コラム
メディア環境研究所
メディア環境研究所の挑戦。70代のメディア・コンテンツ接触状況の実態とは?
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70代は長らくコミュニケーションターゲットとして、考えられてこなかったと言っても過言ではない。初めて70代の実態調査をしたいと言ったときの周囲の反応も戸惑いが多かったように思う。一般的に生活者データは「69歳まで」がスタンダードなので、無理もなかったのかもしれない。だが、自分の親を含め、70代で元気な人は多い。

高度経済成長の右肩上がりの時代を生き、バブル期に50代だった年代であり、消費の楽しみを知っている。また、マスメディアによく接触していると思われる70代は、絶対にコミュニケーションターゲットとして有力であると確信があった。70代調査はそれなりに反響を頂き、70代をターゲットにした商品やサービスも多くなってきたように思う。4回目の調査となる今年は、敬老の日に向けて発表したが・・・敬老の日のトピックを見て驚いた。なんと、「100歳以上の人口は過去最多の5万8820人。」(厚生労働省発表)。シニアとしての70代しか思い描いてなかったが、100歳以上は70代の親世代。親、祖父母、子ども、3つの役割を持つ70代。2020年、人口の最大ボリュームを占める団塊世代が70代となる。4世代消費を視野に入れた新たなマーケティングが必要な時代がもうそこまで来ている。

こうした背景を受けて実施した「70代 メディア・コンテンツ接触状況と暮らしの調査」をご紹介したいと思う。ちなみに、今年は調査エリアを大阪にも拡大した。
詳細レポートは、コチラ(「70代メディア・コンテンツ接触状況と暮らしの調査」)をご参照頂くとして、ここでは東阪の70代女性にスポットを当てていく。

■ 暮らしの価値観比較 ■

●東京女性は、大阪女性よりも自立志向が強い。
「自立した生活が困難になったら、子どもに頼らず、公的サービスなどを利用する」が東京女性は9割(90.3%)と大阪女性(78.2%)と比べて高い。「自立して暮らしている」も8割近く(75.1%)と大阪女性(59.6%)に比べて東京女性は15ポイント以上高くなっている。「自立して暮らしたい」という意向も同様で、東京女性は9割(86.6%)と大阪女性(73.5%)より高い。「子どもにはできるだけのことをしてあげている」は、東京女性(55.7%)より大阪女性(67.7%)の方が高く、「経済的に困ったら、子どもに援助してもらいたい」は全体的に1割未満ではあるものの、東京女性(1.9%)より、大阪女性(5.5%)はやや高め。こうした結果から、自立志向でちょっとクールな東京女性の姿が浮かび上がってくる。

●大阪女性は、毎日の生活を楽しんでいる。
「毎日の生活を楽しんでいる」のは東京女性6割(61.5%)に対して、大阪女性は7割以上(73.8%)と12ポイント以上、大阪女性の方が高くなっており、大阪女性が生活を楽しんでいる様子が見えてくる。「夢や目標を持った日常生活を送りたい(東京女性80.9%、大阪女性86.0%)」し、実際、「夢や目標を持った日常生活を送っている(東京女性51.9%、大阪女性56.3%)」のは大阪女性のようだ。ただ、東京女性とそんなに差があるわけではない。ここで注目すべき点は、女性ではなく、男性のスコア。「毎日の生活を楽しんでいる」のは、男性では半数程度(東京男性51.4%、大阪男性53.1%)。大阪の男女間は20ポイントも開きがある。頑張れ、大阪男性!

■ メディア・コンテンツ接触調査 ■

●東京女性はラジオがお好き。
週平均1時間半、大阪女性は1時間弱(56.3分/週平均)ラジオに接触しているが、東京女性は1時間半以上(101.0分/週平均)とかなり長い。「タイムリーな情報を得たい時はラジオをつける」が7割(67.4%)と東京女性にとって、ラジオはなくてはならないメディアのようだ。

●大阪女性は、タレントに関するメディア行動が活発。
好きなタレントについて、「出演しているテレビ番組を見る」90.1%、「家族や友人と話す」43.1%、「CDなどを購入する」26.7%など、全体平均と比較して、大阪女性のスコアは高い。ちなみに大阪女性の好きなタレントは「さだまさし」「道上洋三」「櫻井よしこ」「浜村淳」など、関西ならではの顔も見られる。
※タレント:アナウンサー、パーソナリティ、タレント、俳優・女優、歌手、その他著名人

●東京女性は、厳選したコンテンツにお金を使う。
映画・音楽・美術鑑賞、スポーツ観戦、観劇といったコンテンツに対する年間使用金額は大阪女性約28,000円に対し、東京女性は約37,000円と10,000円近く高い。回数については、美術鑑賞の回数は拮抗するものの、それ以外はすべて大阪女性が高く、東京女性のコンテンツ接触回数は多くない。コンテンツを厳選して、お金を使うというのが、東京女性の特徴のようだ。

さて、2020年に向けて日本の70代はどのように変わっていくのか?
前回の東京オリンピックの時に青春時代を過ごした70代。2020年の東京オリンピックでは“おもてなし”の実践者として活躍するのではないだろうか。
今後も、乞うご期待!

【参考】メディア環境研究所 ホームページ

新美妙子 メディア環境研究所 上席研究員

1989年博報堂入社。新聞局、メディアマーケティングセクションを経て、2013年4月より現職。メディア環境の変化に伴うメディア接触の多様性に着目し、“エリア”“シニア”“などをテーマに生活者のメディア行動を研究。「メディアガイド」「メディア10年変化」を編集・刊行。

※執筆者の部署名は、執筆時のものであり現在の情報と異なる場合があります。

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