビジネス開発センター データマネジメントプラットフォーム部(以下DMP部)所属の若手5人による連載リレーコラムが終了。担当した5人が集まり、データマーケティングが直面する課題や可能性、これからの展望についてそれぞれの立場から意見を交わしました。

03302(左から坂口聡一朗、椎名諒、馬島久直、秦俊一郎、吉田洋基)(いずれもデータドリブンビジネス開発センター所属)

より高い視座からデータマーケティングを考える

馬島
リレーコラムも一段落したので、ここで改めてデータマーケティングについて5人で語れればと思います。我々は同じデータドリブンビジネス開発センターに所属していますが、バックグラウンドは各自バラバラなので、まずはそれぞれの立場から感じることなどを話していただければ。椎名さんからお願いします。

椎名
私は読売広告社(以下読広)からの出向です。2016年からDMP部と兼任しています。読広は主に不動産領域でのマーケティングをひとつの強みとしていて、そこで独自の知見を蓄積、ブラッシュアップしていくという戦略でしたが、博報堂DYメディアパートナーズではブラッシュアップというよりもゼロを1にするソリューション開発に臨むという印象です。

吉田
私も同じく読広とDMP部を兼任しています。最初に博報堂DYメディアパートナーズに来たときはやはり文化の違いを感じました。例えば150人位の規模の組織が、「データを用いて新しい価値を作ろう」という一つのベクトルに向かって一緒に進んでいく様子には、グループならではのダイナミズムを感じました。博報堂DYメディアパートナーズで行う大きなソリューション開発を、ブランドエージェンシーに持ち帰り、クライアント課題視点のソリューションに応用していけるようになったことも収穫だと思っています。


私は大広からの出向で、2016年からDMP部を兼任しています。DMP部の第一印象はとにかく多様性があるということ。たとえば金融やシステムベンダーなど全く別領域から来た人たちが集結して、すごくフラットな立場でデータ活用に取り組んでいるところが面白いです。

坂口
私は2012年に博報堂DYメディアパートナーズに入社し、インターネット広告のプラニング業務を経てDMP部に来ました。秦さんも言われたように、DMP部は、他業界から来た方や博報堂DYグループの方が集まっているので、ある意味で博報堂DYグループ全体の縮図のような場所になっていると思います。僕は、インターネット広告を担当していたときは特定のクライアント課題に向き合う仕事をしていたのですが、DMP部では博報堂DYグループ全体を見渡し、広告主共通のマーケティング課題を見つけ、解決することが求められていると感じています。

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データドリブンビジネス開発センター 馬島久直

馬島
私も博報堂時代は特定クライアントと向き合う仕事をしていたので、そのクライアントにとっての最適解を出す、つまりフルカスタマイズが当たり前だった。でもそれだとなかなかスケールしないということもあり、いまは“汎用性”が業務の大きなテーマになっています。さまざまなクライアントが抱える共通のマーケティング課題に答えつつ、それぞれのクライアント特有のニーズにもフィットするという、両方を兼ね備えたソリューションづくりが大事になってきています。

吉田
確かに、クライアントも含めた業界全体を俯瞰して見ることが、ソリューション開発には必要だということがDMP部に来て改めてわかりましたね。

人材に多様性があるからこそ、うまくコラボレートしていくことが課題

馬島
博報堂DYメディアパートナーズに来たからこそわかる、現場や業界の課題、気づいたことなどはありますか?

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データドリブンビジネス開発センター 吉田洋基

吉田
これからは専門性を持ちつつも、全体を理解して統合できる人がこれからは重要になるのではないかと感じています。更に、統合型の営業と、統合型のマーケターが組み合わさるなど、多角的な視点を持つ人同士が一緒になると本当に生産性が上がると思います。

馬島
営業にしろマーケターにしろ、それぞれの個別領域にこだわらず、自分とは違う領域が得意な人をきちんとサポートにつけることで、自分自身も徐々に領域を広げていくことができるんじゃないでしょうか。

吉田
そうですね。そういう人がチームには必要な気がします。

馬島
チームの体制によって役割が変わってくるかもしれませんね。データマーケティングの領域から全体設計をするケースももちろんあるし、営業やマーケが全体統合の視点を持っているのであれば。マーケティング領域とデータやメディア領域をつなぎ込む専門家として機能するケースもあるといったような。いずれにしても領域を限定的に捉えてしまうのはもったいないですね。
坂口さんはどうですか。

坂口
この会社には得意領域が異なる多様な人材が集まっていて、大規模なクライアント案件やソリューション開発をする場合は、全員が有機的につながりコラボレーションする必要があります。しかし、それは当然理想論で、誰かしらプロジェクトマネジメントするひとが必要なケースが多いと思います。コラボレーションについては、メールではなくチャットツールで迅速にコミュニケーションをとるなど、もっとビジネスツールを賢く使うことでうまく実現できるのではないかとも感じています。

椎名
それから、開発にはクライアント課題やマーケティング課題に基づく開発と、HDYグループの競合優位性を保つための開発という2つの視点があると思うのですが、そのバランスを今後どうとっていくかも課題になっていくような気がしています。両者のバランスを取ることが大切なのではと思っています。


利用するデータ自体は差別化に限界があり、同じようなソリューションをつくろうと思えばできてしまうという環境にもある。そんななかで、真似されないソリューションをつくるためにどう視点を変えていけるか……。こういうデータがあるから、得意先がこう悩んでいるから、だからこうしましょうという形はありつつも、やはり我々ならではの「生活者視点」で、どういうソリューションを開発していくのか?ということこそが、今後もっと問われるようになってくると思います。

