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顧客データを活用したプラニング<番外編> ~小さく始めて大きく育てる~テストマーケティングの実践
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ダイレクトマーケティングビジネスセンター竹下伸哉の連載コラム“顧客データを活用したプラニング”。今回は番外編として、ダイレクトマーケティングビジネスセンター飯田大輔が、データマーケティングをスムーズに導入していくための実践寄りのエッセンスをお届けします。

データを扱う最初の一歩で直面する壁とは?

アクチュアルデータを用いたマーケティングやコミュニケーションを志向する時に、自社の外に目を向けると、世の中には様々なデータやソリューションが存在しており、自社内に目を向けると、必要なデータやシステムが組織中に散在している、そのような混沌とした状況に直面することがしばしば起こります。例えば、オフラインに顧客とのタッチポイントを持っているような業種・業態の場合、来店データや接客情報、成約データは店舗・ショウルーム部門や営業部門が保有しており、それらに至るまでのHP来訪数や広告接触数のデータはマーケティング部門が保有しているというような状況であったり、部門間の分断のみならず、成約につながる重要な情報が営業個人のノウハウとして蓄積されているというような状況もあります。それもそのはずです。それらのデータやシステムは本来他の目的があって存在しており、何もマーケティングやコミュニケーションのためだけに成立しているものではないからです。それらを精緻に噛み合わせるには、前述したような混沌としたデータやソリューションの環境を整理する必要があり、それだけでかなりの時間的・人的労力がかかることがしばしば起こりえます。このように、これまで以上に様々なステークホルダーを巻き込み、横断的に取り組む必要がある現代のマーケティング・コミュニケーションにおいては、まず、小さくとも第一歩を進めるための仕組みづくりが重要です。

理想とのギャップはどこにあるのか?

データを用いるマーケティング・コミュニケーションの理想形は、「戦略(ターゲット/KPI)」「メディア」「クリエイティブ」「ソリューション・テクノロジー」の4つの要素が「データ」により統合的にデザイン・コントロールされている状態であると考えられます。しかし、筆者の経験では、データを精緻に連携させながらハブとなるマーケティングソリューションを導入する、こうしたデータやシステム環境の整備がマーケティング・コミュニケーション実践におけるボトルネックとなってしまうことがしばしばあります。

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その原因としては、例えば、部門間のデータに関する権限の差異やシステム導入に関するレギュレーションの問題、既存システムとの兼ね合いなどがあります。こういった問題が、しばしば新たに超えるべきハードルとして顕在化するのは、これまで分離していたシステム部門とマーケティング部門が融合しようとしている進化の過渡期にある結果です。もちろん、両者のすり合わせによって可能な限りこれらの問題を解決し、データやソリューションを用いた理想的なマーケティング・コミュニケーションを追求し続ける努力は必要です。しかし一方で、そうしている間も市場やお客さまニーズは刻一刻と変化を続け、我々からのアプローチを待ってくれることはありません。競合も次々と新しい手を打ち続けます。

PDCAを回すことを前提に始めてみる

ではこのような場面において我々はどのようにアクションすべきでしょうか。私は、これまでマーケティングやコミュニケーション戦略を構築してきた際の姿勢よりもむしろシステム構築のアプローチ方法としてよく謳われる「アジャイル」の姿勢が有効だと考えます。実施したいデータを活用したコミュニケーションやシナリオ型マーケティングをできる領域から始めてみる、そのためのコンパクトなテストマーティング環境を設計することをお勧めします。そのテストマーケティング環境では極端な話、必要なデータではあるがアクチュアルで扱えないものについては調査をしてしまうこともありえます、また、構築に時間のかかるシステムについては一時的に手動で補ったり、既存システムをつなぎ合わせて簡易版を作ることもありえます。

最低限の条件は、
①未完成でも統合すべきすべての要素が揃っている
②全数データでなくとも、マーケティング・コミュニケーションの全活動を横断したデータが手に入る
③完全な精度でなくともそのマーケティング・コミュニケーション効果を検証することができる

ということです。
その中で、小さな試行錯誤を繰り返し、「KPI」「コミュニケーションシナリオ」「カスタマージャーニー」「ターゲット/顧客ペルソナ」をチューニングしていくことで、データやソリューションの環境が整った時にスムーズな運用を進めることができます。また、こういったテストマーケを未完成でも始めることの意義は、「成果が見える」という点にあります。新しいチャレンジであることが大半であるデータ活用のマーケティング・コミュニケーション活動において、「成功の兆し」を感じながら次なる一歩を進めていけることが活動を大きくドライブします。

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データが手に入り、様々なソリューションが利用できる現状であるがゆえに、
「アジャイル型のテストマーケティングで未完成のままで始めてみる」という発想。
今回お伝えした考え方がマーケティング・コミュニケーション活動を推進する際の原動力になればと思います。

飯田 大輔 ダイレクトマーケティングビジネスセンター 
ストラテジックプラニングスーパーバイザー

2008年博報堂入社。営業にて、メディアプランニングやメディアバイイングの仕事に従事。その後、マーケティングプラナーとして主に自動車、流通、金融、などの領域でクライアント企業のブランディングやマーケティング支援に携わる。近年はデジタルマーケティングに軸足を置き、データ・ソリューションを用いた戦略プラニングやPDCAマネジメントを担当。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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