コラム
データマーケティング
「意味付け」と「掛け合わせ」でデータの価値をデザインする
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データマーケティング リレーコラムVOL.3

進化するデータマーケティングにとって重要な事は何か?
データドリブンビジネス開発センター データマネジメントプラットフォーム部の若手メンバーがリレー形式で分かり易く説明していく連載コラム。第三回は坂口総一朗が、データ価値をデザインする方法論について語ります。

■デジタル社会における課題と好機

生活にデジタル機器やインターネットが浸透したことで、ひとびとが商品・サービスを知り購入にいたるまでのプロセスは多様化・複雑化しています。また、いままで把握することができなかった生活者の行動がデータとして残され、企業に分散して蓄積されるようになりました。
いま多くの企業はひとつの課題に直面すると同時に、大きい機会を得ているように感じます。

課題とは、デジタル社会において多様で複雑な購買行動をする生活者をどのように理解するかというマーケティングカンパニーとしての課題。機会とは、蓄積された生活者のデータをどのように企業活動として有効活用するかというデータホルダーとしての機会です。
そこでわたしたちデータドリブンビジネス開発センター データマネジメントプラットフォーム部は、データを基軸に生活者理解を中心とした企業のマーケティング課題解決支援と、企業が保有するデータの有効活用支援を一体で行っています。

■「意味付け」と「掛け合わせ」

データの有効活用についてご相談をいただくとき、「吾々のデータに価値はあるか」というご質問をよくいただきます。その答えを出す際にわたしは2つの視点をもつようにしています。
ひとつは、そのデータをどのように「意味付け」ることで高い価値をもつデータにできるかです。例えば、あるニュースサイトのアクセスログデータがあったとき、リアルタイムキャンペーン構築のための「トレンドチェックデータ」として意味づけることができます。あるいは、各企業の広報活動がどれだけ社会に浸透しているかトラッキングするための「PR効果測定データ」として意味づけるができるかもしれません。このようにひとつのデータでもその規模や内容に応じて複数の意味付けが可能です。いま向き合っているデータのユニーク性を十分に理解し、高付加価値化ができる「意味付け」を探り当てるのは、データマーケターの重要なスキルのひとつだと考えています。

もうひとつは、他のデータと「掛け合わせ」ることで単独では提供しえなかった高い価値創出を実現できるかです。先ほどの例でいうと、ニュースサイトのアクセスログデータに顧客データを掛け合わせることで、顧客の流出につながるニュースやロイヤリティ向上につながるニュースを発見し、情報戦略構築の材料にすることができるかもしれません。あるいは、従業員満足度の調査データと掛け合わせることで、自社に関連するニュースの閲覧と従業員のモチベーションの関係を明らかにし、PR施策の副次的な効果を見出すことができるかもしれません。このように、データは単独で存在するよりなにかと掛け合わせることで、強く「意味付け」られ、高い価値を発揮します。なにのデータと掛け合わせることで高い価値創出が可能かを、分析手法やアウトプットをイメージしながら最適な組み合わせを探り当てるのも、データマーケターの頭の使いどころだと考えています。

データの「掛け合わせ」については、この通り非常に強力な手法である一方、個人情報保護の観点からすべてを1対1に紐付けることは困難であるケースも多くあります。その場合、わたしたちは「k-統計化&データフュージョン技術」という博報堂DYグループが独自に開発した手法を用います。これは、結合対象のデータセットを細かくクラスタ化し元データの値をクラスタの統計量に置き換え、特徴が似たクラスタ同士を統計的に結びつけるもので、個人情報を保護しつつ精度を担保した状態で複数のデータの掛け合わせが可能です。このようにデータの掛け合わせにおいては、法律や企業のプライバシーポリシーに応じて分岐する様々なケースに対応できるよう、技術やナレッジの開発を日々行っています。
それでは、データが「意味付け」と「掛け合わせ」でどのように高く価値付けられるか、実際のケースをもとに説明させていただきます。

■「掛け合わせ」でリサーチデータの価値を高める

市場規模推定や戦略ターゲットの発見、マーケティング効果の測定などマーケティングにおいてリサーチデータは欠かせないものだと思います。しかし、リサーチデータには、リサーチデータから抽出した戦略ターゲットをメディアターゲットに引き継げないという重大な欠点がいままでありました。例えば、リサーチで価値観やブランドのマインドシェアなどからいかに精緻な戦略ターゲットを策定しても、メディアプラニングにおいてはそのターゲットのメディア接触状況がわからずM1F1などのデモグラフィックで行われるということが多々ありました。

