コラム
データマーケティング
データ・クリエイティブ対談 キックオフ座談会(前編)
COLUMNS

データ・クリエイティブはこれからどう進化していくべきなのか。その在り方について識者と語り合う対談企画がスタートします。
この企画にインタビュアーとして参加する茂呂譲治、徳久真也、篠田裕之の3名が集まり、キックオフ座談会として、「データ・クリエイティブ」をテーマに語り合いました。

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◆データ・クリエイティブの定義は変化してきている

篠田
今回の座談会を進行させていただきます篠田です。まずは皆さんそれぞれのバックグラウンドを教えていただけますでしょうか。

茂呂
博報堂に来る前は同じ広告業界にいて、最後の数年は「明日の広告」のサトナオさんのチームでデジタルやソーシャルメディア時代の生活者行動モデルをつくったり、企業のコミュニケーションデザインに携わっていました。2011年に博報堂に来てからは、デジタル時代のクリエイティブやコミュニケーション、マーケティングから、中長期のプラットフォームづくりなどに取り組んできました。最近はデータを活用した接点づくりや関係性構築といったものを通して、「戦略とクリエイティブをどう両立させていくべきか?」にも向き合う毎日です。

徳久
僕は、始めは外資系のコンサル会社で経営コンサルをしていました。博報堂に来た当初からストラテジックプラニング職ですが、次第にクリエイティブの人たちと一緒にマーケティングとクリエイティブ、プロモーションの融合のような仕事をするようになりました。その後、メディア×データ×マーケティング×クリエイティブ×ビジネスデザインを融合した視点で何ができるかを考えるようになり、今に至るといった感じです。

篠田
僕は、博報堂DYメディアパートナーズに新卒入社、初任はインターネット広告の部署で、主に運用型広告に関する業務を行っていました。そこからアドテクノロジーが進化していくタイミングにあわせて、所属部署が変わるとともに業務内容が変化、拡大していきました。今は主に視聴ログやウェブ行動などのビッグデータを分析し、ターゲットの深堀やメディアプランニングに落としこむ、ということをしています。一方で、メディア環境研究所の複属でデータビジュアライズに取り組み始めたことをきっかけに、ここ数年、スポーツや観光をはじめ様々なデータのビジュアライズに取り組んでいます。

まず、この企画のお題として、「データ・クリエイティブ」と掲げていますが、「データ・クリエイティブとは何か?」ということを改めて話してみたいと思います。というのも、そもそもの広告クリエイティブが、あえてデータと言わなくても、従来からデータに基づいたマーケティング(昔はアンケートデータなどが中心だったかもしれません)から発想していると思うからです。一方で、たとえばカンヌ広告祭におけるクリエイティブ・データ部門が、その定義について、「データがどのようにクリエイティブをエンハンスしているか、アプリケーションや分析にデータがどのように使われているかを明確に示すこと」などと述べられているように、これまでのポスターなどの紙ややフィルムにおけるクリエイティブとは、区別してデータ・クリエイティブを述べているようにも思います。そこで、データ・クリエイティブについてお二人が感じていることをお伺いできますか。

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茂呂
国内外の多くの取組みを見て思うのは、データ・ドリブン×マーケティングの進化はここ数年目覚ましいものがある一方で、企業のビジョンを示したり、生活者が動いたり、関係性をつくるモチベーションを喚起するための、クリエイティビティとの融合という点においては、チャレンジは始まっているけど、やり切れているものはまだ少ないかな、ということです。「企業やマーケティングの課題を実際にこのように解決しました」というところまで到達していて、かつクリエイティビティも十分に感じられるものだと、すごく素晴らしいものだと思うので、そこを追求したいですね。

