コラム
コンテンツファン消費行動調査
デジタルとリアルを行き来するアニメファン【コンテンツファン消費行動調査2017分析リレーコラム】#3(アニメ編)
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アニメ支出、何が増えている?何が減っている?

2011年より毎年行っているコンテンツファン消費行動調査では、様々なコンテンツジャンルの仔細な支出項目について、どの程度お金を支払っているかなどを聴取しています。図1はアニメに関連する支出の遷移です。2014年前後に一度支出が減少していますが、大きな傾向としては2011年から今年2017年まで伸び続けている傾向です。

図1アニメ関連平均支出金額graph01

アニメ市場は支出のジャンルが非常に多岐に渡る市場であり、筆者も定額制動画配信サービスでアニメを見つつ、地上波やBSでも視聴。同一の作品を好む友人とロケ地旅行へ行き、東京や実家の大阪・京都近辺のロケ地にも休暇の折に訪問します。また、原作書籍や同人誌、フィギュアなどのグッズもイベントやアニメショップに行った際に購入しています。 全体としては上昇傾向なアニメ市場のなかでも、多岐にわたる商品群によって支出の増減傾向が変わっています。特徴的な3つの商品群、「マルチデバイス」「ロケ地旅行」「DVD、BDなどの入手」についての支出金額の遷移が図2です。

図2 商品ジャンルごとの支出金額graph02

マルチデバイスとは、放送局のビデオオンデマンドサービスや、定額制動画配信サービスへの支払いを指します。2011年にHuluの配信が始まり、2015年にネットフリックス、TVerの配信が開始されました。アニメ作品の配信も多数用意されていることもあり、この商品群への支払金額は年々増加しています。ロケ地旅行とは、読んで字のごとく、アニメのロケ地への旅行を指し、いわゆる「聖地巡礼」と呼ばれる支出項目です。昨今では、聖地巡礼を推奨する自治体や電鉄会社なども多く、地域が一丸となってアニメ作品を盛り上げているケースも少なくありません。この項目も年々上昇傾向にあります。対して、DVD、BDなどのいわばビデオグラムの購入ですが、この項目については、上げ止まり〜下降傾向となっています。

アニメ好きはギーク?

かつて、自分自身の経験も含め、アニメのDVD、BD(さかのぼればVHS)の購入は、「何度も見たいから」「コレクションとして」「(製作者たちへの)お布施として」などの理由で購入されていました。それらの理由のうち、いくつかは様々なサービスによって、より手軽に労力少なく充足されるようになりました。例えば、レンタルビデオショップが台頭すると、今まで買えなかったビデオグラムで作品を再度視聴するためにレンタルへの支出が増えたでしょうし、一方で上述のようにマルチデバイスでの定額制動画配信サービスが台頭しはじめて以降はレンタルビデオへの支出は停滞傾向になりました。(図3)

図3 レンタルとマルチデバイスの支出金額遷移graph03

調査データなどで定額制動画配信サービスは、成長しているもののそこまで普及率が高くありません。しかし、アニメ利用層においては市場全体に対して普及率が高く、このような傾向が現れやすいと考えられます。(図4)

図4 動画配信サービスの利用率比較graph04

動画配信サービス以外にも、多くのデジタルサービスは全体傾向よりもアニメ利用層のほうが高い利用率を示しており、アニメ利用層はデジタル親和性が高い、いわゆるギークと言えます。(図5)

図5 毎日利用サービスの利用率比較(アニメ利用層TOP20)graph05

デジタルとリアルを行き来する消費へ

冒頭で「ロケ地旅行」の支出が増加傾向であることに触れたように、アニメ利用層の支出はデジタルにのみ傾倒しているわけではなく、イベントや聖地巡礼、コンサートへの参加など、リアルな場での楽しみ方にも強い親和性を持ちます。私も何箇所か聖地巡礼に行っていますが、飛騨高山まで電車で5時間かけましたし、宇治市では全ての聖地をめぐるべく春先にも関わらず汗ばむほどに大急ぎで、平等院に立ち寄る時間も惜しんで聖地を巡りました。これは私だけの傾向ではなく、アニメ利用層は作品をリアルな場で楽しむ傾向を強く持っています。グッズの購入や、セリフの引用、イベント参加やファン同士の交流など、多くのリアル関連の項目で全体よりも高い数値を見せています。アニメ利用層は、デジタルで即時性高く、手軽に作品を楽しむだけではなく、強いコミットメントがなければ出来ないような楽しみ方も行う、リアル嗜好性が高い層でもあるようです。(表1)

表1 コンテンツに対する意識(単位:%)graph06

デジタルとリアルをもっと行き来させるために

アニメの支出増加を支えているアニメ利用層について掘り下げると、デジタルとリアルの両方に強い親和性を持ち、手軽で効率の良いデジタルな楽しみ方も、時間と労力のかかるリアルな楽しみ方も行う層であることが見えてきました。今後、世の中の潮流として、スマートスピーカーの登場や、ARやVRの流行、デジタルサイネージの浸透などリアルな場がますますデジタル化し、デジタルとリアルの境目が薄れていく中で、アニメ利用層はその先鞭となりえる層といえるでしょう。たとえば、MR技術を活用したアニメキャラクターと行く聖地巡礼旅行。マイクロソフトの販売するHoloLensのように、メガネ型のデバイスを装着することで、現実に無いものをそこに存在するように使用者に表示することが可能です。聖地巡礼で作品の舞台に行くだけではなく、聖地を主人公と回ったり、アニメの名バトルシーンと同じ舞台で自分自身が敵キャラクターと戦ったり、もっとリッチな聖地巡礼体験も技術によって可能となりえると考えられます。このようなデジタルとリアルがシームレスにつながる体験に、アニメ利用層は躊躇なく飛び込み、楽しむパワーを持っていると言える層であることがデータから見えました。今後増えていくデジタルとリアルを繋いだ体験装置にとって、有力な「最初の一人」として認識していくべきなのかもしれません。

★関連情報
・【コンテンツファン消費行動調査2017】コンテンツビジネスラボ「リーチ力・支出喚起力ランキング」
・【調査レポート】コンテンツファン消費行動調査2017
・「変わるコンテンツファンの消費行動2010→2017」【コンテンツファン消費行動調査2017分析リレーコラム】#1
・若年層で進むライブストリーミング観戦【コンテンツファン消費行動調査2017分析リレーコラム】#2(スポーツ編)

後 皓介 コンテンツビジネスラボ(博報堂 研究開発局、博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター)

2010年博報堂DYメディアパートナーズ入社。2016年より研究開発局、マーケティング・テクノロジー・センターにてコンテンツファンマーケティング、位置情報データ、メディアログデータ、MMM、デジタルマーケティングなどの研究開発に従事。2013年からの3年間はメディアプラナーとして外資系クライアント、スタートアップクライアントのメディア戦略、メディア投資戦略のプラニングに従事。2010年から2013年はテレビタイムビジネス局にてテレビビジネスとテレビ×デジタルの施策開発に携わる。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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