コラム

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「ソーシャルメディアを“腹落ち”させるには?③」

2012年1月16日

森永 真弓

メディア環境研究所 主任研究員

■クリエイティブはどう変わるのか

 傾聴傾聴というけれど、最初にCtoBの回路が開いておらず「ネットを検索しても誰も何も発言していないよ」という商品やブランドもあるでしょう。新商品などは特にそうだと思われます。その場合は、BtoCtoBtoCtoB…と回すために、ユーザ側に発信させるクリエイティブが必要になりますが、こちらについても考え方を変える必要が出てきています。

 ユーザーが反応するクリエイティブとは何か。

 企業がユーザからの反応が欲しい時、ついつい「質問」してしまいます。しかし自分の身を振り返って考えてみてください。「今日のランチ何にする?」と言われて「なんでもいい」と応えることが実は多くはありませんか…?自分の口に入ることでさえも応えられないのに、企業からの質問に答えてくれる人がそんなにいるとはまず、思わないことが重要です。ではどうするか?

 ヒントのひとつとして、博報堂生活総合研究所の「生活動力2010 態度表明社会」というレポートがあります。ソーシャルメディアの普及が根底を支える変化の兆しとして、自らの意見や態度をしめし、企業に対しても意志を求める生活者が年齢性別地域限らず台頭しつつあるというものです。まさに態度表明という言葉がふさわしいかもしれません。我社はこう思う、我がブランドはこう思う、こうだ、と言う宣言です。断定されれば、それに賛成と反対の反応があり、中庸も生まれ、コメントも付いてきます。ユーザに反応して欲しいのであれば、まず自分たちの意見を表明すること、それがまず第一歩です。

 ただし、賛否両論生まれます。批判がネット上に書かれる、あるいはお客様相談室に苦情として掛かってくるという現象が生まれます。でも、それを受け止めることが必要です。お行儀よく、全員が賛成することなどありえません。ソーシャルメディア上において一番怖いのは、批判の殺到よりも無視です。無視されたコミュニケーションには何の価値もないのです。

 つまり企業側には、態度を表明するという強い意志と、批判を受け止め咀嚼する柔軟性が求められるということです。これは、これまで賛成で世の中を埋め尽くすことを身上としてきた広告・広報が最も苦手としてきた領域かもしれません。でも、もうそういう時代ではない、これが大きな変化のもう一つであるでしょう。

■最後に

 まだ自分はソーシャルメディアユーザではないと感じる方は、ソーシャルメディアユーザになることから始めることをおすすめします。ソーシャルメディアと一ロで言っても、ミクシィ中心ユーザとフェイスブック中心ユーザ、ツイッター中心ユーザやアメーバ中心ユーザ、情報指向性がそれぞれ異なっています。そしてそれぞれのサービスの中にまた、細かく島宇宙のような似た情報思考を持ったユーザ同士の塊があります。

 その多様性やうねりは体感しないとわかりません。そして、企業自身がその中に入ってアカウントを運用することで感じられることも、やはりやってみないとわからないことばかりです。「こんな発言が受けるのか」「こんな発言は無視されるのか」「こう言うことをすると反感を生むのか」企業によって、ブランドによって、或いは運用者が醸しだすニュアンスによって全て違ってきます。

 さらには運用し続けることで、CtoBの回路において無視していい反応と重要視するべき反応の区別もつくようになってきますが、それもやはり実際にソーシャルメディアアカウント上で試行錯誤しないとわからないものなのです。

 既に始められている企業は、着々と知見を貯めつつあるでしょう。これからの企業は、まさにこれから貯め始めるライン上に立っていると言えます。コミュニケーション効果については、商品力やクリエイティブカによって様々に変貌しますが、マーケティング知見については確実に先行者利益が発生しています。

 試行錯誤の時代であることを逆手にとって、まずは始めてみることを強くお勧めしつつ、この項を終わりにさせていただきます。

 

JAAAレポート No.649(2011年6月号/日本広告業協会発行)から転載

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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