徳久
常々思っていることですが、データは決して無味乾燥なものではなくて、その裏側にはその人の生活が克明に記録されています。データを使うほど、生活者のことが深くわかり、それだけクリエイティブにも反映していける。インタビューではわからないインサイトが発掘できるし、グーグルで言うところの「モーメント」、瞬間に合わせたクリエイティブが出せるようにもなっている。一方で、本質的にデータは、生活者を理解するうえでのツールに過ぎないともいえる。結局人間は本質的にはあまり変わっていなくて、自分の経験からも、データありきで考えると手段と目的が逆転してしまい、うまく結果が出ない気がしているんです。やっぱり「社会をどうよりよくしたいか」「生活者の悩みや課題をどう解決するか」がまず最初にあり、その上で「ではデータをどう使うか」という順序でデータ・クリエイティブを考える必要があると感じています。

茂呂
たとえば今年のカンヌでいうと、スニッカーズの「Hungerithm」は、データとクリエイティブがうまくつながった取組みだと感じます。SNSに投稿された怒りのコメントを分析し、その指数が高いほどスニッカーズが割引されるというもの。「You’re Not You,When You’re Hungry」というブランドビジョンとのつながりを前提としながら、データがターゲットの気持ちをくみ取ったり、手を差し伸べている存在になっています。

徳久
僕はまだ、データ・クリエイティブで、まだ目指すべき象徴的な事例は見つけられていないですね。やはりまだ世の中のデータ・クリエイティブ施策は、「短期的なキャンペーンでデータを活用して面白くしてみた」というケースが多いですよね。でもデータの強みは永続性があって、どんどん学習して、状況に応じて変化していけること。だから一過性のキャンペーンやプロモーションだけではなく、よりサービスや事業そのものを変えていく可能性を持っている。本当はクリエイティブもそれを支えていく形に進化していかなければならない気がするんですよね。その点ではまだみんな、トライアルをしているような状態なのだと思います。

篠田
一方で、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、あるいはロードアイランド・スクール・オブ・デザインなどで言われているのが、スペキュラティブ・デザインとか、クリティカル・メイキングという考え方です。要は、問題解決のためのデザインではなく、問題提起のためのデザイン、クリエイティブ、という視点です。これから先、アートやデザイン、広告クリエイティブの文脈でデータを使う場合には、データ・ジャーナリズム的な観点というか、世の中にはこんな未来もあり得るというオルタナティブを示す役割もあるのではないかと思っています。

茂呂
交通事故や国勢調査、選挙、環境課題そのものにはなかなか多くの人が関心を向けないけれども、それがデータを通じてクリエイティブに可視化されることで、関心が高まることはありますね。

徳久
昨年カンヌでゴールドを獲った「LIVE LOGO」もそう。国の社会課題を顕在化させて、シンプルなロゴで表に出すという。社会課題そのものの解決はしていないけれど、意識を高めることには成功したと思います。

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篠田
それから、課題提起、課題解決の両方を兼ねている事例もありますよね。「3 WORDS TO ADDRESS THE WORLD」がそうだったように思います。住所、というデータは、国があり、州があり、市があり、番地があり……という階層構造ですが、3つのユニークなワードの組み合わせで住所を表してもいいのではないかというオルタナティブを示していた。現状の住所というデータ構造では、住所が割り振られていないエリアがあるという課題提起をするとともに、3つのワードによって、世界中のあらゆる場所に、新たに識別可能で覚えやすい住所を割り振って物を届けたりインフラが整備できたりするようになる。データの定義、固定観念を変える、データ自体に対してクリエイティブ的な発想を入れる、という発想が面白いですよね。

◆これからのデータ・クリエイティブを機能させるために必要なこととは?