すべてのマーケターが当たり前のようにデータを扱えるような未来

馬島
未来についてはどういうことが言えるでしょうか。データマーケティングのこれからについてなど、思うところを自由に語っていければと思います。

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データドリブンビジネス開発センター 坂口聡一朗

坂口
「生活者DMP」がかなり拡充され、テレビCMを見たひとがその後商品を買ったのか、そしてその後優良顧客になったのかなど、様々なことがわかるようになってきました。このような状況で「本当にその分析に意味があるのか」を改めて考えないといけないフェーズに来ていると感じています。たとえば、テレビCM出稿の目的がアプリのダウンロードであれば、テレビCMを視聴したひとが実際にそのアプリをダウンロードしたかを調べるのはとても重要で、それによってテレビCMのプラニングをどう変えていくかという話につながっていきます。
施策の目的をあらかじめはっきりさせておくこと、そして、それが本当に達成できているか効果検証するためにデータを使うという、全体設計をできるマーケターが今、求められているのではないでしょうか。

馬島
少しかぶりますが、私はデータマーケティングの本質がまだ浸透していないと感じています。きちんとした目的がまずあり、だからこのデータが必要だという考え方が浸透していれば、「とりあえずデータを見てみたい」といった発想は出てこないですよね。そもそもこれだけ見ておけば大丈夫という、万能なデータは存在しないことを認識してもらう必要があると思う。そのうえで、データをどういうものとして捉えるか、意味付けを行い、適切に掛け合わせていくかがマーケターには求められている。
逆の発想ですが、ありもののデータをいろいろなパターンに精緻化させていくというベクトルの一方で、「こういうプラニングをどうしても実現したいから、こういうデータが必要だ」という発想がプラナー側に備わっていけば、マーケティングが高度化していく気がします。

椎名
そういう発想を生むためには、すべてのマーケターが当たり前のようにデータを使えるようにならないといけませんよね。そのためには、まずは一度データに触れてみることが大事かもしれません。インナー的な視点になりますが、マーケターにとってのデータ活用におけるUXをどう向上させていくかということも、これからの課題だと思います。

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データドリブンビジネス開発センター 秦俊一郎


データ領域では機械学習やAI技術の活用も進んできていますよね。しかし、実際にそういう技術を活用しようとすると、「こういう項目で学習させたいのに、もとになる情報がない」といったことがある。たとえばあるCMのクリエイティブがあり、オリエンシートもあったとして、その間にどういった思考がなされたかがわからないというパターンに似ていると思います。マーケターやクリエイターの思考プロセスがタグ付け、管理されていないので、結局学習させることができないということが実際に起きています。ですから、これからは広告のインプットとアウトプットだけじゃなく、その裏側にどういう意図があって、どういう選択をしたのかをデータ化させないといけない。「こういうマーケティングをしたいから、制作の業務のときにはこのデータを入力しておかなきゃいけないよね」という風に、データ部門だけでなく、あらゆるセクションがデータマーケティングを意識した業務設計を求められるようになると考えます。

どういう料理をつくりたいか?から逆算し、必要なデータを探る

吉田
いずれにしても、目的の設定とか効果の検証は、本来マーケティング戦略のもっとも重要な部分なので、それがクリアになることはとても喜ばしいことです。だからこそ、目的とか効果に対する問いへの答えを持たない人が、いまあぶりだされようとしているのかもしれません。また、本当に価値のある、取得できるデータというのはこれから無限に増えていくわけで、その奪い合い――データリクルーティングの競争は今後、加熱していくかもしれませんね。

ウェブログには限界があるなか、生活者をとらえるデータの9割は、まだ眠っている状態なのではないかと私は思います。競合との差別化という意味でも、今後そのデータをどこからどう取得していくか。そのプラットフォームづくりも含めて、生活者データの活用はこれからいよいよ本番を迎えるのだと思います。

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データドリブンビジネス開発センター 椎名諒

椎名
確かにそうですね。今後データ保有において先行する企業が出てきた時、我々が保有する「生活者DMP」を、どう意味付けし、掛け合わせ、価値を与えていくかというところで勝負していくのだと思います。

吉田
私もその通りだと思います。今まではメディアプランの最適化とかターゲティングとか、効率化の文脈でしか語られてこなかったと思いますが、これからは新しいデータが現れた瞬間に、それがもっと創造的な、新しいサービスや価値を生み出す鍵になっていく。生活者発想で、そこでいかに新しい価値をつくっていけるかが問われて行きそうですね。

データマーケティングを料理に例えると、我々は料理人という立場にいるわけで、まずいろいろな料理をつくった経験があるからこそ、新しい料理をイメージできるというか。こういう料理を作るためにもこういうデータが欲しい、という発想が必要だと思うし、そういう発想ができる人が結局は一番強いのかなと思う。さらに、いまは情報処理の仕方も多様化していて、いわば新しい調理器具がどんどん登場しているような状態。そこで、新しく、かつ満足してもらえる料理を開拓していくのが我々料理人…ではなく(笑)マーケターの役割なのではないかと。

椎名
我々は料理研究家なわけですね(笑)。

坂口
質の高いデータマーケティングを実現するためにも、どんな素材、データが世の中にあるか、さらにお客さんがどういうものを望んでいるのか、その両方とも深く知っていないといけない。情報収集もますます欠かせなくなってくると思いました。

馬島
そうですね。
今日は改めてこうして意見を交わすことができてとても意義深かったかと思います。
皆さんありがとうございました。

【関連情報】
【Vol.1】データマーケティング実行にあたって重要なこと
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【Vol.2】「データの価値化」に挑戦する
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【vol.3】「意味付け」と「掛け合わせ」でデータの価値をデザインする
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【vol.4】メディア価値を高めるデータ活用とは
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【vol.5】マーケティングの高度化に貢献するソリューション開発(前編)
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【vol.6】マーケティングの高度化に貢献するソリューション開発(後編)
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