そこでわたしたちは、リサーチデータをWEB上のオーディエンスデータに「掛け合わせ」ることで、リサーチで規定した戦略ターゲットに対して、デジタル広告配信を行うことができるように、つまり戦略ターゲットをメディアターゲットに変換できるソリューションを開発しました。また、静的なリサーチデータに動的なオンラインアクチュアルデータをかけ合わせたことで、生活者を「意識」×「行動」で把握することが可能になり、より精緻な分析ができるようになりました。
本ソリューションは「Querida」という名称でご提供していますが、既に200社以上の広告主様にご利用いただき、いまでは、実購買データやテレビ実視聴ログデータなどのオフラインの実行動データも掛け合わせ、規定した戦略ターゲットの購買傾向を分析したり、マス×デジタルの最適なメディアプラニングを行ったりすることができるようになっています。データの掛け合わせは既存のマーケティング上の常識やフレームワークを一新する高いポテンシャルを持っていると思います。

■ポータルサイトデータを「意味付け」する

デジタル社会において能動的に発信・情報収集する主体となった生活者は、より変化に富む存在になりました。企業の発信内容に問わず、生活者同士のコミュニケーションで急激に特定の企業に好意が向けられることもあれば、逆もまた然りです。このような社会において、生活者をよりリアルタイムに近いかたちで理解し、その状況に応じた戦略立案・施策展開を行いたいという企業の要望は日々高まっています。

そこでわたしたちは、日本最大級のポータルサイトのアクセスログデータを活用し、2つのレポーティングメニューを開発しました。ひとつは、市場全体で戦略ターゲット(ブランド好意者など)が増えているのか減っているのか定常的にトレースする「KPI Tracer」。もうひとつは、市場全体や戦略ターゲットの自社・競合ブランドに対する関心行動が増えているのか減っているのか定常的にトレースする「Market Trend」です。これらの実現には、戦略ターゲットを機械学習によって判定するモデリング技術が使われており、ポータルサイトにアクセスしているユーザすべてを判定することが可能になっています。
これらのレポーティングメニューの開発にあたって、ポータルサイトの2つの特徴に着目し「意味付け」を行いました。ひとつは、日本のインターネットユーザの約80%にアクティブリーチしているサイトであることです。これにより、ポータルサイトのアクセスログデータを「市場代表性のあるデータ」として意味付けることが可能になっています。もうひとつは、検索・ショッピングなど100を超える多様なサービスを提供しているサイトであることです。これにより、アクセスログデータを「戦略ターゲットの行動を説明するデータ」として意味付けることで、戦略ターゲットを高い精度で判定するモデルを作成する礎になっています。
ポータルサイトのアクセスログデータのような非常に膨大なデータは、多様な「意味付け」が可能で活用範囲が広い一方、適切な「意味付け」を見出さないとその活用は机上の空論になります。企業のマーケティング課題を十分に理解した上で、データの価値を引き出す「意味付け」を行うことができれば、そのデータを企業のマーケティング活動に欠かせない存在にまで昇華することができると思います。

■まとめ

「意味付け」と「掛け合わせ」でデータの価値をデザインする方法論を実際のケースをもとに書かせていただきました。どのようなデータにもその大きさにかかわらず高いポテンシャルがあります。重要なのは、それをマーケターがどう「意味付け」ときには「掛け合わせ」活用するかです。
データのユニーク性に目を凝らせば、必ずやその価値を最大限引き出す「意味付け」や「掛け合わせ」が見つかり、ときには企業のマーケティング課題を解決できるものとして、ときには経営土台を強固にするものとして、有効活用する方法が見つかると思います。

■関連情報
【Vol.1】データマーケティング実行にあたって重要なこと
【Vol.2】「データの価値化」に挑戦する
コラム Yahoo! JAPANのマルチビッグデータで企業のマーケティング課題をどう解決するか 〜「Handy Market Analyzer®」の開発背景〜

 

坂口聡一朗 データドリブンビジネス開発センター

2012年博報堂DYメディアパートナーズ入社。ブランディング・ダイレクトレスポンス両領域でのインターネット広告のプラニング業務を経て、現在はデータマネジメントプラットフォームを活用したソリューション開発、広告主のデータマーケティング支援、ビッグデータ解析業務に従事。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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