篠田
お話いただいたようなデータ・クリエイティブに対して、僕らとしては今後、どのように取り組んでいくべきでしょうか。現状どこまでできているのか、よりそれを進化させるためには何が足りていないのかといったことについて、お話いただけますか。

茂呂
今、社内をみても、多くのチャレンジは始まっています。が、まだまだやり切れていないというのが現状です。幸い博報堂DYグループにはやりたいことを実現する多くの人材や機能は揃っているので、まずはお互いが「データの人がここまでやってくれないとアイデア考えられないよ」とか「ここからはクリエイティブチームでよろしく!」とならずに、もっと良くするためにはどうすればいいのか?を、言語が違っても、一緒に考えたりする事だと思うので、そういった場を創りはじめています。

徳久
一番簡単なのは、一緒にやってみることですよね。データ食わず嫌いというか、データは難しすぎるし関係ないと思っている人も多いと思いますが、よくよく触れてみるとデータってそんなに冷たいものじゃなくて、むしろ人間の温かみがすごく伝わるものだと思う。だから、左脳的なアプローチだけではなくて、そこに右脳的なクリエイティビティを加えてあげるとジャンプできると信じています。自分の体験からも、やはりチーム内にデータサイエンティストからアートディレクター、プランナー、メディアも分かる人が皆一緒に入っているチームはうまくいっているように思います。茂呂さんが言うように、博報堂DYグループはその機能がそろっているし、海外エージェンシーのように機能分化もされていないので、データ・クリエイティブのワークをするには日本は有利なんじゃないかと思います。

茂呂
僕が見ていても、うまくいっている事例を見ていると、自分のものではない領域に、キーマンとなる人がぐっと踏み込んでいる。ともすると「自分は専門外なので、そこはおまかせします」となるところを、いい意味で侵入してくる。そういうチームには、「技」と「体」に加えて、「心」がしっかりあるような気がしますね。ただ、全員にそれを求めることは難しいので、それをやりやすいような仕組み作りが、まず必要になってくると思います。

篠田
たとえばですが、データ部門の人に「今月のCMやグラフィックで気になるものは?」とか、クリエイティブの人に「最近のメディアやアドテクノロジーで面白いと思ったものは?」と聞いてもすぐには出てこない人もいると思います。でもそれぞれの組織内では最新のナレッジを共有しているはずだから、組織を超えて互いの知見・事例をうまく知れるような仕組みが何かあるといいと思います。

茂呂
強制的に目に触れるようなダッシュボードがオープンスペースにあるとか、自分のPCにアクセスすれば世の中の動きが常に見れるとか。グループ内には実際に、日々、データを見る習慣をつけている組織もあります。そうすると、それらが意味するコンテキストは、いま自分たちが向き合っているブランド課題とどうつながるのか、と多くの人が考えるようになる。そこからアイデアが生まれるということはあるでしょうね。

徳久
いきなり「さぁ、データ・クリエイティブをやろう!」ではなくて、日々データに増えて、データの向こう側にある生活者の姿を妄想する。みんなでそういう体質になっていかないといけないということですね。

~後編に続く

◆プロフィール

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茂呂 譲治(もろ じょうじ)
博報堂 アクティベーション企画局 局長代理

深いデジタル知見をベースにしながら、国内外複数企業の事業戦略から統合プランニング、クリエイティブにまで向き合う。データドリブン×クリエイティブ領域においては、グループ十数社と連携しながら、マーケティングコミュニケーション業務や新領域ビジネスを追求。このテーマでモデレーターを務めたadtech tokyo2017では人気セッション1位を獲得。「Cannes」をはじめ国内外多数受賞。

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徳久 真也(とくひさ しんや)
博報堂 データドリブンマーケテイング局 第一グループ グループマネジャー

2005年博報堂入社。流通・通信・飲料・食品・自動車・電気機器メーカー等、50社を超える幅広い得意先のマーケティング/事業戦略立案、統合コミュニケーション戦略立案、ブランディング、商品開発、キャンペーン開発業務等に従事。 2017年より現職。データを活用したマーケティング×メディア×クリエイティブ×ビジネスデザインの融合を目指し、新規事業開発に従事。

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篠田 裕之(しのだ ひろゆき)
博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンビジネス開発センター

Python/R/SQLなど様々なプログラミング言語による、統計、機械学習を用いたビッグデータ解析全般を担当。特にDMPを用いたウェブマーケティング施策立案、および、データビジュアライズ業務に従事。

★こちらのコラムは博報堂DYグループの「“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信」より転載しました
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